第41話 寝取り野郎との遭遇
はじめちゃんの話から数日、俺と舞花ちゃんはそれぞれの伝手を使ってサッカー部のことや古部都についても調べたが、もう掘ればザクザクというレベルで悪い話が出てきた。
「いやぁ、酷いなぁこれ」
「そうですね。出るわ出るわどうしようもない案件」
新聞部の倉庫で舞花ちゃんと顔を見合わせながらため息をついている、なう。
サッカー部全体の素行がよろしくないのは明らかなのだが、うちのサッカー部は全国大会常連の実力者というのが厄介で、学校としてはそういうサッカー部を無下にできず、なぁなぁですませていたきらいがある。
……要するにサッカーは出来るが人間性や品性が伴ってない輩が多いのだ。
このあたりは汚い大人の世界になるがまぁわからないでもない、理解はできるが納得はできないというやつだ。この学校不祥事多すぎない?クビ&しょっぴかれた前任の校長がやらかしてる事があまりにひどすぎる。
しかしなんでそんなサッカー部がこれまで大人しくしていたかというと、どうも蟹沢の手腕らしい。変態リベポ野郎の蟹沢だったが、あれで荒くれものや素行不良の生徒を上手くまとめていたようだ―――恐怖と暴力で。
大っぴらには言われていないが周知の事実として、去年に校則に違反したり多方面に迷惑をかけているサッカー部の生徒含む数人を“正当防衛”という形で病院送りにし、サッカー部のみならず素行不良の生徒の歯向かう意志をへし折っていたようだ。
「言葉が通じない奴にはそいつに通じる言葉で“理解(わか)”らせる」っていうのが蟹沢のスタンスで、他にも校内で好き勝手やってる生徒を軒並みきっちり病院送りにするのを繰り返して、問題行動を起こす生徒に対しては武力による統制を引いていたようだ。
結果として校内の治安はよくなり、問題児や不良もおとなしくなったから方法の是非はさておき蟹沢きちんと生徒会長やってたんだなぁ……俺の中ではフォモゥ…フォモゥ…にめざめてしまった変態リベポ野郎でしかないんで今更見直す事も無いけど…。
まぁ、自分が生徒会長してるところで不良が好き勝手やってたら自分の内申に響くとか、そういう打算もあったかもしれないけど今となってはわからない。
そんな、恐怖と暴力を使って無法者たちに蓋をしていた蟹沢が退学になったので、「ヒャッハー!」と世紀末問題児がイキがりはじめたのが今の状況といったところ。
古部都もその流れにのっかり女の子に迷惑をかけまくっているのかな?
この学校、学力では県下トップの進学校の筈なのに、部活動を強化するためにスポーツができる“だけ”の生徒を入れすぎて失敗してるんじゃねーのかなぁ。
うーん、やっぱり終わってるわこの学校。根本的なところから何とかしないと駄目なんじゃないかなぁと思う。
蟹沢があれで学校を束ねていたのが後になってからわかると、変態リベポ野郎じゃなければなぁ…お前なんでそんな方面に全速力でスキップしていったんだよ……としみじみ思う。空を見上げるとアヘ顔ダブルピースの蟹沢を幻視したような気がするけど別に見たくもないので、大人しく少年院でのお勤めを頑張ってほしい。
「うーん、これは古部都への対処と生徒会の立て直しを同時にする必要がありますね」
集めた情報や資料をみながら舞花ちゃんが言うが、俺も同じ考えだったので安心した。サッカー部全体の素行不良に関してはもう俺一個人でなんとかなるものでもないので、生徒会を立て直してまっとうな生徒自治会サイドからサッカー部の是正と勧告を試みる。
あとは教師サイドにもアプローチをかけていかなきゃなぁ。
何度も警察にお世話になっている(俺が悪い事をしたわけではない)俺という存在の圧力が使えるだろうし。どうしても学校で是正できないなら普通に事件にする方法もあるがそれは何か起きた時の最後の手段。さすがにこれ以上事件起こしたらどうにもならなくなるのは学校もわかってるだろうし、ぶっちゃけ蟹沢弥平の2件の時点で結構なダメージだ。
俺がそう言う手を取れる厄介な生徒だという事は学校も周知してるだろうしな。そこら辺も折をみて動いていこう。
「あとはもう一人、この古部都の恋人であり、戸成君を裏切った寝取られ幼馴染―――綿貫ささら(わたぬきささら)。彼女をどうするかですね」
戸成からしたら関わりたくないであろう汚さななじみにして元カノ。付き合ってる彼氏が他の女の子にコナかけてまわってる、という事になるけどそもそもが戸成を嵌めた加害者でもあるから同情の余地は0。男を観る目が無さすぎたんだ、ハッキリわかんだね。わかんだフォーエバー。
「戸成からしたら過去の人間関係でわざわざ知りたくもないかもしれないしなぁ。そこは俺達じゃ何とも」
まぁ折をみて戸成がこの2人をどう思ってるかも聞いてみないとなぁ。
――なんて、そんな事を思いつつ2人で帰ろうとしていると、校門まで来たところで教室に財布を忘れたのを思い出した。舞花ちゃんに謝って帰ってもらい、別れて教室に財布を取りに戻る。引き出しから財布を出し鞄に入れて廊下を渡っていたところで、人の声がするので下を見下ろしてみると丁度校舎裏に人影があり、よくみてみれば見知った顔がいた。
「あれ、あきらだ」
あきらが怯えた様子で壁際に追い込まれている。背の高くガタいのいい生徒に詰め寄られているようだ。そうやってあきらを追い詰めてる男も、知ってるぞ。
……古部都だ
あきらは逃げようとしているのか、困った様子だが古部都が身体で威圧しながら阻んでいる。なんだあの野郎、小辻さんだけじゃなくあきらにまでコナかけてんのか?うーん、こっから玄関に戻って校庭に降りると時間がかかるんだよなぁ。その間になにかあってもいけないよなぁ、仕方がない。緊急事態と思って勘弁してケロ!とと駆け出す。
「―――なぁいいだろ猿渡、ちょっと付き合えって言ってるだけじゃねーか?」
「嫌よ。私アンタみたいな男嫌いなの」
「おいおいそんな反抗的な事言うとその気になっちまうじゃねーか。前から気になってたんだよお前のえっろい体」
「うわキモッ、近寄らないでよ!」
だがあきらのそんな言葉に歯を見せて笑う古部都。うん、あきらが嫌がってるのに古部都が無理やり迫ってるみたいだ。クズの魂100までかな?おいたはこのタロちゃんがゆるしませんえ!
「そこまでにしておけよ古部都」
――――という訳で着地。
渡り廊下から外に出て、一階の窓上にあたる庇の上を走って2人がいる所の近くまで移動、そこから頭上の屋根に飛び移って、その傍に床パンチしながら右膝を地面に、左膝をたてながら着地したのだ。足場がしっかりあるから走りやすくて助かるねー。やっててよかったパルクール。
あと床パン着地って一度やって見たかったんだよね俺、赤と金の機械スーツのヒーロー好きだからさぁ。完結編で死んじゃって哀しいよ。それはさておき、突然傍に現れた……いや、降りてきた俺にあきらが驚いて声を上げる。
「タロー?!」
「ようあきら。困ってるみたいだから呼ばれてないけど助けに来たぜ」
そう言ってウインクするとなんか赤くなってるあきら。
なんとなくこういうムーブしちゃうのは戸成の影響受けてる気がするなぁ。とりあえず床パン着地のポーズから立ち上がりつつ、手や膝に着いた砂を払う。ちなみに俺は戦闘力5以下のゴミなので暴力沙汰になったらマジで終わりなので100%虚勢です。ハハッ↑。
「あぁ?なんだお前ぇ……こっちは取り込み中なんだよ」
乱入してきて来た俺に唸っている古部都。知ってるから邪魔しに来たんだゾ☆
「嫌がる女の子に迫ってるんじゃねーよ、秒で警察呼ぶぞ」
「アァ、警察ぅ……?!チッ、お前A組の桃園か」
「チッチッチ、YES、I AM。で、どうする?そこにいる俺の友達から離れて二度とちょっかいをかけないと誓って消えるか、この場に警察呼ばれて面倒な事になるか選ぶといいよ。ちなみに俺は最近2回も警察に関わってるから警官に顔見知りが多いのは伝えておく」
そう言って古部都と暫くにらみ合っていたが、暫くして古部都はチッ、と舌打ちして背を向けた。
「今度俺の邪魔したらブッ潰すかんな」
「おお、こわいこわい」
こいつが暴力に出てくるやべーやつの可能性はなかったけど調べた情報でサッカー部の部活動自体は真面目にやってるとあったのと、はじめちゃんの話からイキりスケベ猿だと踏んで乱入したけど素直に引いてくれてよかった。
古部都の姿が完全に見えなくなるまでじっと睨んでいたが、古部都の姿が見えなくなったところであきらが声を上げた。
「ありがとうタロー、怖かったぁ~」
へなへなと腰を抜かしてその場に尻もちをつくように座り込むあきら。部活の時の格好だから健康的に……えっちだ。
「どういたしまして。何もなくてよかったよ」
あきらが一息ついて動けるようになるのを待ってから、邪な視線にならないように気を付けて、あきらに手を差し出したらきゅっと握り返してきた。あきらの手って柔らかいよねー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます