第3話 スイの料理とスキルについて

「ところでなんだが、次回のルート探索にはスイを同伴させたいと思っている」

スイの美味しい(?)料理を食べながら、今後について話そうとする。

「へぇ、その理由は何ですか?」

「次回のルートは村を通る」

「あ~、成る程」

ウーさんが納得していたが、スイは理解できていない様子だった。

それを察したのか、セリナさんが補足する。

「村を通る場合、人間との戦闘が起こる可能性があるだろ?スイの戦闘能力であれば、ライト様が決めた“約束”も守れる」

これを聞いたスイは、納得した表情をした。

「ありがとうございます!セリナさん!」

やはり、スイの笑顔は皆を明るくする。


約束というのは、「無駄な殺生はしない」と、いうものだ。

その理由は、先代魔王である僕の祖父に由来している。

先代魔王である僕の祖父は、人間達との交友を深めたい、そう考える魔王だった。


その際、よく言っていたのは

「人間達は魔物を恐れるだろう、しかし、”我々魔物が人間に危害を加えない“そう分かれば、きっと魔物と人間は共存できる」

そう考えていた、その為、自身の支配下に居た魔物達に人間への殺生を禁止した。

実際に、人間達との関係は良好に進んでいたように思えた....だが


そんな矢先に現魔王に倒されてしまった。


現魔王の方針が、どういうものかは分からないが、魔人や魔物が人を襲い、殺生をしている辺り、恐らく“そういうこと”なのだろう。


その後は、人間達との関係は悪化しているように思える。

以前であれば、危害を加えない魔物だと分かれば、襲ってこない冒険者も多かった。

しかし、現魔王が即位して十数年経った年位から、魔物であれば誰かれ構わず襲ってくる冒険者が増えた。


僕は、祖父の意思を継ぐために、魔王になり祖父の叶えたかった夢を叶えようと心に誓ったのだ。

その為の第一歩として、「無駄な殺生はしない」と決めた。


「ウーさんの“スキル”は殺傷能力が高いからな、誤殺する可能性が高い、セリナさんの“スキル”は....」

「秘密だ」

セリナさんは、自身の“スキル”を隠している。

仲間....家族同然である僕達にですらだ。

だからこそ今日は聞こうと思った。

「前々から思ってたんですけど、何で秘密なんですか?」

「秘密兵器だ」

「そんな、子供みたいな事言わないでくださいよ、ウーさんは知ってるんじゃないんですか?」

「ん~?俺はセリナより後に~魔王城に来てますからね~、幹部になったのも~ライト様が生まれる五百年程前ですよ~」

「そうなのか....ん?」

ウーさんの喋り方に違和感を覚える。

「ウー、貴様....酔ってないか?」

セリナさんが、ウーさんに投げ掛ける。

「ん~?酔ってないですよ~?」

スイの方を見る。

一瞬で理解した。

「あ~....もしかしてスイ....やったか?」

スイの表情は、人間達が思い浮かべる魔物の表情、そのままだった。

「あぁ、幸せです、好物のパンを食いながら計画通りに行ったことを喜ぶ....あぁ、幸せです~」

「もしかして....この前の料理の事か?」

「そうです、私の料理を馬鹿にした罰です、苦しむと良いですね」

スイのマジトーン怖い、と改めて思う。

流石のセリナさんも、恐怖の表情を浮かべている。

セリナさんが、此方を見てアイコンタクトをしてくる。

「私達は、決してスイに逆らわない。いいな」

そういった意思が感じとれた。

――――――



「そういえばライト様は、”スキル“の発芽がちょっと遅いですね」

酔いから覚めたウーさんが洗濯物を干しながら聞いてくる。

「そうだな、遅いのか....はたまた、そもそもしないのか」

「いやぁ、ライト様の魔力は、この中でも5本の指に入るんですから、そんなハズはないと思いますけどね」

スイが、指を見せながら言ってくる。

「いや、四人しかいないぞ」

ウーさんがツッコむ。

「ありゃりゃ、これは....お恥ずかしい・・・」

「照れてないで、早く洗濯物を干せ」

セリナさんが微笑みながら言う

こういう日常が僕は、とても好きだ。

「しかし....」

セリナさんが唐突に悩んだ声で話す。

「こうも遅いと、確かに発芽しない可能性を視野にいれた方が良いかもな」

「....まぁ、どちらにせよ、ライト様は強いですし、今やることは変わりません」

「そうだな」

ウーさんの一言で、より気持ちを引き締める。


ここで、遅くはなったがスキルに関する話をしようと思う。

スキルは、一定の魔力を越えている者のみに現れる特殊能力だ。

魔人は基本的に有している場合が多く、人間であれば、有しているのはごく僅かだ。

例外もあり、魔力が一定を越えてなくてもスキルを所有している者もいる。


スキルは二種類に分かれている。

1つ目は、使用時に魔力消費があるスキル

2つ目は、使用時に魔力消費が無いスキル


スキル単体がとても強い場合、当然デメリットが存在する。

そのデメリットが魔力を消費するか、しないかだ。

いずれにしても、魔力を有している時点で強力である。

ウーさんと、セリナさん、スイのスキルは発芽しており、それぞれ


ウーさん

狂牛化

変身し、狂った牛のように大暴れする。全ての力が大幅にアップする。短期間で何度も使用すると、コントロールが出来なくなり、敵味方問わず攻撃してしまう危険性があるため、余りスキルは使用していない。

使用中は魔力を大幅に消費する。


セリナさん

??

本人曰く、秘密兵器


スイ

鉱石化

自身のスライムの体の一部、もしくは全身を、鉱石化させる。

変化する物体は、自身の思い浮かべたもので、

スライム族特有の“スキル”らしく、スライム族の魔人は基本的に、このスキルらしい。

魔力は基本消費しないが、一定の固さを越えた物質になると魔力を消費する。

例として、ダイヤに鉱石化した場合、魔力を消費する。


恐らく、僕はスキルが発芽しないのだろう。

うすうす、自分でも感じていた。

僕自身、昔こそ焦ってはいたが、今では僕の出来る事をしようと、気持ちに区切りを着けているを

今でも、少し欲しいと思う時があるが....

それは内緒だ。



(次回は明日の2月20日に出します。いやぁ、説明フェーズ長いですね、もうちょっと短く出来るように努力します。ご意見、ご感想の程よろしくお願いいたします)

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