第10話 いよいよ九州! そして、博多へ。

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 小倉を出発すると、再び鉄道唱歌のオルゴールとともに案内放送。

 博多、久留米、大牟田各駅及び終点熊本の到着時刻が告げられ、引続き、車内の案内と車掌の検札が向う旨の案内も流れる。

 またも、食堂車の女性従業員からの案内。

 それに従って、何人か食堂車に向かう客も見受けられる。

 同時に、車内販売の女性もワゴンを持ってやってくる。

 本州とは車内外の雰囲気も変わってきたことが、肌身で感じられる。

 

 教授の座る座席の反対側の窓の向うには、玄界灘が広がる。

 今まではこちらの窓が海側だったが、ここから先は逆になる。

 ふと、通路の向いの窓の向こうを見るともなく見ると、やはり、海は瀬戸内海よりも荒いようである。そのうち八幡製鉄所なども見える。

 これまで海側だった車窓は山側に。その先には、九州の諸炭鉱が控えている。


 車窓の雰囲気もまた、本州を走っていたときに比べて明らかに変わっている。

 車内の雰囲気も、明らかに変わった。

 話され飛び交う言葉も、かなりの割合で九州地方の人たちのそれである。

 幼少期から慣れ親しんだ関西の言葉は、もはや、ほとんど聞こえてこない。

 昼過ぎの北九州を滑走した列車は、やがて、福岡市の郊外へと入っていく。

 車窓の向こうに、九州大学が見え始める。


 再び、鉄道唱歌のオルゴールが流れる。

 列車は定刻で走っており、間もなく、博多に到着する旨が告げられる。

 到着ホームとどちら側のドアが開くか、そして、接続案内が丁寧になされた。

 手前の吉塚を減速しながら通過して間もなく、定刻13時37分、博多到着。

 ホームの向うは、翌年の開業を控えた新幹線ホームの工事が進んでいる。


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 堀田氏はなんとなく、この列車を見送りたい気持ちになっていた。

 数分の停車の後、彼のいるホームを滑り出した青と白のツートンカラーのこの電車は、約100キロ少々先の熊本に向け、タイフォンを鳴らして去って行った。

 方向幕に「つばめ」と書かれた電車を見送った後、彼は改札を通り、駅員に切符を渡して福岡の街中へと出た。

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