第19話 木の香る家で(葵side)⑤

 彼女の中へ分け入れば、陽がツイっと涙を流した。


「痛いか?」


 心配になって尋ねれば、今度は花のような笑顔に変わる。


「ううん。嬉しいの。ずっごく幸せ」  


 俺は指先で陽の涙をそっと拭った。


 バカ野郎。


 そんな事言われたら、俺の理性が吹っ飛ぶだろうが。



 華奢な体を抱き上げる。

 一ミリのスキマも残さず、ピタリと体を密着させた。


 滑らかな陽の肌が、俺の一部になるように。

 

 お前の胸の高まりが、俺の体も打ち鳴らすように。



 胸元の陽が呟いた。


「あおくんに抱きしめられると安心する。力強くて、優しくて」


 すいっと小指を差し出して来た。


「これからは、ずっと一緒だね」


 細い指先を絡め合い、永遠の契を交わせば、陽の瞳からまた涙が溢れ落ちた。


「本当はずっとこうしたかったの。陽は我儘だから、本当はあおくんを独り占めしたかったんだよ。だから今、凄く嬉しい」


「陽、俺もお前を独り占めしたかった」


「一緒で良かった」


「覚悟をしておけよ」 


「え!」


 驚きで瞳を見開いた陽。


 そこからキスの雨を降らしていく。


「俺の執着心は半端ないってことだよ」


 俺の唇を全身で受け止めながら、陽が納得したように笑った。


「そうだね。あおくんの一途な情熱は善三おじいちゃんのお墨付きだもんね」


 天国で二人は会った事があるのかな。


 ふと、そんな事を思った。



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