第14話 虎の威を借る狐
【虎の威を借る狐】
武田信玄を引き込むことで信長討伐の包囲網を完成させた松永久秀は、信長への謀反を明らかにして三好政権復活を目指し、織田領土に侵攻した。
「久秀様、敵の援軍がこちらに向かってます」
「そうか… 籠城して被害を最小限に抑えるよう義継様に伝えろ」
……包囲網の集中攻撃で、織田は黙ってても潰れるだろう…こっちには武田信玄がいる、信長もこれで終わり、やっと待ち望んだ三好政権が復活する……
久秀は将軍と示し合わせて織田領土に攻め込んだが武田信玄ありきの信長包囲網だ、織田の武将達とまともにやり合う気は無い…
籠城して武田信玄が織田軍を弱らすのを待つ作戦に出る…
そのころ、信長は浅井長政とのイクサに出陣していた。
浅井家領土 小谷城
信長が浅井長政の居る小谷城を取り囲んだ、したくも無い和睦をさせられたと根に持っている信長にとっては比叡山延暦寺と同様許せない相手だ…
信長の包囲に気付いた長政は大いに慌てた、浅井軍だけでは信長に歯が立たないからだ。
「朝倉の援軍はまだか?」
「…援軍の要請をしてから数日経ちます、朝倉様は織田との戦に躊躇しているのでは…」
「くっ、信長に臆したか…」
「虚報で呼び寄せて見ては…」
「…なにか考えがあるのか?」
「イクサは単純に兵数で戦況を判断します、こちらが数で圧倒していれば…」
「我が軍は一万五千、朝倉が二万…
信長は二万の兵で包囲している、織田軍がこれ以上増えないと確信出来れば来るか…」
「…織田の援軍が来ないか来れない状況… となると、尾張と美濃の間を封鎖」
「…地理的には一向一揆衆ならやりかねない…」
「ならば… 一向一揆衆が尾張と美濃の間を封鎖した今なら、信長の首を獲れる… これなら封鎖が解除される前にと急いで来るのでは」
「…それで行こう、朝倉に連絡しろ」
信長に臆していた朝倉義景は浅井軍からの虚報を信じて挙兵したが信長は浅井長政が朝倉に援軍を要請する事を読んでいた…
朝倉軍を迎え撃つ準備と同時に朝倉の重臣を調略していて義景の出鼻をくじく。
朝倉軍は織田軍の戦略に阻まれ浅井軍と合流出来ず単独で織田軍と睨み合う…
織田軍は見事に浅井朝倉の分断に成功した。
朝倉義景 本陣
「織田軍の秀吉から決戦の申し込みがきました」
「決戦だと… そんなもの、ほっとけ」
決戦を申し込まれ戦闘を避けるのは朝倉が織田軍に怖じ気づいていると秀吉に判断され、朝倉軍は織田軍に士気の低さを露呈する事になった。
「しばらく様子を見る…だが調略を怠るな、条件など出して来たら全部飲んでやれ」
「…しかし全部と言う訳には」
「約束など後でどうにでもなる…今は少しでも味方を増やして浅井が合流して来るのを待つしか無い」
ここまで援軍に来といて、朝倉義景は浅井の方から合流して来るのを望んでいた…
浅井は朝倉を待ち朝倉は浅井を待つと言う、どちらも頼りない連合軍だ。
しかし、そんな頼りない連合軍に朗報が舞い込む、なんと武田信玄から共同戦線の要請が来た。浅井軍との合流を阻まれ織田軍に怖じ気づいていた朝倉軍だが、この要請で士気が上がる。
浅井朝倉軍と共同戦線を張った信玄は同盟の信長を裏切り徳川家康の領土を侵略していく… 信長は武田信玄の裏切りを聞き浅井朝倉連合を秀吉に任せ一度岐阜に戻る事になる。
織田軍小谷城攻略部隊
「秀吉様、朝倉と浅井が出陣して来ました」
「慌てるな、決戦を受けられぬ腰抜け供は鉄砲と弓で脅かしとけ! …しかし武田信玄か…厄介だな…」
武田信玄が見方に付けば信長に勝てると奮い立った浅井朝倉軍だが、秀吉に歯が立たず徐々に衰退していく。
