第17話 木の香る家で(葵side)③

 コクリと頷いた陽。


 震える指で、ウェディングドレスのファスナーを掴めば、陽の華奢な背がぴくりと波打った。


 一気に下ろして左右に割る。


 純白の羽を奪うような背徳感。


 でも、これでいい。


 お前の羽根はもういらないはず。

 ここから飛び立つ必要は無いんだから。


 これからは、ずっと俺の側に居てくれるんだから。


 薄衣一つになった陽を再び抱き上げる。



 お前はやっぱり細いな。


 思いっきり抱きしめたら、折れてしまいそうだから。


 大切にベッドの上に下ろした。


 俺の宝物。


 上から見下ろせば、いつもは真っ直ぐに見つめてくる瞳が、恥ずかしげに横に逸れた。


 そんな陽が愛おしくてたまらなくなる。


「俺を見て」


 だからつい、意地悪な命令を投げつけてしまう。


 ちょっと頬を膨らませてから、陽が覚悟を決めたようにこちらに向き直った。


「あおくんの意地悪」

「そうか。意地悪か」


 可愛い毒を吐く口を塞いだ。


 応えるように陽の唇が吸い付いてくる。

 それは甘くて、柔らかくて、優しくて。



 俺達は何度も、何度も。


 唇を重ね、舌を絡め、愛を伝えあった。

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