第11話 再起
…上洛作戦失敗から二年後…
…事態は再び動き出す…
信長自身は、ただ生きているだけなのに、どんどんとデカく強大な力を手に入れ周りではイクサが絶えない…
悪魔が殺し合いを楽しむ為に信長を利用しているかの様だ、戦国と言う地獄で殺しの螺旋は血に染まり回り続ける。
【再起】
永禄11年
柴田勝家はかつて謀反に荷担し信長を裏切った事があるためか織田家ではイクサに重用されるだけの存在だ…
しかし何としても織田家重臣のトップに返り咲きたい勝家は二年前に実現しなかった上洛作戦の仕切りに目を付けて、松永久秀と連絡を取り落ち合う。
「前回は長逸に唆された美濃の斎藤龍興に妨害されましたが、織田軍が美濃を平定して更なる力を手にした…もう邪魔はさせない…」
「そうだ…今度こそ上洛作戦を成功させよう‼」
柴田勝家は上洛作戦を成功させ織田家重臣のトップに返り咲くつもりでいる… そして、久秀は久秀で三好家を我が物にするつもりだ。二人の目的は違うがその手段は新たな将軍の擁立で一致していた。
「織田家の軍事力があれば畿内の平定など容易いと思いますが…宜しくお願いします」
「この柴田勝家が指揮を取り上洛作戦を必ず成功させて見せよう」
二人は同士の様に力強い言葉で作戦の成功を誓い別れたが、お互い腹の中は相手を手駒としか考えていなかった。
織田信長別邸 魍魎の屋形
勝家は信長に上洛作戦の重要性を説くため魍魎の屋形にやって来た。
「前回と違い三好家当主の義継を抱き込んでます…」
「そんな事はどうでも良い…私は幕府になんの恩も無いし、ただの内は揉めでしょ、秀吉が名誉だと言ってたけど…貴方もその名誉が欲しいわけ?」
「 …それも有りますが、違います…松永が三好家当主を抱き込んでいると言う事は足利義昭を上洛させると将軍だけで無く三好家当主も助けた事になります…それは我らが政権に口出しする権力を得ると言う事…本当の狙いはそれです」
織田家が足利義昭上洛を成功させれば、京で室町幕府と政権を操る三好三人衆から外様にされた三好家正統後継者義継に政権を返す事になり、織田家はその功績で政権に関わり口出し出来ると言う勝家だが、最終的には口出しどころか政権そのものを手に入れるつもりでいた。
「権力を得る…」
「今や三好政権は幕府も同じ事…我らがその権力を得れば軍事力と政権の両方が手に入る、日本は信長様の物です…
貴女には天下人が相応しい」
「私が…天下人…… 」
「そうです」
「フフッ面白い話ね、いいわ…上洛作戦はすべて貴方に任せます」
「…かしこまりました、信長様の手を煩わす事は何もございませんので、お暇でしたら京入りの際の衣装でも考えていて下さい」
「そうねぇ…お気に入りの衣装を用意しとくわ」
「信長様の美しさを京の民にも拝ませてやりましょう」
信長をその気にさせた勝家は総勢六万の兵で上洛作戦を決行した…
足利義昭上洛を阻止しようと三好三人衆に抱き込まれた大名達が立ち塞がるが織田軍の圧倒的軍事力にあっけなく敗走して行く。行軍は異例の早さで上洛…
三好三人衆も織田軍の軍事力に恐れをなして信長の京入り前に逃亡した。
松永久秀と三好義継は三好長逸ら三人衆が逃亡すると入れ替わる様に京入りして信長を出迎えた。予定通り畿内の反勢力を一掃した織田軍は足利義昭を将軍に擁立するのだった。
【誤算】
三好長逸を追い出して三好家を我が物にした松永久秀だが、信長を甘く見ていたために幕府の実権から政権まで織田家に奪われてしまった。
… 何なんだ‼ あの織田家の奴ら、当主が当主なら家臣も家臣だ将軍と対等だと思っているのか?
