第12話 圧倒的な強さ


尾張国 織田軍


尾張まで引き返した織田軍は朝倉討伐から改めて、浅井朝倉連合とのイクサに態勢を立て直し出陣する。


秀吉は浅井側に顔が利く竹中半兵衛を連れ一足早く浅井領に入り堀秀村の調略に掛かる。


「堀様お久し振りでございます」


「…だいたいの見当は付いてるが、要件を伺いましょう」


「我が主、豊臣秀吉が堀様にお願い事をしたいと…」


秀吉は堀秀村と目が合うと頭を畳みに付け土下座した!これに堀秀村が動揺すると、ここぞとばかりに願い事をはじめる。


「今回のイクサに是非とも堀秀村様のお力をお借りしたく馳せ参じました」


「織田家の重臣がその様な事、お止めなさい…」


「いいえ、お願いする立場として当然の事です…どうか織田軍の力になって下さい!」


「やはり…この堀秀村に寝返れと」


このやり取りでの堀秀村と近臣達の反応を冷静に分析する竹中半兵衛…

織田家重臣の土下座に近臣達の心が揺れるのを見逃さなかった。


「この堀秀村、痩せても枯れても武士道に背を向ける気はございません… お引き取り願おう」


「 …… 」


秀吉は堀秀村が古いタイプの侍だと感じ取り、しつこくは誘わず時間をかけるべきと判断して、半兵衛に目で帰るのを促す。


「…分かりました…主への忠誠は武士の美徳… ですが一言、戦国の世で勝ち続ける‼ それもまた武士の誉れかと…」


秀吉は主を裏切る様なら武士では無いと言う堀に、戦国で勝馬に乗り続けるのも武士の誉れではと問い掛け去っていった。



帰り道で秀吉と半兵衛が堀秀村の調略を練り直す。


「どうだった半兵衛…」


「さすがは秀吉様です… 私の見たところ近臣達はその気があります、秀吉様の土下座が効いてます」


「そうか… 堀程度俺の土下座だけで堕ちると思ったが、仕方ない…まずは近臣から崩すか…

今から戻って丸め込んでこい」


半兵衛の予想通り近臣達は織田家への寝返りに乗り気だった…


戻った半兵衛が堀秀村の近臣達に話を聞くと、秀吉達が帰った後堀家では秀吉の捨て台詞に考え込んだ堀秀村と近臣達で浅井家離反を話し合ったが秀村は首を縦に振らなかったと言う…


半兵衛は堀秀村が秀吉の台詞に考えこんでいたと聞いて堀は侍としての武功には引かれるが私利私欲で動く事を恥じてるのでわと思い、近臣達にもう一度私と一緒に説得してくれと頼み再度、堀秀村と話しをした。


半兵衛が、改めて話した事は織田に移れば領土を拡大出来て家臣達にも城を持たせられるなど、堀秀村の武功に対する欲を家臣達に対する親心にすり替えられる様にして揺さぶりをかけた…


 堀秀村は、半兵衛の言う家臣達に良い思いをさせられると言う言葉に、武功を立てると言う欲に恥じる気持ちを書き消し寝返りは家臣の為にも最善と考え寝返りを決意した。こうして、秀吉と半兵衛は短い時間で見事に調略を成功させた。






【圧倒的な強さ】



織田家 重臣

「秀吉殿が堀秀村の調略に成功しました。徳川軍も出陣したとの事です」


いつになく神妙な信長だが、その目には狂気が宿っている…重臣も逆鱗に触れないよう恐る恐る言葉を選んで話す…


「…私も浅井長政討伐に行く」


「…敵は浅井朝倉連合軍、激しい戦いになります…信長様に危険が及ぶかも知れません、出陣はお控えした方が…」


「だめ……」


「…?」


「激しい戦いも…私に危害が及ぶ事も……許さない」


信長の返答に困惑する重臣…


「 …はっ?…しっしかし…」


立ち上がり眼を光らせる信長…腰を抜かしそうになる重臣に言い放つ!


「圧・倒・的・な・強・さで浅井朝倉を倒せ!!!」


信長の圧倒的な強さで倒せとの命令は重臣達から落雷のように家臣達に伝わると激戦前に緊張していた兵士達の闘争心に火が付いた。





闘争心を燃やす兵士達を引き連れ信長が家康と合流して浅井朝倉連合軍と姉川を挟んで布陣する。


「聞きましたよ姉様… 家臣に圧倒的な強さで敵を倒せと命令したそうですね」


「そうよ…私を裏切った事を死ぬほど後悔させてから殺してあげるの」


その言葉に信長の狂気を見て取る家康…


「怖い人だ… でも私も姉様の真似して家臣達に三河武士の圧倒的強さを見せてやれと言ってやりましたよ」


「頼もしいわね」


「まぁ、見てて下さい… と言う事でお先に行かせて貰いますよ」


徳川軍出撃だぁー!!!



「じゃー私も… 織田軍出撃!圧倒的に倒せ!」


予想通りの激しい戦いで姉川が鮮血に染まる。戦闘は武将達に任せて信長は浅井長政が居るであろう本陣を睨みつけると独り言を言う。


「…一度は許す、だが二度は無いのよ」


信長は、妹お市の事もあるが長政に、もう一度織田家に戻るよう書状を出していた…

しかし浅井長政の返事は……



“浅井に仇なす者と命を賭して戦う”



と、短い文だが心が変わらぬ事を力強く伝えて来た。


 浅井長政からすると浅井と同盟の朝倉には侵攻しない条件で織田と同盟を結んでいたので最初に裏切ったのは信長だ…

 しかし信長からすると突然離反と言う裏切りを、書状を出して許すと言ったのに断られた…

 これは信長に二度も楯突いた事になる、すでに天下人を気取る信長にはそれが許せなかった。


 姉川では、まさに火花散る激戦を繰り広げる両軍だが、浅井朝倉連合軍の陣形が崩れ出した…

 これを徳川軍は見逃さずに崩れた陣形の隙をつき攻勢に出た…

 戦局は一気に織田徳川連合軍に傾きイクサは信長の命令通り“圧倒的な強さ”で織田徳川連合軍が敵を討ち取り出した!!



 たまらず朝倉軍が敗走してその後を追う様に浅井軍も敗走した、姉川の戦いは信長の言う圧倒的強さで織田徳川連合軍が勝利した。



… 長政のやつ逃げたか…でもいいわ、何処に居ようと恐怖を味あわせてあげる…私に会うのが怖くて死にたくなるくらいねぇ …




 信長は、浅井長政を恐怖のどん底に落としてから殺そうとしていたが、事態は急変して信長が考える様に長政を簡単には追い詰められなくなる。




 混乱を極める戦国で急速に勢力を拡大する信長に脅威を感じていた各国の大名が時を合わせ織田領土に襲撃して来た。


 浅井長政を追い込むはずの信長は、いくつもの反織田勢力と同時に戦う羽目になり、信長自身が追い込まれ窮地に立たされた。



 領土を広げて巨大化した軍事力を持つ織田軍も、この大規模な包囲網にはたまらず和睦交渉を開始するが、負けを認めたくない信長が和睦を嫌がり交渉が進まない… 困り果てた家臣達は集まって会議を開き信長を説得する役を武将代表として秀吉に頼んだ。



秀吉

「これは決して負けを認めるのでは無いのです…」


信長

「世間はどう思う… 私を甘く見て、また浅井や朝倉のような奴等が増える……そんな事は絶対に許さない‼」


「今の、包囲網を瓦解させるだけです… その後一つ一つ反勢力を潰して行きます…そのために一度和睦して我々に侵略の意志は無いと思わせる建前です…信長様に逆らう者を許したりしません」


「…私に逆らう者は殺すのだな?」


「そうです‼ 信長様に楯突く者は皆後悔して死んでいくのです」



こうして反織田勢力と和睦して行き、厄介な浅井朝倉とは将軍足利義昭に調停を頼み和睦に成功、織田軍は窮地を脱した。






姉川の戦いWikipedia

信長包囲網Wikipedia参照

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