共同戦線を要請した武田信玄は、次々に徳川領の砦を落とし結果を出していくが、朝倉義景は秀吉の前に結果を出せず家臣達の信頼を無くしていき兵士達の士気はダダ下がりで戦線離脱する者が続出した…
朝倉義景は戦況の悪化に耐えきれず、とうとう武田信玄との共同戦線を勝手に放棄して撤退する愚行に出た。
織田陣営 軍義
軍義では武将達が武田潰しを言及する。
「武田信玄さえ倒せば後は何とでもなるはず…」
「反織田勢力は武田信玄頼みの烏合の衆…しかし武田はそれらを利用して同時に攻めて我々を分散している…」
「全てを叩くのは無理… ならば頭の武田を織田の総力で倒すべきだな」
「…私もそう思います、武田さえ倒せば幕府を抱き込んでるとは言え反勢力を倒すのは容易いかと…」
「ある程度の領土は獲られても武田を倒すのが優先か…」
「時間を稼いでもら得れば調略も進みます」
明智光秀と竹中半兵衛は広範囲に調略を進めている…
「やはり、今回の首謀者は松永久秀で間違いありません」
「反勢力には情報が入らない様に間者や忍に気を付けろ…とくに松永久秀の間者らしき者は女子供でも容赦無く殺せ‼
織田に逆らうとどうなるか、見せしめだ殺した間者は晒し首にしろ」
織田陣営は武田信玄が信長包囲網に加わった事で苦戦を強いられたが、朝倉義景の撤退で動き易くなり、主力を武田信玄に集中させる戦略に出る。
三河国 某所
信長は僅かな近臣達と家康の下に来た、信玄への怒りの感情が家康の下に来させた…しかし、信長は信玄の強さを理解していないため家康を巻き込む暴挙に出る事になる。
「姉様みずから来て頂かなくとも伝令で良かったのに…」
… ちっ、これで武田に寝返りづらくなったな …
「…信玄は私を裏切った、裏切者は自分で裁きたいの、しかも家康を狙うと言う事は…私を殺すと言ってる様なものでしょ」
「ありがとうございます… じっさい武田の大軍が相手では織田家の力を借りないと戦えません…
しかし、各国から攻撃を受けてる織田軍から援軍を出すのは難しいのでは?」
「そうなの… でもさっき連絡があって主力を信玄に当てると言ってたわ」
「それは助かります…援軍の規模はどれくらいで?」
「二万の兵で来るらしい…」
… やった、これで武田軍に勝てる‼
姉様が自ら来た時は武田に寝返ら無いよう釘を刺すためかと思ったが、あれだけの集中攻撃を受けても主力を援軍に出せるとは、まだ織田信長に風が吹いているようだな …
「徳川と合わせて三万、武田軍は二万これで形勢逆転です…」
「信玄が、比叡山焼き討ちの文句を言って来た時、私は第六天魔王だと教えてやったのに… 仏門では私に勝てないフフッ」
【兵法】
徳川領に侵攻して二俣城まで落とした武田軍だが、朝倉義景の撤退で、徳川軍に織田軍の主力が合流…劣勢を余儀なくされる。
「本丸を落とすのは難しいな」
「…腰抜けの朝倉はまだ戻らないのか?」
不利な状況になった原因を作った朝倉を罵る武将達に信玄が尋ねる…
「信長の援軍をどうする?籠城戦になれば、勝ち目は薄い…」
「今、情報捜索で織田軍を分散するように動いてます… 上手く行けば三分割出来るはずです」
武田の諜報員は、次に攻める城の偽情報を流して援軍の分散を図っていた。
「効果は有りそうか?」
「織田の間者を寝返らせました」
「間者…? 忍が寝返るだと、ありえん事だが…」
「御安心下さい…忍の村丸ごとです」
「なるほど、そう言う事かそれなら期待出来る…」
「みな御屋形様が居れば勝てると思ってます、簡単に寝返りました」
「武士道が地に落ち、忍が裏切るか、まさに下克上…
道理で第六天魔王を名乗る信長の様な輩が蔓延るわけだ」
武田軍の狙い通り、織田軍は間者からの情報が皆別々の城を標的にしているため混乱していた…織田軍武将佐久間信盛が情報からの推測を話す。
「これは…同時攻撃の可能性も有ります」
「…それなら標的が複数になるか」
「数では、こっちが圧倒してます各城に兵を配備して同時攻撃に対応するべきです」
同時攻撃などあり得ないと考える家康が、本丸の浜松城に総攻撃して来た時を危惧する。
「本丸に武田軍が総攻撃して来たら戦力を分散した分、こちらが不利になるのでは…」
「もしそうでも、こちらは籠城戦さほど被害が無いうちに皆集まれるはずです…」
「…ならば本丸は徳川が、織田軍には他の城をお任せして宜しいか?」
信長が口を開く…
「私も本丸の浜松城に構えるわ」
「…信長様は私と御一緒に織田軍の指揮を執って頂こうと…」
「織田軍は貴方に任せる、私は馬廻りだけで大丈夫よ」
「…わかりました」
信長は武田軍がどう攻めて来るか分からないが、本丸の浜松城に信玄が来ると予感していた。
武田信玄率いる武将達はイクサに長けているため有利に進めたイクサが不利に転じても、その状況の中で勝つための戦い方を導きだす術がある。
「御屋形様、計略通り敵は各城に分散して籠城してます」
「家康と信長は何処だ?」
「どうやら二人とも浜松城に構えている様です、浜松城は一万位の兵が詰めてます」
「よし、計画通り浜松城を素通りして敵を三方ヶ原に誘きだす…出陣だ‼」
行軍を開始した武田軍の動きは直ぐに家康の下に報告された。
伝令
「武田が全軍で浜松城を目指してます!」
家康
「やはり…本丸狙いか」
徳川軍の武将達があわただしく指示を出し防御を固め武田軍を待ち構えていると伝令から新たな報告を受ける。
「武田の進軍が三方ヶ原に進んでいます!」
武田軍は、浜松城を素通りして三方ヶ原を目指して進軍する…この報告を受け徳川織田連合軍は作戦を変更する。
「なに、三方ヶ原…?」
戸惑う家康に信長が問い掛ける。
「家康、そこに何かあるのか?」
「三方ヶ原を越えその先にあるのは堀江城です… あそこは誰も配備していない落とすのは容易い」
「信玄は戦いを避けたか…」
地図を見た信長が家康に尋ねる。
「堀江城に行くには三方ヶ原から下り坂になるの?」
「まぁ三方ヶ原が頂上になるので、そうですが…」
「武田軍が三方ヶ原を出たら一気に坂の上から叩く」
「なるほど有利な上から武田軍の背後を叩く…」
信長は各砦に待機してる家臣に出撃するよう伝令を出した。家康もそれに続き家臣達に出撃を命じて連合軍が三方ヶ原を目指した。
家康が先頭に立ち指揮を執る、坂を下る武田軍の背後を襲撃する作戦のため織田軍との合流を待たずに徳川単独で攻めて、武田軍が陣形を整える前に織田軍と合流すると言うはずだった…
しかし、三方ヶ原に着くと武田軍が陣形を整え待ち構えていた!
武田軍は一度三方ヶ原を下る振りをしてまた登り頂上で徳川軍を待ち伏せていたのだ…
有利な坂の上から叩くはずが待ち伏せされ逆に坂の上から叩かれる羽目になり徳川軍は武田軍に圧倒される。
信玄の戦略にはまり織田軍と合流後も劣勢の家康…
後方に構えた信長は事の次第に気付き直ぐ様退却して、佐久間信盛に殿を命じ家康には伝令を送った。
「信長様から伝令です、至急退却せよとの事です」
「…わかった、全軍退却!」
この早目の退却で被害を最小限に抑えるはずが信長に殿を任された佐久間信盛が三方ヶ原の手前で武田軍に怖じ気付きさっさと退却してしまった…徳川軍だけで武田軍の追撃をうけた家康は壊滅的な被害を出した。
信長包囲網Wikipedia
三方ヶ原の戦いWikipedia
武田信玄Wikipedia 参照
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