第7話

次の日の朝7時頃であった。


家族7人がダイニングテーブルで朝ごはんを食べていた。


この時、食卓の雰囲気は極力悪化きけんなじょうたいにおちいった。


スーツ姿の秀祝ひでのりは、朝ごはんをたくさん残したあと黒の手さげとジャケットを持っていすから立ち上がった。


(ガーン!!)


その後、右足で席をけとばして家から出ようとした。


この時、そのみが家から出ようとした秀祝ひでのりを止めた。


秀祝ひでのり!!」

「なんぞぉ!!」

「どこへ行くのよ!?」

「今から出勤するんや!!」

「それだったら、もうすぐヨリイくんが来るから…」

「はぐいたらしいんだよ!!なんでヨリイのクソバカと一緒に行くのだよ!!」

「なんでって、ヨリイくんの家族3人は同じ方向へ通勤通学をするから…」

「ますますはぐいたらしいんだよ!!オドレらはこんなことしてどうしたいのだ!!」

「おかーさんは、家族たちのフタンを軽くするためにヨリイくんの家族3人と一緒に通勤通学をしているのよ…」

「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれ!!」

「なんでそんなに怒るのよ!!」

「ふざけるな!!オレはクソバカのせいで人生がワヤになった!!幼稚園から高校・大学まで同じ学校に通う…同じ職場で働くことがうざいんだよ!!ドーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセードーキューセー…オドレらがドーキューセーがどーのこーのといよんが気に入らん!!」

「うちは、ドーキューセーと同じ…」

「ドーキューセーと違うことをしたらいかんのか!?」

「言うてないわよ~」

「はぐいたらしいんだよ!!ドーキューセーと言う言葉を読むだけでもヘドが出るんだよ!!」


思い切りブチ切れた秀祝ひでのりは、手さげとジャケットを持って家から出ようとした。


その時であった。


(ジリリリリリン!!ジリリリリリン!!)


近くに置かれているうぐいす色のプッシュホンのベルが鳴った。


この時、電話の応対に出ようとした実可子みかこ秀祝ひでのりを止めた。


「あなた、ちょっと待って。」

「なんで止めるのだ!!」

「ちょっと電話に出るから待って。」

「オレは出勤するんや!!」

「分かっているわよ…だけど、電話に出るから待ってといよんよ。」

「なんで電話に出るんや!!」

「もしかしたら、あなたのお友だちから…」

「だまれ!!」


たまりかねたそのみは、つらい声でふたりに言うた。


「早く電話に出てよ…電話をかけてきた人が困っているのよ…早く!!」


実可子みかこは、ものすごくつらい表情で受話器をあげたあとお話をした。


「はい片島かたしまでございます…ああ、ヨリイさんのご主人さまですね…」


電話は、ヨリイくんからであった。


「ああ、きょうも送り迎えをよろしくお願い…(途中で実可子の表情が変わる)…えっ?…行けなくなった…もしもし…どうかなされましたか?…もうすぐ7時半になるのよ…えっ?…おくさまがマタハラ…おくさまがマタハラの被害を受けた…娘さんも…なんらかの被害を受けたのですか?…分かりました…きょうは行けないのですね…それじゃあ、明日の朝にまた…できん…なんで?…困ります…ここからバス停まで遠いのよ…ご主人の車がなかったら不便なのよ!!…困ります!!…今すぐに来てください!!…できん…どうしてできんのよ…つらいからできん…もしもし…もしもし!!」


(ガチャーン!!ツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツー…)


受話器ごしにいるヨリイくんは、電話をガチャーンと切ってしまった。


実可子みかこは、ものすごくつらい表情を浮かべながら受話器を置いた。


思い切りブチ切れた秀祝ひでのりは、黒の手さげとジャケットを持って家から出ていった。


残された家族6人は、ものすごくつらい表情であたりを見渡した。


ところ変わって、基町もとまちクレドの中にある(東京スター)銀行の店舗にて…


時は、朝8時40分頃であった。


スーツ姿の秀祝ひでのりが重苦しい表情で店舗に入ったあと、女性従業員さんと支店長さんにあいさつした。


「おはようございます。」

「おはよう。」

「おはようございます。」


朝のあいさつを済ませた秀祝ひでのりは、自分のデスクに座ったあときょう一日のお仕事の準備に取りかかった。


この時、支店長さんはものすごく困った声で言うた。


「あれ?ヨリイくんはまだ出社していないのか?」


女性従業員さんは、気だるい声で支店長さんに言うた。


「ヨリイさんは、奥さまと娘さんのそばにいたいから休みますっていよった。」

「(支店長さん、ものすごく困った声で)よいよい、困ったな~…リバースモーゲージを契約している老夫婦の娘さんからクレームが来ているのに…担当していたのは…たしかヨリイくんだったね。」

「そうですが…」

「困ったな~」


そんな時であった。


遅れて出社した女性従業員さんが切羽詰まった表情で店舗に入りながら言うた。


「ちょっと大変よ!!」

「どうしたのよ!?」

天満川かわで、うつ伏せになった状態の女性が浮かんでいたわよ!!」

「ウソでしょ!!」

「ヤダ〜こわい〜」


店舗にいた女性従業員さんたち数人は、遅れて出社した女性従業員さんのもとに集まったあとうわさ話をしていた。


秀祝ひでのりは、うわさ話をしている女性従業員さんたちを冷めた表情でにらみながらお仕事を始める準備に取り組んでいた。


(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)


ところ変わって、小網町こあみちょう電停えきの付近にある通りにて…


広島県警の車両と広島市消防本部の車両あわせて20台が停まっていた。


車両のスピーカーからけたたましいサイレンが鳴り響いていた。


付近で暮らしている住民たちが近くを流れている天満川てんまがわに集まっていた。


場所は変わって、川にて…


川に広島県警の刑事たちと地区の消防団の団員たちが乗っているボートが浮かんでいた。


この間に、うつ伏せの状態で死んでいる女性が浮かんでいた。


消防団の団員たちは、刑事長でかちょうの指示を受けながら遺体の引き上げ作業に取り組んでいた。


うつ伏せの状態で浮かんでいた女性の遺体は、それから4時間後に引き上げられた。


死亡した女性の国籍・身元…は不明であった。


広島県警けんけいは、死亡した女性の国籍・身元…は不明で事故として処理した。


その日の夜10時半頃であった。


またところ変わって、家の大広間にて…


家の大広間に富士夫ふじおそのみ夫婦がいた。


富士夫ふじおそのみは、藍子あいこの今後のことについて話し合いをしていた。


その時であった。


(ジリリリリリン!!ジリリリリリン!!)


うぐいす色のプッシュホンのベルが鳴り響いたので、富士夫ふじおが電話に出た。


「はい、片島かたしまです…片島かたしまはうちですが…」


この時、受話器のスピーカーから不気味な男の声が聞こえた。


「もしもし…夜分遅くすんまへんねぇ…」


男の声は、竹宮たけみやだった。


ところ変わって、集会所の近くにある電話ボックスにて…


緑のカード式の公衆電話で電話をかけている竹宮たけみやは、ちびたえんぴつでメモしながら気色悪い声で言うた。


片島じいさんよ…きょうはじいさんに言いたいことがぎょーさんあるさかいに…コラ片島クソジジイ!!ワシはじいさんの娘のせいで人生がわやになったんや!!どないしてくれるねん!?…なにィ!!なにいよんか分からんだと!!…オドレは37年前に犯したあやまちを放して逃げる気か!?…忘れたとは言わさんぞ!!」


竹宮たけみやは、山積みされている10円玉を投入口に入れながらおそろしい声で言うた。


「今から37年前に発生した岡山空港で2歳の女の子が置き去りにされたあの事件や…当時2歳だった永眞えまが置き去りにされた例の事件だ…オドレは、村前むらさきのクソジジイから永眞えまを引き取ってくれと頼まれた…だから永眞えまを引き取ったのだな…おいコラ!!答えろ!!答えろ!!…認めるのだな…分かった…せやけどオドレは、それから何ヶ月か後に悪いことをした…永眞えまを引き取ってから何ヶ月か後に、オドレは永眞えまをナタリー(フジグラン)へ置き去りにして逃げた…そのあと、おどれらは何しよったんぞ!!…クックックックックックックックックックックックックックックックックックックックックックックックッ…まあええわ…きょうはこのくらいにしといたろ…だが、またおたくに電話するから覚悟しとけよ!!」


(ガチャーン!!)


竹宮たけみやは、電話を切ったあと『ヒヒヒヒ…』とわらいながらちびたえんぴつでメモを取っていた。


ガチャーンと切られた富士夫ふじおは、全身をブルブルと震わせながら怒り狂った。

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