第14話 天国の入り口で結婚式(陽side)⑧

 みんなの笑顔と涙と拍手に見守られて退場する。


 その時······



 グラッ!


 あ、やっちゃった!


 慣れないヒールの高い靴のせいで、裾を思いっきり踏んでバランスを崩した。

 白い塊となって前のめりになる。


 ふっとあおくんが笑った気がして。


 次の瞬間、私は空中の人になっていた―――


 フワフワのドレスごと、あおくんの腕の中にすっぽりと収まっていたから。


「あおくん、重いから……」

「陽、俺の職業は何だ?」

「え、大工さん」

「だから、問題ない。普段から鍛えているからな」


 丸太と同じ要領で私を抱き上げているんだ。


 そう思ったら可笑しくて笑ってしまったけれど、それは気恥ずかしさを隠すため。


 本当はとっても嬉しくてお姫様になったみたいで嬉しかった。

 

 たくましい腕に、胸板に、頬が熱を持つ。

 

「全く。いつでもどこでも、陽はやっぱり陽だな」

「え、それどういう意味?」

「ポンコツで……かわぃぃ」

「な……」


 最後の言葉は口の中で小さく呟いただけ。

 でも、私、ちゃんと聞いちゃったもんね。


 誤魔化すようにハハッと白い歯を見せたあおくん。


 わざと恨めし気に睨んでやったけど、そんなの赤い顔を隠すためのカモフラージュだよ。



 きゅんきゅんが止まらないの。


 あおくん、かっこ良すぎるよ。


 私だけの王子様。



 身も心もイケメンな王子様。



 あなたに出会えて良かった。

 ありがとう―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る