一夜

第15話 木の香る家で(葵side)①

 陽を抱えたまま、俺は真っ直ぐに緑の中を進む。


 どこへ向かっているのかは、わかっている。


 いや、わかっていないけれど体が導いてくれた。



 葉陰から陽の光が差し込む先に、周りに溶け込むように佇む小さな木の家が現れた。



 そうだ。これだ!


 俺が、心の中で思い描いていた家。

 陽と一緒に過ごすために、作りたかった家。


 きっとこれが、出来上がった姿なのだろう。


 

 扉を開けて中に入れば、慣れ親しんだ気持ちになる。

 木材一本一本と対話しながら建てた自慢の家を、陽は気に入ってくれるだろうか?


 その様子を見れば、尋ねるまでも無いな。


 きょろきょろキラキラと瞳を輝かせた陽は、最後に俺の目に戻ってきた。


「あおくん、スッゴく素敵! 陽、気に入っちゃった! 建てるの大変だったでしょう。ありがとう」


「おお、良かったよ」


 照れくさくてついっと視線を外せば、陽の指が俺の両頬に添えられた。

 動きを封じられてしまえば、否が応でもその瞳に吸い寄せられてしまう。


「あおくん」

「ん?」


 次の瞬間、俺の唇は柔らかくて甘やかな感触に包まれた。


 ああ……最高の栄誉だ。 


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