第8話
私は大学を、卒業したらツアーガイドの道か書店員かで、進路を迷っていた。ネットでそれぞれの職業の名を打ち込み、大変、クレーム、利点、などを検索欄が膨大になるまで調べ、人に見られたら嫌なので一気に検索履歴を消去する。
セミナーやOB、OGとの親睦会などにも参加する。アルバイト仲間とも休暇室で当然就活のことを話す。しかし、私の前向きな自信に溢れた行動、意識、意欲、印象は決して崩されない。
将来に不安があるとすれば、奨学金の話だ。こればかりは誰もが死んだ目をする。奨学金免除の試験だってちゃんと受けたが、後一歩足りなかった。
だっていうのにあの女、奨学金て、要は借金ですよね。
彼女には彼女の言い分があった。しかし。他の感想が入ってこない。スタッフルーム前で聞いてしまった。
とにかく、私は自信に満ち溢れていればいい。
パートの奥様方ともうまくやれている。ただ、一人だけ、その店舗には、生まれて初めて、自分が見下すことになるフリーターがいたのだ。
からかい、ひやかし、おとしめ、私達は他の場所で自身に向けられていたそれらを小林に流し込む。
それが、小林彩美だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます