第4話 忍
「それじゃあ、行ってきます!」
スイがリュックを持ちながら、ウーさんとセリナさんに挨拶をする。
「気をつけて行ってこいよ~!」
「怪我はするなよ」
それを聞いたスイは、一足先に家を出る。
僕もリュックを持ち上げ、同様に挨拶をする。
「じゃあ、セリナさんとウーさん、行ってきます」
そう伝えるとセリナさんが、道具を渡してくる。
「スイには先程渡したのだが、ライトに渡し忘れててな」
「これは....転移石ですか?」
転移石は、転移魔法を補助する為の道工だ。
これがないと転移魔法が使えず、とても貴重で、人間界では高値で取り引きされる。
「こんな高価なものどこで?」
「転移石の創造をテーマに研究してたんだが、ようやく上手くいってな」
「凄いじゃないですか!」
セリナさんを褒めると、ばつが悪そうな顔をする
「いやぁ....実はな、量産は出来ないんだ....しかも品質も悪くてな....特定の場所にしか帰れない」
しかし、転移石を作れた時点で、とてつもなく凄いことだ、仮にそれが粗悪品だとしても。
「いえ、欠点を挙げればそうかもしれませんが、そもそも作れる時点で凄い発明ですよ!」
僕は思ったことを伝える。
「しかしだな....」
セリナさんが何か言おうとするタイミングで、ウーさんが話に割り込む
「スイにも俺にも、褒められて、ライト様にですら褒められてるのに、ずっとこんな調子なんです、プライドがそうさせるんですかね....」
やれやれ、といった風なジェスチャーをするウーさん。
「ライト様ー!」
僕を呼ぶ、スイの声が聞こえる
「行かなくちゃ、セリナさん!先程も言いましたが、貴方はこんなものを作れる時点で凄いんです!自身を持ってください!それでは!」
そう駆け足で話し、僕も家を出ようとする。
しかし、後ろから手を握られ、振り向くとセリナさんが「行ってらっしゃい」と、嬉しそうな表情で、確かにそう言った。
「行ってらっしゃい」
「気をつけて下さいね~ライト様~」
セリナさんとウーさんに手を振りながら、スイと一緒に目的地に向かう旅へと出る。
――――
「今日は結構、深いところまで行きますね」
「あぁ、この森を抜けた先が予測地点だ」
グギュ~と、隣から可愛らしい腹の虫が鳴る。
スイの方を見ると、照れたようにスイの全身の色が、赤く染まる。
スライム族が(恥ずかしい)、と感じたときに出る症状だ。
「もうちょっと進んだ先で休憩にしよう」
そう、スイに伝えると、まるで子供のように目を輝かせ、全身の色が元通りの青色に戻った。
小さくはあったが倒木があり、そこでお昼にしようと提案する。
「今日は、今朝ウーさんが捕ってきた猪肉の赤ワイン煮と、畑で取れたジャガイモの煮っころがし、ご飯と....イチゴです!」
嬉しそうに、話ながらフタを開けるスイに目を向ける。
「セリナさんが作ったのか?」
「はい!だからこそ、味は心配いりませんよ!」
気にしてはいたらしい。
そのまま、スイは話続ける
「正直....料理が下手なのは知っているんですが....やっぱり自分以外の人に言われると、ちょっとムッとしてしまって....駄目ですね、私」
落ち込むスイを見て励まそうとする。
「いやぁ、そんなことはないと思うぞ、スイが努力しているのは皆知っているし、反省できるのは偉いことだ」
そう言うとスイの体が、また赤く染まる。
「....嬉しいです!」
元気が出たのを確認すると、僕も弁当の蓋を開け食べ始める。
「あぁ、でも....私的にはライト様に指摘されるのなら嬉しいんですよね....将来のためっていうか....むしろそっちの方が....」
「?」
小声で喋るスイに耳を近付けようとする。
スッ
空気が切れるような、何かが横を物凄いスピードで飛んできたような音がする。
音のした方を見ると、倒木にクナイが刺さっていた。
スイと異変に気付き、警戒する。
僕は辺りを見回す。
かすかに草むらが動く。
動いた草むらにクナイを投げ返す、すると隣の草むらから手が飛び出し、クナイをキャッチする。
「おいおい、手加減してやってくれよ魔人さん....」
キャッチされた手から順に、徐々に草むらから体を出して行き、その全体が見れる。
「忍....?」
忍びのような格好をした男が現れる。
口元は、布で覆われていて見えないが、ニヤニヤとした目元は見える。
「こいつは、まだまだ初心者なんだ、勘弁してやらねぇと死んじまうところだったぜ?」
そう言いながら、顎をクイッと上にあげる。
まるで何かに指示するように。
すると続々と草むらから忍の格好をした奴らが現れる。
「こいつが、指名手配中の魔人か?」
違う忍に、リーダーのような奴が聞いている。
(奴が、このグループのリーダーか?)
部下のような忍が答える。
「どうやら、そのようで」
「そうか....」
それを聞いた忍グループのリーダーは、何かを決心した様子で、僕らの方を見る。
「お前ら、悪いが....」
「死んでくれや」
(次回は21日に投稿の予定です。次回からは戦闘に入ります。正直書いている僕も初めて、ちゃんとした戦闘シーンを書くので緊張しています。面白くできるといいなぁ。ご意見、ご感想の程よろしくお願いいたします。)
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