第63話 冤罪裁判 ゲス教師のあとしまつ
次の日の放課後、舞花ちゃんに指定され、久しぶりに訪れることになる喫茶店に向かうと、舞花ちゃんにヒメ先輩、アオ先輩、アカ先輩がいた。
「遅くなってごめん。先輩達もありがとうございます」
「いえ、私たちも今来たところです」
「タローも元気そうね」
「タローまた変な事に巻き込まれてるじゃん、マジウケる」
「ふぁああああタロー君!あいたかったよぉ~。タローニウムを摂取すーはーすーはー」
早めに家を出たんだけど一番最後になってしまった。待たせて申し訳ないので謝りつつ席に座り、コーヒーを一つ注文する。
舞花ちゃんをはじめ先輩達が迎えてくれるのと同時、流れるような動きで隣に移動して抱き着いてくるアオ先輩の対応もすっかり慣れてしまったよ、ハハハ。
ハグされたり頭を撫でられたり心配されたりどさくさにまぎれてムチューとキスを狙ってくるので阻止しつつ、アオ先輩が落ち着いたところで話を切り出す。ところでタローニウムってなんなんでしょうね。
「俺の方でもいくつか証拠を掴めました。とりあえず桜那先輩の冤罪を晴らすことはできると思いますが……」
「やるじゃん!これ、頼まれていた監視カメラの映像ね。あとで確認してほしいんだけど、誰かが植え込みに監視カメラをおいてまわっているところは映ってるけど顔までははっきり映ってなかった。角度の問題だと思う」
「いえ、ありがとうございます。……とんでもない金額のお金を使わせてしまいました。俺にできることでお返しします」
「気にしなくていいよ、桜那のためだしね」
あっけらかんというがやっぱりヒメ先輩が超ド級お嬢様だというのを感じてしまう。いったいいくら使ったんだろう……ブルブル。
「俺の方では中学時代の資料が手に入りました。中学時代に桜那先輩の弟、この間プールにも来ていたあいつが中学時代にされていた嫌がらせに綿貫が関わっていた証拠です。あとは学校の裏サイトの炎上も対処をお願いしています」
そんな俺の言葉に頷きながら、舞花ちゃんが鞄からPCを取り出して、動画を見せてくれる。
「この動画を見て下さい」
そうして映し出された動画は、拘束されたチャラい男がうつっていた。
どこかで見たことがある顔だ……うん?あきらをナンパしてきたり、綿貫と一緒にいた自称医大生じゃないか。
映像の中では拘束されて芋虫のように転がっている。場所はどこかの廃工場だろうか?何か日曜日の朝とかによくTVで見そうな場所だなぁ。
「ヘッ、俺にこんな事をしてタダですむと思うなよ。俺達はこの街に残る、“弥平を継ぐもの”、ネオ弥平だ!!アイツの残したものを受け継いで、もっともっとビッグになってやるんだからな!!」
……弥平ァーッ?!聞きたくもない名前だがまた耳にすることになるとはふぁっく!!!!何か段々と見えてきたぞ……!!そして弥平が何か組織名のようになっててちょっとじわる。
「オラァッ、俺を解放しろ!!さもねえとネオ弥平の仲間が黙っちゃいねえぞ」
「貴方の仲間というのはあの綿貫ささらのことですか。随分と親しいようですが」
舞花ちゃんの声がするのは、この動画を撮っているのが舞花ちゃんだからだろうか。えぇ、舞花ちゃんこのチャラをトッ捕まえて吐かせたの?
