第68話 夏の足音がする季節
という訳で冤罪裁判でも俺はまた悪目立ちしてしまった。蟹沢弥平から続いてだから仕方がないけど、毒を食らわば皿までだ、もうどうにでもな~れ☆
校内歩いていると“あの桃園”とか言われちゃうんだぜ、ぐっすん。
あと綿貫は、それからほどなくして綿貫が書類送検やら何やらかんやらされたという事は漏れ聞こえてきた。どうもキナくさいことや弥平が残したネットワークを使って悪さをしていたらしく、普通に退学になった。一応自主退学・転校ということだったけど。退学した後はカスコー送りになったらしい。古部都のコブは古部都のところに戻ったという事だろうか。
一応、ヒメ先輩(の権力)が監視しているので、綿貫は今後の人生で迂闊な事はできないだろう。ヒメ先輩も直々に警告したとか言ってたし。
綿貫が蟹沢のようになるかはわからないが、普通にブタ箱にシューッ‼!される可能性も普通に高いけど。
まぁ、やったことのインガオホー!なので素直に罪を償ってどうぞ。
ところで、はじめちゃんからは中学の頃のお前みたいだった、なんて褒められてるのかようわからんことを言われたり、あきらも最近の俺の方が良いと言っていた。中学の頃、中学の頃なぁ……そうねぇ、色々あったもんね。皆がそう言ってくれるって事は俺も色々立ち直ってきてるんだろうか。
……あの事件の跡学校を去って行ったアイツはどうしてるんだろうなぁ。もう会いたいとは思わないけど、まぁ、一応……親しくなった相手、だしな。
そういう意味では雉尾先輩どうしてるんだろう、学校にはいるっぽいけど全然姿観ないよなぁ。元気にしてるといいですね。
ともちゃんはともちゃんで、
「すごくタローっぽかった!!!!」
と、太陽のような笑顔でぺかーと言ってきていたけど今回の殊勲賞はともちゃんなんだよな。俺に接近してきた綿貫の出鼻をくじいてくれた事と綿貫の対応の仕方があそこで決まったようなもんだし。……ともちゃんに言ってもほげぇ??って反応しか返ってこなさそうだけれども改めて感謝の気持ちは忘れない。あとともちゃんもだいぶん中学生時代の元気で賑やか花丸なすがたに戻ってきたと思うよ。
ヒメ先輩にも多大な借りを作ってしまったのでまたそれは返していきたいと思うのだけれど、ヒメ先輩が何やら夏休みに俺に頼み事?お誘い?があるような事をゴニョゴニョと言っていたので何かあれば二つ返事で引き受ける所存!
あとアオ先輩が俺を桜那先輩に盗られてしまう(?)と、よりいっそうしがみついてはなれなくなった。アオ先輩はぶれない、いつだって俺をバブみに沈めてくる…オギャァ…。
あとアカ先輩は夏が近づくにつれて何故か、
「締め切りが……修羅場が…」
とうわごとのように呟きだんだんやつれ始めたのでちょっと心配。困った時はタローさんにお任せなんだよ?
桜那先輩にからのアプローチも日をおうごとに結構激しくなったが、反面戸成の表情がいまいち浮かない顔をしている事が多かったのでテスト期間中で早く学校が終わる帰り道に戸成を誘ってのんびりと河川敷を歩いてみた。たまには道草に付き合えよというとなんだかんだでついてくるあたりは戸成なのだ。
河原で意志をみず切り始めると、一緒に水切りを始める戸成。適当にそうやって遊んでから、気になっていたことを聞いてみた。
「なに浮かない顔してんだよ」
「……うん。タローにはわかっちまうよな。ささらの、事なんだ」
そう言ってからまた1つ石を水切りさせる戸成。
「幼馴染って何なんだろな。犬井さんみたいな珍じゅ……オホン、面白い幼馴染がいるタローが羨ましく思うよ。
ささらがどうしようもない奴なのはわかってるんだ。それが弥平と出会ったためなのか、元々そうなのかはわからないけどさ……でも、子供のころから一緒だったから、楽しかった思い出も確かにあったはずで。そう考えたらどう反応したらいいのかわからなくなっちまった。最初から出会わなければこんな事にならなかったのかなとかそんな事まで考えが堂々巡りになって、胸がいっぱいになるんだよ」
「……何泣いてるんだよ」
水面をみながら、静かに涙を零す戸成。あと普通にともちゃんの事珍獣って言おうとしてたけどわかりみが深い。珍獣トモラって感じだしな!!!!!!
とはいえ泣く親友を放っておくこともできないのでゆっくり背中をさすると、項垂れて泣きはじめた。……仕方がないから胸を貸してやることにする。
「なんだよ、こういう事は女の子にやれよな……」
そんなことを言いつつも胸に顔を埋め泣きじゃくる戸成の背中を、落ち着くまで優しく叩いてやる。そうしているとしばらくして気恥しくなったのか、顔を起こして離れた。
「うぅっ、……またお前に恥ずかしいところ見せちまった」
「ハハッ↑気にする事なんてナイヨ↑」
茶化してそう言いながら戸成の背を叩き、それじゃアイスでも食って帰るべと促す。
「本当、ありがとな、タロー。お前が困った時は、絶対、絶対俺が助けるからな」
「おー、その時は頼むぜ」
戸成の表情が柔らかくなったのを確認しながら、その日はアイス食べて帰った。
まぁでも、これで入学から続いた騒動に関わる問題児も一通り片が付いたことだし、平和な高校生活が待ってるから大丈夫だろ、多分!……あれ、今変なフラグ立った?……まっさかぁ。
そんなある日、爺様に呼び出されていたのですずめちゃんと一緒に帰っていると俺達を呼ぶ声がした。
「おーい、タロー、すずめちゃん!」
戸成の声だった。俺が振り返って声をかけようとしたところで、傍らにいたすずめちゃんが動く気配を感じたので咄嗟に俺はすずめちゃんの前へと回り込む。バックステッポゥ!きた、メインタローきた。これで勝つる!
「ちゅん?!」
流麗な動作で俺に回り込まれたことに驚いているすずめちゃん。フフフ、たまたまですよ。俺グッジョブ!!
「しかし回り込まれてしまった!ってね」
そんな風におどけて言う俺に困った表情をするすずめちゃんだが、すぐに戸成が追いついてきた。
「2人の姿が見えたから追いかけてきたんだ。タローにはお礼を行ったけど、改めて改めてすずめちゃんも、ありがとう」
「ちゅん……すずめはなにもしてないでちよ」
戸成と改めての対面だというのに、すずめちゃんの顔は浮かない。
「そんなことないよ、すずめちゃん。中学の時も、すずめちゃんの手紙には勇気づけられたし、元気も貰ったんだ。今回の時だって、姉さんの無罪を信じて噂を否定して回ってくれてたって他の奴らから聞いたよ。タローも、古部都を説得に行くときにすずめちゃんが助けてくれたって教えてくれたし。本当にありがとう、すずめちゃん」
頭を下げる戸成に、すずめちゃんがあたふたとしている。
「か、顔を上げてほしいでち。す、すずめは、大事な時にいれまちぇんでちた。……だから、そんな風にお礼を言われるようなことはないでちよ」
「それは違うよ!……なんてね。すずめちゃん。すずめちゃんにもたくさん感謝してるんだ。……だからさ、また、昔みたいに話したり遊んだりしたいんだけど」
そういってすずめちゃんの手を包み込むように握る戸成。
「……ちゅん。すずめは、またお友達になっていいんでちょうか」
「俺とすずめちゃんは昔からずっと、大切な友達だよ」
そんな戸成の言葉に、最初はぽろりと、そして次第に大粒の涙をこぼしながら泣くすずめちゃん。それを困ったようにしながらも優しく頭を撫でる戸成。
よかった、すずめちゃんと戸成がまた仲直りできてと胸が熱くなるのを感じる。
これからは楽しい思い出が積み重ねれると思う。そう、大切なのは今までよりもこれから。
明日は今日よりもっと楽しくなるよね、タロー。へけっ!
「すずめのお宿から持ち帰った小さなつづらには、友情という名の宝物が入っていたという訳だ」
「……カッコつけて言ってるわりにあんまりカッコよくないのでハードボイルドじゃなくてハーフボイルドですよ」
物陰からひょこっと顔を出した舞花ちゃんがツッコみをいれてきた。くぅ、舞花ちゃん結構手厳しいー!思わず苦笑する俺に悪戯っぽくほほ笑む舞花ちゃん。ところでいつからそこにいたんですか?
「え?タロー君のことはずっと観てますが何か」
俺の心の中を読んだかのように、にこにこ笑顔の舞花ちゃん。うーむ、深く考えないようにしようっと。今回も相変わらず舞花ちゃんに助けてもらったので頭が上がらないのだが、舞花ちゃんはそんな事気にせずいつものご様子。この子もなんというかつかみどころがないよね、可愛いし良い子ではあるんだけれども。
「テストが終わったら夏休みですよ。楽しみですね、タロー君」
「……夏休み、かぁ。そうだなぁ」
そう、夏はすぐそこまできている。今年の夏は今までよりも賑やかで楽しくなりそうな、そんな予感がするのであった、まる。
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