第78話 失礼な奴に礼儀は不要なのである
よし、早速口をはさんじゃうぞう。
「いきなり出てきて先輩に失礼な事言うのやめてもらえませんか」
好き放題に言ってる同中女さんに言葉を挟んだ俺に、途端に不快気に顔をゆがめる女さんとその彼氏。
「ハ?何あんた、つか、さっきから黙って突っ立ってたけどなんなん?何口挟んできてるワケ?」
同中女さんはジロジロと俺を値踏みするように見ながら言ってくるけど、言動全て失礼で出来てるなこの人。
「どういう知り合いかわからなかったので静かにしたんですよ。聞くに堪えない無いようだったので口を出させてもらいました」
「はぁ?つーかアンタ年下っしょ?年上に生意気いっていいと思ってんの?」
なんか同中女さんが言ってるけど無視して、俺の荷物をアカ先輩の足元に置かせてもらう。そんな俺の態度に同中女さんが何か言っているので改めて振り返り啖呵を切る。
「失礼な奴には年上だろうと、この桃園太郎容赦せん!」
そんな俺の言葉にビキッ!ビキビキッ!と激おこな様子の同中女さん。うむ、ここまで想定通り。という訳でこの2人をアカ先輩に近づけないようにしっかりとガードしよう。
「……あ?なんだおいコラ。何が容赦せんなんだよ、あーんタロ様が死んだとか巻末にハガキでも送られてぇのか?」
彼氏君がズイズイと近づいてくるが、とりあえずダーマッ!!っぽい手の動きでシュッ!シュッ!と煽っておこう。
「キノコ狩り世界チャンピオンの仇に咽び泣く男ダーマッ!!!」
全く怯む様子がないどころかさらに煽る俺に、彼氏くんが途端に怒り顔で掴みかかってきた。単純な人は行動が読みやすくて助かるね。
そんな動きも爺ちゃんの動きに比べたら遅すぎるのでひょいっとかわしてやる。ぴょいっとはれるやしちゃうもんね、当たらなければどうという事は無いって金髪のロリコン王子様も言っていた。
「あ、まてこの」
ムキになって俺を捕まえようとするが全部ギリギリで回避してやる。胸倉掴みたいだけどタローちゃんにはおさわりはNGでェ~す♪
「タロンザム!!」
あまりに隙だらけなので、通常よりもスタミナを消費するけど赤くなっている位の気持ちで後ろに回って脇の下さんをくすぐってやる。
「うおげひゃひゃひゃひゃ!!……っておいふざけてんのかオラァ!」
彼氏君はそんな俺の自由奔放な振る舞いにペースをみだされて情緒が混乱しているが、大丈夫です、ふざけてますよ。やだなぁ、アンタは今日俺にからかいつくされるんですってばよ。おちょくり倒されて頭に血が上った彼氏君が捕まえようとしたり途中から普通に殴ってきてるが全部よけたりさばき切る。爺ちゃんにしごかれているのがこんなところで活きるとは人生万事塞翁が馬だなぁ。
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ、あと速さが足りないんじゃないですか」
「ヒドォチョグテルトヴッドバスゾ!!!」
回避しながら声をかけたらなんか怒鳴ってきた。
いるよね~、困ったら威嚇すればなんとかなると思ってる人、やだぁ~。まぁからかいつくされてるんでさもありなん。
しかし面倒くさくなってきたしキリがないので、意識がお留守になってるっぽい足元の、進行方向にそっと俺の足を添えてやると自分から突っ込んできて盛大にすっ転んだ。
「ウワアアアアアアア!」
目を見開き口を大きく開けて必死の形相で悲鳴をあげて転倒する彼氏くん。なんということでしょう、普通に見掛け倒しだこの人。
「大丈夫っスか~?」
なんとも言えないダサさに可哀想になって声をかけてしまったが、これは彼の自爆ですよ自爆……まぁこれぐらいは良かろう。
アカ先輩を背中に庇いつつ、転んでケツをこっちに向けてる彼氏君と、状況を飲み込めてない女さんから距離をとる。
「なんだ?」
「なんかあの日焼け男が男の子に掴みかかっていて自分から転んでたぞ」
「うわ、ダッサぁ」
ここは人通りの多い道なので、俄かに道行く人に注目を集めており転んだ彼氏も女さんも顔真っ赤にしていた。
「人目も集めちゃいましたしこれで手打ちにしませんか?」
女さんの方に話しかけると、ぐぬぬと悔しそうな顔をしながら転んだ彼氏くんを助け起こしに向かった。
「何よ……キモオタの、オタ崎の彼氏の癖に調子に乗ってるんじゃないわよ!マーくんはクラブでも有名なダンサーで、アンタみたいな冴えない男よりはるかにい男なんだから!!こんどのダンス大会もマー君が勝って温泉旅行連れてってくれるし!」
そう言って、起き上がった彼氏と2人でそそくさと退散していった。
捨て台詞吐いてイキッていくあたりがとっても三下っぽいなぁとじわる。正直、高校入ってからに出会った悪党達に比べたら全然大したことないのだ。ほう、経験が活きたなという名セリフを知らんのか?
しかしダンス大会、ねぇ、すずめちゃんが言っていたやつかな?へぇ。……へぇ?いい事聞いた。
「もう大丈夫ですよ、アカ先輩」
そう言って振り向くと、ごめんね、巻き込んでごめんねと俺に謝っているアカ先輩。何か感情のスイッチが入っているのか、らしくない様子だ、
別に俺が好きで割って入った事だし、あと彼氏君見掛け倒しで赤くてダイヤで意外と弱そうな雰囲気だったので別に何ともないんだけれど……涙目で俺に謝り続けているアカ先輩はいつになく弱気で、それになにより消えてしまいそうな儚さを感じて放っておけない。
あの女さんにされたことは今でもアカ先輩の傷になって残っているのんだろうか。
―――よし、タローさん夏休みだけど、頑張っちゃうぞ!!!
タローさんはあの手の失礼な輩には闘志を燃やしてしまうのだ。というか今のやり取りがあってアカ先輩を放っておくことなんかできるわけがないのだ。だって俺は―――桃園太郎だからね!!!!!
「アカ先輩。詳しく話、聞かせてもらえませんか?」
そう言って俺は、涙ぐんでスカートを掴んでいるいるアカ先輩に手を差し出したが、どうしたらいいのかわからず困惑しているアカ先輩の手を強引に取り、ついでに置いていた俺の荷物も持つ。どうするかなーと考えたところで手に持った荷物を買いに来た理由を思い出す。荷物置きにどのみち部屋に戻るつもりだったし、ここから近いからアカ先輩連れていったん部屋に戻るのが良さそう。
……何もしないよ、タローさんは紳士なんだよ。変態という名の紳士ではない、ジェントルマンだよ本当だよ!!
という訳で俺は、じいちゃん曰くヤリ部屋改めタローさんの秘密基地に向かってアカ先輩の手を引いて歩き出した。
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