「あぁ?クククッ、さぁな。けどあいつは頭が回るからなぁ、中学の頃から弥平の下で動いていたやつだ、面構えが違う。
弥平の下で働いてた俺達をまたまとめあげて組織にしたのもアイツだよ。アイツはやべーぇ、お前らじゃ太刀打ちなんてできないだろうなぁ。今なら目を瞑ってやるからさっさと俺を自由にしな」
さすがにほいほい綿貫の名前を出す事はしないか、残念。しかし弥平の余波がこんなとこにまであるとはと微妙な気持ちになるなぁ。ブタ箱行きになっても迷惑をかけるとかとんでもねぇやつだ。
「それはできん相談だ。お前のような悪党をのさばらせないために俺がいるんだ。
弥平が捕まった後も街で妙な動きをしている奴らがいるのは察知していたが、ようやく尻尾を掴むことができたんだ、逃すわけないだろう。とりわけ、お前は弥平の残党の資金源だ。みすみす放置するわけにはいかない」
そういって画面に映ったのは、、腰を落としチャラ男を睨む探偵さん。
なるほど、探偵さんと一緒に舞花ちゃんが動いてくれていたのか。ありがたい……。
その後も悪態をついたり、怒鳴ったりするチャラ男に、舞花ちゃんが淡々と状況の説明とチャラ男たちが詰んでいることを説明していった。
この問題の解決に“満足会”が動いていると聞いて、それまでイキりまくっていたチャラ男の顔色は悪くなり、最後の方は泣きながら助けてくれ俺は活動資金を出したり金を出してやったり女に手を出しまくっていただけで何も悪くない、あいつについて言ったら報復が怖いから言えないが俺は犯罪とは無関係だと号泣していたけど普通に犯罪だと思うよ?どこぞの元議員の号泣謝罪会見みたいに泣いてるのがただただシュールだった。というか何をもって犯罪じゃないというんだろうこいつ。
「という事で弥平の残党達と綿貫ささらにつながりがあると思われます。……中学時代から既に弥平と綿貫には面識があったものでしょう。妙に卓越した人の扇動は弥平仕込みのものかもしれませんね」
弥平ァァァァァァッ!!!?面倒な置き土産を残していくんじゃないよあの野郎!!!
「弥平の残党に関しては探偵さんの方で追ってくれていますし、このチャラ男はすでに警察に引き渡し済みです。残っている者も順番に捕まるでしょう」
綿貫からそこに繋がるかって感じだけど改めて言われてみると確かにと思う所がある。戸成を嵌めた時点で……あぁ、そういえば戸成の実家を嵌めた議員のグループだったんだっけ弥平。あーあーあー。卵が先か鳥が先になるかだけどこれ戸成の実家のスキャンダル騒動に綿貫も関わってたんじゃないかな今回のやり口を見るに。
中学時代から弥平に関わっていたとか戸成が可哀想すぎる……。
しかし俺一人だったらこんな所まで辿り着かなかっただろうけど頼りになる仲間がいて本当に感謝しかない。
「中学、中学……思い出した!!キイが蟹沢と知り合ったカラオケにキイを誘ったのが確か中学の時の後輩っていってたやつじゃん!!たしか綿貫って言ってたんだよ。間違いない綿貫っていってた!」
舞花ちゃんの動画が終わった所で、アカ先輩が唐突にそんな事を叫んだ。
キイ……そういえばヒメ先輩達と知り合ったときに、蟹沢の被害に遭った浅黄という友人がいるといっていたっけ黄色だからキイなのか、なるほどなるほど。
「そうだそうだ、どこかで聞いたことがあるって思ったらそうだよ、キイの後輩だよ。そこ経由でキイが蟹沢と知り合ってからやり取りしだして蟹沢と付き合いだしたんだもん」
うわ、それが本当だとすると綿貫も結構エグい事やってるなぁ。蟹沢弥平の所から繋がって逃げ伸びていたのか。やっぱり残党って言うとコロニー落とそうとするテロリストだったりするしロクでもねぇやつばかりだよね!!きっちり残党狩りするのって大事だったんだなぁ。
「へぇ……それは聞き捨てならないじゃん」
ヒメ先輩がすうっと目を細くする。これはかなりの激おこである。
「……アカ、悪いけどそこは詳しく調べておいて」
「アイサー!!」
因果応報というけれど、綿貫が今までやってきたことの報いがここにきて一気に収束してきている気がする。…全然可哀想だとは思わないけど。
「大丈夫ですよ、タロー君。皆ついていますし、……私がいる限り絶対にタロー君を勝たせます」
そう言って微かに微笑みながらウインクする舞花ちゃんを、この上なく頼もしく感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます