第20話 木の香る家で(葵side)⑥
己の遺伝子を与えること。
あの頃の俺にはとてつもなく恐ろしいことだった。
父親から受け継いだ負の遺産を遺したいなんて思えるはずもなく。
でも、そんな俺に、陽は言った。
俺の遺伝子は唯一無二だと。
あの言葉が、俺を救ってくれたんだ。
だからもう、怖くない。
俺はお前に俺の全てを捧げる。
二人の汗が溶け合うほど、激しく互いを重ね合う。
言葉は喘ぎに変り、影は一つとなり。
登り詰めた快感の先に見えてきたのは、穏やかな平安の境地。
そうか……
ここが、俺達の居場所なんだな。
今更になって、木の香りに気づいた。
「私達の家」
ふいに陽が言った。
「私はずっとここにいるよ」
「ああ」
「幸せ」
「俺もだ」
ふわりと微笑んだ陽が愛おし過ぎて、俺はまた彼女を抱き寄せた。
一時も離したくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます