第8話

それからまた時は流れて…


9月12日の朝8時40分頃であった。


またところ変わって、基町もとまちクレドの中にある(東京スター)銀行の店舗にて…


ダークネイビーのスーツ姿の秀祝ひでのりは、いつも通りに出社したあと仕事を始める準備に取り掛かっていた。


周囲の従業員さんたちも、仕事を始める準備に取り掛かっていた。


9時に10分前であった。


支店長さんがものすごい血相で店舗に入った。


支店長さんは、ものすごくおたついた声で従業員さんたちに言うた。


「ああ、大変だ!!ヨリイくんはまだ来てないのか!?」


支店長さんの問いに対して、従業員さんのひとりがケーソツな声で答えた。


「ヨリイさんは、イボジがいたいから休ませてくださいと言うてましたけど…」

「イボジが痛むだと!?」

「ええ。」

「なんてこった〜…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った困った!!」


支店長さんは、ものすごくおたついた表情でのたうち回った。


時は、午前11時半頃であった。


またところ変わって、高須台たかすだいにある豪邸いえの前にて…


家の前に、エプロン姿の実可子みかこがいた。


実可子みかこは、ほうきを使ってはきそうじをしていた。


そんな時であった。


近所で暮らしている奥さまが実可子みかこのもとにやって来た。


「ちょっと奥さま。」

「あら、高井神たかいがみの家の奥さま。」


近所の奥さまは、実可子みかこにひとことあいさつしたあとパートはどうしたのかと聞いた。


「奥さま、きょうはパートに行かないの?」

「ちょっと…気分がすぐれないので…おやすみ…しています。」

「そう…」


近所の奥さまは、ひと間隔おいてから実可子みかこに言うた。


「奥さま。」

「はい?」

「毎朝、ヨリイさんのご家族が乗っている車に乗せてもらっていたよねぇ~」

「ちょっと…ご家族の都合が悪くなったので…エンリョしているのです。」

「そうよね…これから先もエンリョした方がいいと思うわよ…実はね…ヨリイさんのご家族のことでちょいと小耳にはさんだ話を聞いたのよ。」

「小耳にはさんだ話を聞いた?」

「うん。」


この時、豪邸いえの手前50メートルのところにあるますやみその広告がついている電柱の影に竹宮たけみやが隠れていた。


竹宮たけみやは、聞き耳を立てて実可子みかこと奥さまの会話を聞きながら、ちびたえんぴつでメモ書きしていた。


奥さまは、実可子みかこに対してとんでもない話をペラペラとしゃべった。


「あのね奥さま、ヨリイのご主人が強盗殺人事件を犯したみたいよ。」

「ヨリイさん方のご主人が強盗殺人事件を犯したって…どう言うことでしょうか?」

「けさの『めざましテレビ』のニュースでいよったけど…リバースモーゲージを契約していた老夫婦の娘さん夫婦の家族3人が…きのうの夜…殺されたみたいよ。」

「それ、ほんとうなの?」

「ほんとうにほんとうよ…事件が起こる数日前に、契約していたご夫婦が交通事故で亡くなったのよ…」

「もしかして…ヨリイさん方のご主人は、リバースモーゲージのことでなんらかのトラブルを抱えていたのかな?」

「そうよ…リバースモーゲージは、契約していた人が亡くなられた時に現金または担保にした家で返済する仕組みになっているけど…契約者のご夫婦の娘さん方の家は、返済するゆとりがなかったのよ…だからヨリイのご主人は、強硬手段きょうこうしゅだんに出たのよ。」

強硬手段きょうこうしゅだん…」

「うん。」

「もしかして…」

「そのもしかしてよ…ヨリイのご主人は、知人の知人のそのまた知人…を経て、市内で暮らしている元格闘家の男を紹介してもらったのよ。」

「元格闘家の男を利用した…その後、どうなったのよ?」

「だから…元格闘家の男は…暴力団関係者よ。」

「どうして?」

「さあ、ヨリイのご主人はセートーハの弁護士さんに頼めなかったんじゃない?…くわしいことはよく分からないけれど…」


近所の奥さまは、ひと間隔おいたあと実可子みかこにこう言うた。


「それとね…ヨリイのご主人は、他にもよぉけ悪いことをしていたみたいよ。」

「それはどう言うことでしょうか?」

「ここだけの話だけどね…ヨリイさん方のご主人ね…数年くらい前に…マタハラの被害を受けた女性を死に追いやったのよ。」

「マタハラ…あのまじめなヨリイさん方のご主人がそんなリフジンなことをするはずなどありませんわ!!」

「あんたね、だまされていることに気がついてよ!!」

「だまされているって?」

「ヨリイのダンナは…産休を申請した女性従業員さんにどぎつい暴力をふるったのよ…その末に、女性従業員さんは太田川かわに飛び込んで生命いのちを絶ったのよ…このあと、お昼くらいに放送されるワイドショー番組で報じられるみたいよ…ヨリイのダンナの親類縁者は大ダメージを喰らうわよ…四国で母子保護施設を運営しているおばさまの顔にどろをぬったから…もうあかんね。」


