第4章 神器回収編
第32話 統合進化スキル
▽第三十二話 統合進化スキル
「決めましたよ、アトリ」
「決まった。です、か神様?」
私たちはイベント報酬について話し合いを終えました。
まあ、話し合いと言いましても、アトリは「神様の言うとおりにする。ですっ!」や「神様がより地上で力を発揮できるようになってほしい。ですっ」や「神様も出てくるようになってほしいです」とか、私を強くしたいようでした。
ですが、私は必須スキルたる【顕現】さえも取らぬ天邪鬼。
アトリがそこまで言ってくれるのならば、あえて――アトリに全ベットです。
「決めました。アトリに【種族昇進チケット】と【魔法進化チケット】を使ってもらいます」
「うー、……わかり、ました、です……かみさま」
アトリは複雑そうな顔をしています。
選ばれて強くなれることを喜ぶとともに、私に貢ぐことができなかった申し訳なさ、そして私の意見に「否」を思ってしまっている自分に対する失望……が入り交じった表情です。
まあ、ほとんど無表情なのですが。私以外では判別できないかもしれません。
アトリとの付き合いも長くなってきました。
少しずつアトリ検定一級を目指していく所存です。
「そう苦しそうな顔をしないでください。貴女が強くなったほうが今後の報酬が良くなるわけですからね。神がそれだけ期待を寄せている、ということです」
「っ」
アトリの表情がぱあっと輝きます。
興奮と歓喜を抑えきれないのか、その場でぴょんぴょんと跳ねます。
いつも無表情なアトリですけれども、こういう時は解りやすくてよろしいですね。
私はイベント報酬から【種族昇進チケット】と【魔法進化チケット】を選択し、それをアトリに使用させました。
これで規定レベルに達すれば、アトリが強化されるでしょうね。
「早く進化したアトリを見たいところです……虚無期間はレベル上げを重点的にいきましょうか。装備集めはゆっくり目で」
「きょむきかん?」
「とくにイベントがない期間帯のことを言いますね。べつに我々はトップを狙っているわけではないので緩くいきましょう」
「ゆるくいく。ですっ」
我々はエルフランドを後にします。
目的地はカタコンベです。第二フィールドのメインはエルフランドがある森ですが、別の見所も存在しています。
ひとつが湿地帯。
ひとつがカタコンベなのです。
カタコンベというのは要するに墓場です。アンデッド系の敵が多いのは嫌ですけど、アトリは聖魔法の使い手なので相性は抜群でした。
レベル上げには良いでしょう。
向かう方法はシヲのモードお馬さんです。ちょうどアトリに合わせたサイズなので乗り心地は上々のようでした。向かいましょう。
……
「おや、アトリ。敵ですよ」
「!」
気ままなお馬の旅が終わりを告げます。
アトリは大鎌を肩に担ぎ、シヲから射出されるように出撃しました。
敵は巨大な蜘蛛です。背中に壺を背負った壺蜘蛛という魔物ですね。あの壺には毒液が満たされているとのこと。
「【クリエイト・ダーク】……蓋をさせてもらいましょう」
私は【クリエイト・ダーク】で壺に蓋をしてしまいます。
身体を傾かせて壺の中身をばらまこうとした壺蜘蛛ですが、その行動にはなんの意味も生まれなくなりました。
そこをアトリが首を刈ります。
『しゃー!』
数匹いる壺蜘蛛は仲間の死を厭うことなく、アトリに群がって噛み付きにいきます。ですが、シヲがタコ型となって触腕で蜘蛛を牽制しました。
蜘蛛が触腕に噛み付いています。
アトリは【シャイニング・スラッシュ】に【殺生刃】を乗せて放ちます。彼女が光の鎌を振るう度、蜘蛛の肉体が裂けていきます。滅多切りにされた蜘蛛が大地に倒れます。
【ネロがレベルアップしました】
【ネロの闇魔法がレベルアップしました】
【ネロのクリエイト・ダークがレベルアップしました】
【ネロのダーク・オーラがレベルアップしました】
【ネロのHP自動回復がレベルアップしました】
【ネロのMP自動回復がレベルアップしました】
【ネロの鑑定がレベルアップしました】
【アトリがレベルアップしました】
【アトリの鎌術がレベルアップしました】
【アトリの農業スキルがレベルアップしました】
【アトリの光魔法がレベルアップしました】
【アトリの孤独耐性がレベルアップしました】
【アトリの神楽がレベルアップしました】
【アトリの口寄せがレベルアップしました】
【シヲがレベルアップしました】
【シヲの擬態がレベルアップしました】
【シヲの奇襲がレベルアップしました】
【シヲの拘束がレベルアップしました】
!?
