第2話 地図について
最後に冒険者が来てから一週間ほど経過した、ある日の朝。
僕とウーさんは、早朝からの農作業をしていた。
それをボーッと見つめてたセリナさんが口を開く。
「地図の件だが...」
「どうしました?」
「いや、どこまで完成したのかと思ってな」
地図とは、現魔王の住む魔界に通じる狭間までのルートを示したものだ。
そのため、地図の話をする前に狭間について話さなくてはならない。
魔界は人間世界にある、狭間から行くことができる。
先代魔王....僕の祖父が倒された後、僕らは狭間から逃げるようにして人間世界に来た。
その後、狭間の位置は大きく変わっており、おそらく現魔王が変えたのだろう。
狭間には多少の魔力が漏れ出しており、魔王の血筋であれば、魔界に通じる狭間をうっすら感じ取れるのだ。
そのため僕らは、週に3日程、僕を含めた二人組で狭間を探しに行っている。
さて、地図の話に戻ろう。
地図は、その狭間までのルートを、前日までに幾つか予測し、どのルートが正しいかを確認。
確認したら人間界の地図に書いていく。
その、書かれた地図が....
僕らの言っている「地図」なのだ。
「ようやく、最初の方が完成しました、ただ、この最初が本当にあっているのかも怪しく....今度、また誰かと最終確認してきます」
もう先代魔王が倒され、数十年程経っているが、余りに予測する道が多いため数十年経った今も、最初の方しか出来ていない。
「そうか....先はまだまだ長いな....」
それを聞いたウーさんが、農作業の手を止め、育ってたジャガイモを手に取り、話し始める。
「まぁ、しょうがないですよ、地図もジャガイモも同じです」
「....?」
僕とラミアさんはポカンとした表情を互いにする。
「どういう意味だ?」
ラミアさんが問う。
「いやぁ、地図もジャガイモと同じように、ゆっくり時間を掛けてやっていけば良いってことですよ」
ウーさん....それは励ましになっているんだろうか?
少し疑問であったが、ウーさんなりの思いやりだと思い、嬉しく思う。
「励ましのつもりかも知れないが、伝わりにくいぞ」
あぁ、ラミアさん、それは言っちゃ駄目なやつ!
「そうか?まぁ、いつもの事だな!」
豪快に笑いながら言う、ウーさん。
僕は正直、こういうウーさんの、常に明るく、前向きなところを尊敬している。
「皆さーん!ご飯出来ましたよ~!」
スイの声で皆、家に戻り、食事場所に向かう。
「今日の朝御飯は大丈夫ですかね?」
「私は別に美味しいと思うがな」
「え!?おい、裏切るのか!セリナ!」
「僕も別に不味いとは...」
「ライト様まで!?」
そんな他愛もない話をしながら、今日も束の間の日常が過ぎていく。
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