このあと、近所の奥さまはヨリイくんと奥さまの悪口をボロクソに言いまくった。


悪口は、50メートル先にいる竹宮たけみやにも聞こえた。


「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」


竹宮たけみやは、不気味な声でわらいながらちびたえんぴつでメモ書きをしていた。


(ポーン、ポーン、ポーン…)


時は、午後1時半頃であった。


またところ変わって、山口県岩国市平田の錦川にしきがわの近くにある運動公園にて…


公園内にあるテニスコートに、色とりどりのテニスウェアを着ている奥さま方たちがたくさん集まっていた。


テニスコートでは、テニスの例会がもよおされていた。


ヨリイくんの奥さまも、テニスの例会に参加していた。


ヨリイくんの奥さまは、(韓国ファッションの)ゼクシィ(通販サイト)で購入した純白のテニスウェア姿でテニスを楽しんでいた。


ヨリイくんの奥さまは、オキニのイケメンくんと一緒にダブルスでテニスを楽しんでいた。


この時であった。


(カシャ…)


テニスコートのどこかでカメラのシャッター音が聞こえた。


(カシャ、カシャ、カシャ、カシャ…)


カメラのレンズは、ヨリイくんの奥さまに向けられていた。


カメラのシャッター音がどこかで聞こえていたが、ヨリイくんの奥さまはそんなことは気にせずにテニスを楽しんでいた。


それから30分後であった。


ところ変わって、公園内にある着替え室にて…


ヨリイくんの奥さまは、汗でベトベトに濡れている状態で着替え室に入った。


この時であった。


着替え室にももけたハラマキ姿の竹宮たけみやが隠れていた。


ヨリイくんの奥さまは、室内に隠れていた竹宮たけみやにはがいじめにされて押さえつけられた。


「イヤ!!」

「おい、ちょっと来いや!!」


ところ変わって、着替え室の裏にある茂みにて…


竹宮たけみやは、ヨリイくんの奥さまを無理やり茂みに押し込めたあと、テニスウェアのスカートの中に右手首てくびを強引に入れた。


スカートの中に右手首てくびを入れられたヨリイくんの奥さまは、必死になってイヤだと言うた。


「イヤ!!イヤ!!やめて!!」


竹宮たけみやは、ヨリイくんの奥さまに対しておそろしい声でイカクした。


「奥さま…あんたは世間さまにウソをついたねぇ!!」

「イヤ…許して…」

「マタハラの被害を受けたとウソをついて、ダンナ以外の男と浮気しよったことを知った以上、制裁を受けてもらうぞ!!」

「イヤ!!許して!!」


竹宮たけみやは、ものすごくおそろしい声でヨリイくんの奥さまに言うた。


「おいコラ!!オレは怒っとんぞ!!オドレのテイシュが強盗殺人事件を起こしたことを聞いた…オドレのテイシュからマタハラの被害を受けた女性が自殺したことを聞いたゾ!!」

「やめて…イヤ!!」


竹宮たけみやは、ヨリイくんの奥さまが着ているテニスウェアのスカートの中に入れていた右手首てくびを出したあと、ベトベトに濡れたテニスウェアの上からIカップの極爆乳おおきすぎるおっぱいを両手で激しくもんだ。


「やめて…やめて!!…うちには子どもがいるからやめて!!」


竹宮たけみやは、ヨリイくんの奥さまのIカップの極爆乳おおきすぎるおっぱいから両手を離したあと、やる気のない声で言うた。


「やめてと言うのであればこのくらいにしとくわ…」


それから5秒後に、竹宮たけみやはおそろしい声でヨリイくんの奥さまをイカクしながら、ハラマキの中に入っている小物を取り出した。


「だが…これで終わりと思うなよ…」


竹宮たけみやが着ているハラマキの中から、キオクシアのマイクロSDカードが出てきた。


竹宮たけみやは、ヨリイくんの奥さまにキオクシアのマイクロSDカードを見せながらイカクした。


「奥さまのテニスウェアのアップ写真から着替えの写真がこのカードにコピーされてまっせ〜これがどこへ流れるか…お分かりでっか?」


ヨリイくんの奥さまは、泣きそうな声で『返して!!』と叫んだ。


竹宮たけみやは、気色悪い声でヨリイくんの奥さまをイカクした。


「返してやるよ…その代わりに口止め料をはろてや…」

「口止め料…」

「軽く1000万円程度かなぁ〜」

「作ります!!作りますから許してください!!」

「ああさよか…1000万円はろてくれるんやね…おおきに…カネができたらいつでも連絡してや…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」


竹宮たけみやは、気色悪い声でわらいながらその場から立ち去った。


竹宮たけみやからイカクされたヨリイくんの奥さまは、その場に座り込んでくすんくすんと泣き出した。

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