何故だか一気にレベルが上昇しました。
あの壺蜘蛛がそこまでの経験値を持っていたようには思えません。それに戦闘中に使用していないスキルまで上昇していますが……バグでしょうか?
心配になって掲示板で検索してみたところ、同様の人がたくさんいらっしゃいます。
どうやらイベント中に得た経験値により、一気にレベルが上昇したらしいですね。また、特別な措置として今回の件で50になったり、何かの選択がある人は必要レベルで一度だけ止まるらしいです。
つまり、50レベルを越えた時、上級職にできなかった、というのが防げるようです。
掲示板では「常にやれ」との大絶賛である。
一度、ステータスを確認しておきましょうか。
名前【ネロ】 性別【男性】
レベル【45】 種族【ダーク・スピリット】
魔法【闇魔法55】
生産【錬金術15】
スキル【HP自動回復53】【MP自動回復63】【鑑定15】
【クリエイト・ダーク51】【ダーク・オーラ34】
【敵耐性減少】【アイテムボックス10】
【逆境強化】【スキル未設定】
ステータス 攻撃【225】 魔法攻撃【225】
耐久【225】 敏捷【225】
幸運【225】
称号【偽る神の声】
レベルアップによってスキル枠がひとつ増加しました。
また、いくつかアーツも取得可能になったようです。何を選ぶのか悩んでしまいますね。この悩む時間が楽しいのですよ。
そろそろ【クリエイト・ダーク】の形態のネタが尽きつつあります。今までは絶対にほしい形状ばかり得てきましたが……床でしょうかね。よく使うので消費を軽減しておきたいです。
あともうひとつお知らせが来ています。
「何々? 統合進化可能スキルがあります……これが噂に聞く」
今回の統合進化の対象は【HP自動回復】と【MP自動回復】の二つです。このスキルを合体させることにより【再生】スキルにすることができるみたいです。
いただきましょう【再生】スキル。
統合進化は場合によっては弱体化するようですが……【再生】スキルは有用でしょう。
スキル【再生】は【HP自動回復】と【MP自動回復】を強化して合体させたスキルです。今まで通り両方が自動回復します。
しかも、MPを消費することにより、HPを急速再生することが可能のようです。逆も可能というのが面白いですね。部位欠損さえもMPがあれば即回復です。
単純に再生能力が強化されました。
次にアトリのステータスを確認しましょう。
名前【アトリ】 性別【女性】
レベル【46】 種族【ヒト】 ジョブ【巫女】
魔法【光魔法55】【閃光魔法1】
生産【農業50】
スキル【孤独耐性40】【鎌術53】【口寄せ23】
【神楽35】【詠唱延長5】
ステータス 攻撃【146】 魔法攻撃【338】
耐久【257】 敏捷【341】
幸運【278】
称号【大罪・親殺し】
固有スキル【殺生刃】
アトリも強くなっているようです。
注目ポイントは早くも上位魔法を取得しているところでしょうか。光魔法の上位魔法は閃光魔法というらしいです。
ちなみに光属性は分岐進化するらしく、回復に向いた進化が【聖天魔法】となるようです。アトリは攻撃向けの【閃光魔法】になりました。
何故でしょうね?
プレイスタイルによって自動分岐するようです。ですが、アトリは巫女ですけど……一部の界隈で死神の名を欲しいままとしているからでしょうか?
あるいは不人気魔法アーツたる【フラッシュ】を覚えた所為かもしれません。便利で強いですが、ちょっと地味で有名な魔法です。
攻撃でも防御でも回復でも、バフでもデバフでもありません。
妨害? になるのでしょうけど、やはり地味目ですよね。これがFPSや狩りゲーだと判定が翻ると思いますが。
ともかく【閃光魔法】を取得しました。
そして、じつはもうひとつアトリにも統合進化の波がやって来ています。
スキル【光魔法】と【鎌術】の統合スキル――【
しかし、これを取得してしまえば【鎌術】と【光魔法】のアーツを失ってしまいます。
鎌のアーツも光魔法のアーツもヘビーユーズしている現状。内容の解らない【月光鎌術】に賭けるのはリスクでしかありません。
珍しい・選ばれづらいスキルばかりを取得している私ですが、アトリのスキル構成でそこまで致命的な選択は取ることができませんね。
「どうしましょうかねえ」
先送りも視野に入ってきた中、突如フレンド欄からメッセージが来ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます