第8話 牛と鬼

ピッピッピッ


一定のリズムを保っている、機会音で目が覚める。

幾度か瞬きをする。

(僕は....生きているのか?)

心臓に手を置き、心音を感じ、自身が生きている事を実感し涙が流れる。

体を起こし周囲を確認する、するとウーさんとスイが、僕の右手と左手を、それぞれ握って眠っていた。


ガチャ


扉が開く音がする。


セリナさんだ

飲み物が入っているであろうマグカップが二つ、お盆の上に乗せられていた。

恐らく、僕を看病してくれていた二人への差し入れだろう。

セリナさんは僕が起きたことを確認する。

すると、セリナさんは微笑み、僕に向かって話す。


「起きたか」

「はい、生きてたみたいです」

「あまり心配を掛けるな」


怒られながらも顔は微笑んでおり、セリナさんが喜んでくれてるのが分かる。


「今、飲み物を持ってこよう」

お盆に乗っていた、二つのマグカップを机に置く。


置いた時の音で、スイとウーさんが起きたようだ。


まず、対面していた二人が顔を合わし、寝ぼけた顔で僕の方を見る。

その後、もう一度二人で顔を見合わし、僕の方を2度見し、起きた事を理解し涙を流す。


「ライト様!?」


ウーさんとスイが僕が起きたことを確認すると、同時に抱き付いてくる。


「よがっだでず~」

「じんだがどおぼみまじだ~」

スイとウーさんは涙ながりに、僕が生きていたことを喜んでくれている。

二人の様子を見たセリナさんは、フッと笑って扉を開け外を出ていく。


「ウーさん、痛い、死んじゃう」

ウーさんの愛情は伝わるが、腕力が強すぎて骨が折れそうだ。

「もうはなじまぜん!」

「ばだじもでず」

「放してくれないと死んじゃうって」

「じゃあ、俺の腕でじんでくだざい」

それを泣きながら、冗談なのか本気なのか分からないトーンで言うと、スイの涙が引き、「え?」と引いた目でウーさんを見る。

「いや、冗談だぞ」

と、それに気付いたウーさんがスイに説明する。

それを見ていた僕は思った。


それにしても、二人とも変わり身が早すぎないか?


と思っているのは内緒だ。


「そういえばスイは大丈夫なのか?」

「?....大丈夫ですよ!」

スイが、元気よく豪語する。

この明るく元気な声で、僕が生きていたを実感させ、心が震える。

「スライム族は基本的に、再生速度が他の魔族より速いしコスト無しに再生するので、死を彷徨うなんてこと無いんですよね、生きてる場合はすぐに回復するんですよ、だから即回復か即死かの二択しか無いんですよ~」

と威張ったような表情をしながら胸を叩く。

今にも「エッヘン!」という擬音後が出そうな顔つきだ。

だが僕は思う

(威張るようなものじゃないと思うぞ)と

心の中で笑いながら思う。


「まぁ、無事で良かったよ」

「ライト様もご無事で何よりです!」

お互い、生きてることを喜び会話が弾む


そんな会話をしていると....


ガチャ

また扉が開く。


腕から部屋に入ってきた人物は、ウーさんと同じサイズの腕の大きさをしており、ウーさん同様、その体が巨体だということを示している。


「おぉ~生きてたか」

腕の次は体が見え、その次に角が生えている頭が見え、その人物の全体像が分かる。

「餓鬼さん!」


「久々だな!ライト!」


この人は 餓鬼さん 鬼だ。

怪族(あやかしぞく)最後の生き残りで、ウーさんと同時期に先代魔王に拾われたらしい。

ちなみに、ウーさんも種族的に最後の生き残りだと言っていた。

拾われた後は、先代魔王と僕の父から力を付けてもらい、その強さと、信頼、実績から先代魔王の近衛兵を任せられるようになった。

しかし、ウーさん曰く、祖父が人間に対し友好的だったのもあり、近衛兵の仕事よりも、基本的には僕の世話をしていたと、ウーさんは言っていた。


僕に師匠は二人おり、一人はウーさん、もう一人は餓鬼さんだ。


餓鬼さんは、戦闘をする上での考え方や、剣術、洞察力といった基礎的な事を教えてくれた。

ウーさんは、餓鬼さんから教わったことの応用をしてくれ、どちらも僕にとって大切な存在であり、越えるべき壁である。


「餓鬼さんはどうしてここに?」

――――――――――――――――――――


餓鬼さんは先代魔王である、僕の祖父が死んだ後、旅に出た。

理由は、


人間社会の情報

さらなる力の向上

狭間の位置を探ること

以上の三つが主な理由とのこと


旅に出る際、餓鬼さんは僕に涙ながらに言っていた

「俺が未熟なばかりに、先代魔王様とお前の祖父を死なせちまった、俺は自身の力を過信しすぎたんだ」

尊敬していた人が、初めて目の前で泣いていた。

幼い僕にとって、それはとてつもなく印象に残っている。

そして僕に約束したのだ


「奴らを止めるため、強くなって帰ってきます」



そう約束し、餓鬼さんは旅に出た。

――――――――


「餓鬼さんはどうしてここに?」

僕は疑問を訪ねる。

「お前らに顔を会わせようと思ってな、そしたら....」

「そしたら?」

「ここからは真剣な話だ、ライト」

空気が一変する。




(新キャラですね、餓鬼さんはそこそこ好きです、さて次回は明日の3月1日に更新します。ご意見、ご感想の程よろしくお願いいたします)

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