第28話 イケメンからの相談
遊園地に遊びに行ってから、ともちゃんは自分から戸成に話しかけることが多くなったように思う。きっかけさえあればなんだかんだで自分で動けるじゃないかと苦笑しつつ、ともちゃんなりに戸成にアプローチをかける姿を見て応援していた。
元々ともちゃんも容姿はかなり可愛い子だし、そんなともちゃんにプローチされて戸成もまんざらじゃないように見える。俺に対しては恋愛脳でわがまま放題言ってはいたが普通にしていれば普通に人懐っこい女の子……だと幼馴染の贔屓目を差し引いても思う。
多分クラスで可愛い女の子を挙げろ、となったときは清楚・可憐・美人・家はお金持ち・性格良しの竜宮さんが……いや、竜宮さんは恐らく学年や学校で見ても恐らくトップクラスの美少女なのでそこは別格として、ともちゃんとあきらのツートップだと思う。この2人も学年でも多分上から数えた方が早いくらいには人気があるんじゃないかな。
そう、うちの学校は美男美女が多いのだ。……だから弥平みたいなクズが狩場として目をつけたのかもしれないけどね。あ、俺?うだつのあがらない一般人ですよハハハ。
戸成も気になるところはあるが、それはなにか齟齬があるような妙な違和感、という所で蟹沢や弥平とはまた違うような感じがするし、普通にいい奴なのでそこは必要が無ければ触れ無くてもいいんじゃないかなぁとも思うのだ、これは俺の勘だけど。変に勘繰られたら誰だって嫌な思いするしね。少なくともそう思える程度には戸成はいいやつだと俺は思ってる。
ともちゃんが他の女子と連れ添って戸成の部活を観に行ったりするようになったので、放課後はヒメ先輩やアカ先輩アオ先輩にいじられたり舞花ちゃんの新聞部を手伝ったりぶらぶら1人で帰ったりと結構穏やかな毎日が戻ってきて、あぁ高校生活ってこういうものだよなーとしみじみと堪能していた。
なんて思ってたら一人で帰っていたある日、公園で同じ年頃の私服の男子がうちの制服を着た男子三人に囲まれていじめられ……もとい恐喝・暴行されているのを見かけたので、迅速に警察に連絡しておいてからいじめ集団に話しかけて足止めし、そのまま到着した警官にバトンタッチしたりして全員パトカーでドナドナしたりした。
俺もいじめには思う所があるので放っておけないのだ。
そもそもいじめなんて言葉があるからいけないんだよ。暴行、傷害罪。罪状で呼ぶようにしたほうがいいと思うよ。
あと、蟹沢や弥平に比べたらたかがいじめの集団なんて数段格落ちだから屁でもないよねー。そんな事を思いながら警察署に行ったら婦警さんから
「また君…?!」
と何とも言えない表情をされた。
「そんなこと言わないでくださいよ、人生の徳積んでるんですよそれより婦警さんおっぱいおっきいですね!!」
なんて冗談言って婦警さんにシメられたりした。ついでに男の子やご家族からの礼はいらないと伝えてください、ともお願いしておくのも忘れない。別に見返りが欲しくてやってるんじゃないのだよ。
ちなみに拿捕されたいじめっ子達は常習犯だったらしく速やかに停学になってた。いい事すると気分がいいぜ……ヒューッ!
とまあ平穏なような時々そうでもないような毎日を送っていたが、体育の授業中に戸成が話しかけてきた。
「なぁ、タローに話があるんだけど……放課後2人で話せないか?」
うん?それは別にいいんだけどいちいち顔を近づけるな、耳元でひそひそ話するような内容なのか?と思いながらもその日の放課後、戸成と校舎裏で落ち合う事になった。あと戸成が俺の耳に顔を近づけてひそひそ話をすると一部の女子が色めきだ
ったり黄色い声あげてるけどアレ本当なんなんだろうね。なんか尻がキュッてなるわ。
放課後、校舎裏の待ち合わせ場所に行くと先に教室を出ていた戸成が待っていた。
挨拶も程ほどに要件を聞こうとすると、神妙な顔をした戸成が口を開いた。
「タロー、お前に言わなきゃいけない事があるんだ」
いつになく真剣な声色と表情の戸成。なんだお悩み相談課?いいぞ、お前の相談なら乗るよ。
「実は、昨日犬井さんに付き合ってくれって告白されたんだ」
告白?ともちゃんが、犬井に?
―――そうか頑張ったんだなともちゃん!偉いぞ!
特にショックを受ける事もなく、むしろよく頑張ったという気持ちの方が大きかった。散々我儘放題言いたい放題していたけど最近はなんだかんだで自分で頑張ってアプローチしてたしな、うん。そうかそうか、これで俺の肩の荷も一つ降りた。
「そうか、おめでとうって言っていいのかな?よかったじゃないか戸成」
そんな俺の言葉に困惑している戸成。
「え?あ、いや……ありがとう……?って違う、犬井さんとタローって幼馴染だって言ってたろ?だからその場で返事できなくてさ。何よりお前に不義理したくなかったしまずは相談しようと思ったんだよ」
あ、あー、そういう。律儀な奴である。
「いや、恋愛に大切なのは本人同士の気持ちじゃん?お前はどうなんだよ戸成」
「ん?そうだなぁ……多分ちょっと我儘なところとか子供っぽいところが少し見え隠れしてるけど、いつも元気で面白いし犬井さんは可愛いと思う……かな。最近よく話しかけてくれたりして楽しいし。付き合ってお互い知ってくのもいいかなとは思うんだけど……」
「なんだ、それだったらよかったじゃないか」
戸成もまんざらでもなさそうなのでうんうんと頷く俺。
ともちゃんに対しての人物評も結構いい所ついてると思う。ともちゃんもともちゃんで結構性格面でお子様してるところがあるが、そこを含めてそういう風にみてくれてるなら戸成うまくやっていけそうじゃん。なんだ、これでハッピーエンドって感じじゃね?
「あ、いや、うーむ。ええい、まどろっこしいのは無しだてやんでぇ!
それよりタローの気持ちはどうなんだよ。俺、タローが犬井が好きとかなら犬井とは付き合えないぞ。俺は男友達を裏切れねえ!!俺は幼馴染寝取り野郎や間男になるのは死んでもごめんだぜ!!」
そう言って俺を指さす戸成。うーん、お前昭和や平成初期の青春ドラマからでてきたみたいに馬鹿正直だな、そしてやっぱりいい奴である。実際問題ともちゃんへの恋愛的な好意が以前はあったので戸成の勘も冴えてるなと思うが、今では幼馴染としての友情はあっても恋愛感情は無いのでそこは俺に遠慮せずにいてもらいたい。
「あぁ、それなら気にしないでくれ。俺とともちゃんは―――あぁ、昔からの呼び方でこういう呼び方になっちゃってるけど、あくまで幼馴染なだけだよ。お互いに恋愛感情は無いんだ」
そんな俺の言葉に、頭の上に疑問符を浮かべている戸成。
「そ、そうなのか……?」
「あぁ。ともちゃんの良いところ悪いところ含めてよく見て、それでも付き合う選択肢を持ってくれたお前なら―――いや、お前みたいなやつだからこそともちゃんとは上手くやっていける気がするよ。もし2人が付き合うっていうなら俺は素直に祝福させてもらうぞ」
そんな俺の言葉に納得したのか、頷く戸成。
「すまん、タロー‼!変な事を聞いて、時間を取らせた!!」
バッ、と頭を下げる戸成。
「いやいいって。お前がそういう律義で正直な奴だっってわかって俺の好感度は上がったよ」
そんな俺の言葉に黙って顔を赤くする戸成。何で顔背けて恥ずかしそうにしてるんだよ俺も恥ずかしくなるだろうが。俺達男同士だぞ……!
その日は戸成の奢りでナクドナルドを奢ってもらった。俺はナックって呼んでるけど関西ってマジでナクドっていうのかな?
人の奢りだといつもより美味く感じるな、ワハハハ!
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