魔王討伐

甘党辛好

第1話 ~人類の敵を討て~

「いつか、お前が生きていたら....」

僕らの周りは火で囲まれている

聞こえないよ父さん、なにも見えない

「愛してるぜ」

待ってよ、父さん、置いてかないでよ!

まだ一緒にいたいよ!


ーーーーーーーー


 「ライト様!起きてください、ご飯です!」

可愛らしい女の子の声に僕の名前を呼ばれ目が覚める。

「今日は目玉焼きを作りました、自信作です!」

この元気な声の主はスライムのスイ、僕の幼なじみで、天然な所もあるがとても活発な子だ。

「おはよう、スイ」

「はい!おはようございます!」

「ウーさんとセリナさんは?」

「もう二人とも起きてますよ、ライト様を待ってます」

「あ~、てことは今朝の農作業は寝坊したことになるのか?」

「そうなりますね」

「ヤバいな、明日は早く起きてやらなくちゃ」

何気ない日常会話をし、服を着替える

「また、夜遅くまで起きてたんですか?」

「あぁ、まぁな」

「ダメですよ~、夜更かしは健康の敵です」

スイに注意を促されながら、食事場所へ向かう。

美味しそうな目玉焼きの匂いがドアの前からする。

ドアを開けウーさんとセリナさんの顔を見て席に座る。

「すまない、遅くなった」

「遅いですよ~」

「ごめんごめん、明日の農作業は出れそうだよ」

「お!じゃあまた、勝負しますか!」

この人は魔牛のウーさん、本名が長く覚えずらいということで、よく自分の事を「ウーさん」と自己紹介しているらしい。

僕の師匠でもあり、毎朝一緒に農作業をしている。

農作業は基礎的な筋力トレーニングにとなっているため、毎日している。

「地図は完成したのか?」

「いえ、地図はまだ完成してないです」

「そうか、余り根を詰めすぎるなよ」

この人はラミアのセリナさん、僕らの怪我の治療や、研究などをしている。

セリナさんのお陰で、ある程度の無茶をしても大丈夫であるが勿論、怪我をする度に怒られているのは言うまでもない。

とても優しい人で、料理が上手く、基本的に何でもこなす完璧タイプだ。

「今日は目玉焼きが上手くできたんですよ!食べてみてください!」

スイの号令で皆、箸を持ち頂こうとする

「いただきます」


・・・・

まぁ、美味しさは想定通りだった。

「スイ、味見はしたのか?」

ウーさんが聞く

「はい!バッチグー!でした」

満面の笑みをウーさんに向けながら答えるスイ

「・・・そうか、俺の舌には合わないな」

ウーさんは、そんなスイの表情を見ても正直に意見を言う。

「え?そうですか?・・・ふぅん」

スイの表情が変わる。

「じゃあ、ウーさんは私の料理が食べれないって言うんですか?」

ウーさんはそれを聞き焦る。

「いやぁ、そうは言ってないんだぜ?ただ、俺は薄味の方が好きだな、と・・・」

スイは料理に関してだけプライドが高く、否定されると怒傾向にある。

「ライト様だって、私の料理を美味しいと言ってくれるはずです」

飛び火した!?

いきなりで、僕は一瞬固まった。

「いやぁ、まぁ、僕は好きだけどなスイの料理...」

これを聞き、ウーさんが驚いた声で言う。

「ライト様!?」

会話に参加せず黙々と食っていたセリナさんも、この発言には驚いたように顔を上げる。

ただ、セリナさんとウーさんと僕の味覚は似ており、好みの傾向等も同じくらい、その情報があるセリナさんは、“僕の言ったことがお世辞”だと言うことに気付き、また直ぐに、ご飯を食べ始める。

「勘弁してくださいよ~!ライト様~、貴方はこっち側でしょう!?」

ウーさんに泣き付かれる。

その時だった。

ガチャ...

玄関のドアが開く。


「ここが、新しくできたって噂のダンジョンか?」

「この辺の地域は、指名手配中の魔人も現れるから注意しなきゃ駄目よ」

「いやぁ、この辺の魔人だろ?言う程強くないだろうし、この俺様が叩き切ってやる!」

話の内容的に冒険者らしい


「今回は長かったな、前回からどれくらい期間が空いてる?」

セリナさんが口を開く。

「確かに...前回来たのは、もう3ヵ月前ですもんね」

セリナさんの疑問に、僕が答える。

「今月の対応当番はライト様ですね」

スイが教えてくれる。

「あぁ、分かった行ってくる」

2階の食事場所から1階のリビングへと向かう。


 「ッ!魔物かッ!」

冒険者らしい者達がリビングにあった宝箱を漁っている。

ちなみに、この家には認識催眠という魔法が掛けられており冒険者達はリビングではなく、ダンジョンの中だと感じている。

「人のリビングを勝手に漁るな!」

これを聞き魔法使いらしき女がこちらに認識魔法を掛けてくる

認識魔法は、掛けた物体の状態や情報を視認できるもの、上級魔法使いが習得できる魔法で、敵の魔法使いの強さが伺える。

「この魔物、とても強いです!今、戦力を見ましたが相当の手練れです!」

「てことは....こいつが指名手配中の魔神か!?」

これを聞き、戦士の男がこちらに切りかかってくる。

しかし、僕は戦士の剣を避ける。

(戦士の方は、素人だな...)

そう思っていた矢先....

グサッ!

戦士の剣が、僕の腕に刺さる。

「!?」

刺さった剣は、そのまま僕の腕を切断する。

結果的に僕の腕は地面に落ちた。

その上、剣には毒が塗られていたのか視界がグラつく。

自身のHPが、減っていくのが分かる。

「今だ!リーダー!」

その声を聞き、リーダーの男が物凄いスピードで一瞬にして間合いに入る。

そして...

僕の胸を刺した。

意識が朦朧とする。

「・・・火の精霊よ!我に力を!」

「行け!カイラ!」

「”火の星”(MARS)!!」


ようやくか

ようやく、魔法使いがまともな魔法を撃ってきてくれた。

ありがとうダメージを食らったかいがあるよ。


一呼吸起き、タイミングを合わせる。

魔法使いの放った魔法が僕に迫ってくる。

・・・待っていたタイミングが来た

(...今だ!)

「”ライフカウンター“!」

ライフカウンターは自身の受けたダメージに応じて、倍のダメージを相手に与える技。

発動形態は一刀両断。

発動条件は

・相手の魔法攻撃のタイミングに合わせること

・自身の現在のライフを半分に減らすこと

が条件で、基本剣術の一つだ。

だが、タイミングの合わせるというやりづらさやライフを減らすというのがデメリットで、余り使われず、マイナーな剣術である。


僕はライフカウンターにて一刀両断を行い、相手に大ダメージを与えた。

「気絶したか...」

人間...いや、生物の根本的な作りとして、一定の痛みを越える、ダメージの許容範囲を越える等の、強烈な痛みやダメージを一気に受けると、HPにまだ余力があっても気絶してしまう。

そういう作りになっており、僕はそれを狙った。

セリナに貰った液体の薬を、気絶した三人に飲ませる

「寸前の記憶を無かったことにする薬」

それが、今飲ませた薬だ。

「後は転移魔法で...」

転移魔法専用の、魔方陣まで気絶した三人を運ぶ。


運び終え、転移魔法を放つ


僕は一仕事終え、食事場所に戻る。

帰ってきた瞬間、ウーさんが笑いながら言う「今回はえらく時間が掛かってましたね!」

「あいつら強かったよ、冒険者ランクA級はあるね」

「腕まで切られて...目茶苦茶笑えます!」

ウーさんは信頼ゆえの冗談を僕に言う。

僕にとってこれくらいのダメージが大丈夫なのを知っているのだ。

「まぁ、腕は自己再生があるにしても...胸は...魔結晶は傷ついては無いのだな?」

セリナさんが心配した声で聞いてくる

「えぇ、魔結晶は大丈夫です。別の場所に隠しています」

それを聞き安心した表情をしたセリナさんがまた話す

「ふっ、よかった...胸の傷を治療しよう、後で研究室に来い」

「はい!」

そう言われ、やはりセリナさんは頼りになると感じた。


台所からスイが顔を出す

「うわ!ライト様...大丈夫ですか?」

スイも先程のセリナさんのような心配した顔をする

「まぁ、大丈夫だ、もう腕も再生し始めてるからな」

それを告げるとスイにまた笑顔が戻る

「それはよかったです!」


「さて、えらく時間が掛かってしまって、ご飯も冷めてしまったな...まぁ、美味しく食べるさ」


先代魔王が現魔王に倒され数十年

僕と仲間達は、先代魔王の仇を撃とうと現魔王の住む、魔界を見つけ現魔王を倒そうとしている。

ウーさんとセリナさんは先代魔王の幹部で、スイは、当時のスライム族の幹部だった方の娘だ。


「改めて...いただきます!」


そして、僕は....



先代魔王の孫だ




(次回は2月18日に投稿予定です、よければアドバイスや感想を下さると幸いです)

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