三好家も家臣扱いだ…
…しかし織田の軍事力がこれ程とは……今は、信長に気に入られるのが得策か …
松永久秀が三好家当主義継の織田家への不満を抑える為、現状を話し今後の計画の説明をする。
「結果的には長逸を追い出し三好家は義継様の手に戻りました」
「だが…政権は信長の物だ、このまま指をくわえて見てろと言うのか…」
「今は、信長の力で畿内平定を維持するのが得策です」
「…い・ま・は・と言う事は、時が来たら打って出るのだな…」
「もちろんです…
織田家の軍事力は強大ですが、なにか纏まりがありません。
信長をはじめ重臣達がバラバラで傍若無人… あの様な振る舞いでは敵が多いはず…将軍の義昭様もそのうちの一人…」
「なら…将軍と組んで信長を取ると…」
「将軍だけでは有りません…信長を煙たがっている大名は喜んで将軍足利義昭に協力するでしょう…」
「三好政権の復活…」
「そうです… その為にも今は、信長に従い義昭様を味方にして手懐けるのが重要です」
「 …そうか、任せたぞ」
…… 権力を取り戻すのは、まだ先になりそうだが義継同様、義昭も手懐けて信長の首を必ず獲ってやる… 暫くは信長と義昭のご機嫌とりに徹するか ……
【予想外】
将軍を擁立した織田家は幕府の権力を使い他国に上洛命令を出した。
これは新たな権力を手にした信長に挨拶をするため京に来いと言うことだ、命令に従う者は織田政権を認めた事になり、従わない者は反信長と言う事になるため上洛命令に従わない者を織田家は幕府の名を使い討伐していた。
朝倉家討伐
信長は、織田家の上洛命令を無視した朝倉義景を討伐するために同盟国の徳川家康と三万の兵で越前に侵攻した。
織田軍は越前に着くと朝倉領の城を次々に落として行く。
「越前も簡単に落ちそうねぇ…家康の出番は無いかもよ」
「それはそれで有り難い事…まぁ褒美が貰えないのは残念ですけど」
「フフッそんな事より私の鉄砲隊を見て新しい鉄砲になったのよ、今回はその威力を見るために来たの」
「…そうですか…私はまた、そのバテレンの衣装を見せびらかす為かと思いましたけど?」
「さすが家康、それもあるの三日前に届いた新作よ…どう?」
「良く似合ってます、姉様の美しさがあってこそですが」
「ほんとにそう思ってる?」
「もちろんです…例えば秀吉が着たら新種のサルにしか見えませんよ」
「ブッハッハハッー
ちょっと止めてよ想像しちゃったら笑える…
でも、面白いから今度着せよう」
「ハッハッハッ きっと笑えますね、その時は私も呼んで下さい」
楽勝ムードの連合軍だが、そこに諜報員から意外な報告が入った…
浅井長政が裏切り進軍しているとの事だ。
信長は妹お市の婿である浅井長政が裏切ったとは思えなく最初は誤報ではないかと疑っていたが、次から次へと入る報告が浅井長政の裏切りが真実だと物語っていた。
「信じられない… 浅井長政が私を裏切った」
「このまま追い付かれると挟み撃ちになりますね…」
「浅井が追い付く前に全軍退却だ‼ 態勢を建て直す」
「えっ、待って下さい…徳川軍で浅井を、織田軍で朝倉を倒せるのでは…」
「…この討伐は容易いはずだった…浅井長政が裏切るなんて事は予想もして無かった…
予想外は想定外を呼ぶのよ」
「……分かりました… 全軍退却だ!」
警戒心の強い信長は早い段階で退却を判断した、それが功を奏して織田徳川連合軍の被害を信長は最小限で済ませた。
金ヶ崎の戦いWikipedia
姉川の戦いWikipedia 参照
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