VRMMOで神を名乗る闇精霊-ヤンデレ幼女を狂信者にして最強にする方法-

轟イネ

第1章 第一フィールドと狂信者幼女のアトリ編

第1話 キャラクターメイク

▽第一話 キャラクターメイク

「かみさま、かみさまかみさまかみさま神様神様かみさま神様」

「……少しやりすぎましたかね」


 見事な白髪を湛えた、ルビーの瞳を持つ可愛らしい――幼女。彼女は背に大鎌を負い、その美しい瞳を狂信にグルグルと渦巻いております。

 夢中で私――本当は闇の精霊でしかない私を「神」と呼び慕ってくれています。

 愛おしそうに私にしがみつき、頬ずりを繰り返す幼女……アトリ。


 この世界初のフルダイブ型MMOにて最強のキャラとなった――【死神幼女】こそが彼女の正体でした。トップランカーにまでなるつもりはありませんでした。

 まったく。


「どうしてこうなったのでしょうかね……」

「神様神様かみさまかみさま。ずっと。ずっと一緒。ずっとずっとずっと一緒……です」


       ▽

 脱サラしてゲームをします。

 私がこれからプレイするのは、世界初のフルダイブVRMMO『Spirit Guardian Online(スピリット ガーディアン オンライン)』と言います。

 通称は《スゴ》です。頭文字がSGOですからね。


 この《スゴ》はなんとプレイで得たゲーム内通貨やアイテムが、現実で換金できるのです。

 私はゲームが好きでした。

 私はお金が好きでした。

 つまり、まだ未プレイながらも《スゴ》は大好きです。


 こうして、私の初のVRゲームが開始されました。


       ▽

『プレイヤーネームを設定してください』

「ネロで」

『使用スピリットの属性を設定してください』


 キャラクターメイク中です。

 AIが付きっきりで説明してくれるので、初心者の私でも安心して設定できています。しかし、これまで順調だった中、とうとう壁にぶつかりました。


 スピリットの属性です。

 この《スゴ》は精霊となって、ゲーム内の《住民》と契約して補助、育成していくゲームだそうです。精霊が司れるのは、一つの属性のみでした。


 ここでゲームが決まる、と言っても過言ではありません。


 スピリットの属性は「火」「水」「風」「土」「光」「闇」の六属性。

 何を選ぶのかで性格が出そうですよね。

 火などがオーソドックスに使いやすいでしょうが、とても他者と被りそうです。あまりゲームが得意な人間ではないので、活躍しやすそうな属性が良いですね。


 光か闇で行きましょう。

 支援系妨害系なら役割があるはずです。

 ……闇ですね。光という性格ではありませんし、私。


 無言を貫いているAIに声を掛けます。


「闇精霊になります」

『それではスキルの選択です。初期選択可能スキルは5つとなっており、以降、レベルが10上昇するごとに1つずつスキルを増やすことが可能です』


 私の前に膨大なリストが浮かび上がります。

 それに記載されているのは、すべてが選択可能なスキル群でした。この途方もないスキルの中から、私は自分のプレイにあったモノを選ばねばなりません。


 改めて《スゴ》について考えます。

 このゲームの私たちは「お助け精霊」をロールプレイするのです。あくまでも補助であり、メインで戦うのは住民の《NPC》となっております。

 契約対象が死ねば、彼らはロスト。

 今までに行った育成のすべてが無駄になるらしいですよ。とはいえ、育てた精霊自体のステータスは残るそうですけど。


「なるべく契約者をロストさせたくないですね。時間の無駄ですし……【HP自動回復】【MP自動回復】【鑑定】を取りましょうか」


 これで三枠ですね。

 スキル【HP自動回復】や【MP自動回復】などのパッシブは、契約した住民にも適応されるのです。

 鑑定は必須。ネット小説で読みました。


 残りの二枠ですが……私は面白そうな【ダーク・オーラ】と【クリエイト・ダーク】を取得することにしました。


 スキル【ダーク・オーラ】は、契約者に闇のオーラを纏わせる……という効果があります。役に立つのかは不明です。

 なんか格好良い!


 この《スゴ》は原則として、キャラを作り直すことが不可能とのこと。

 ゲームを買い直しても、キャラはずっと初期設定を引き継ぐそうです。脳波とかを読まれている、という見解が一般的ですね。怖いですね。


 ゆえに検証班泣かせですし、遊んだ選択肢は取りたくないでしょう。

 ですが、私はどうでもよろしい。

 もうサラリーマンとして「縛られる」ことには疲れ果てました。ですから、もう絶対に「縛られたくない」のです。


 弱くたってゲーム内のお金くらい、稼いでみせらあ、ですよ。


 最後に取得したのは【クリエイト・ダーク】というスキルでした。

 このスキルは「質量のある闇を創造する」とのこと。格好良い。強いのかは解りませんけれども、面白そうではあります。


 何より、この二つのスキルは「闇魔法」ではないのです。

 闇精霊だけが使える特殊なスキル。魔法で再現不可能な「固有の技」なので、もしかしたら強力な可能性があります。


『警告。スキル【顕現】が取得されておりません。【顕現】がない場合、あちらの世界で実体化することが不可能となります』

「構いません。ゲームの中で人と接するなんて嫌ですもの。MMOで言うことではありませんけどね」

『了承しました』


 スキル【顕現】は必須、とホームページに記載されています。

 精霊はふだん「ふわふわ漂う、光る風船」みたいな姿をしています。ですが『顕現』のスキルを取得すれば、時間制限付きですが「実体化」することが可能なのです。

 実体化せねば、せっかくのフルダイブを堪能できない、ということ。


「私はお金をゲームで稼ぎたいだけです。フルダイブを堪能するのは、もっと後続のゲームでやりましょう」

『では、最後にステータス補正についてです。精霊は契約した対象がレベルアップした際、成長に補正をかけることが可能です。それを選択してください』

「HPを増強します。……あとせっかくです。闇っぽく、デメリット付きでもうひとつ強化しましょうか」


 このゲーム、精霊は無条件で契約者のステータスをひとつ成長ブーストできます。

 が、マイナス補正をかければ、もうひとつステータスブーストが可能なのですよ。

 すなわち、


「では、力をマイナス成長させて、代わりに敏捷を上げましょう」

『了承しました』


 すべての設定が終わりました。

 一瞬、視界すべてが白で包み込まれ、何も見えなくなりました。ですが、それも束の間のお話。

 次に目を開けた時、私の視界には――異世界が広がっておりました。


『ようこそプレイヤー・ネロ。貴方はこれより滅びに瀕した世界を救うことになります。住民と契約を交わし、彼らを救済に導くのです』

「おお!」


 私は空を飛んでいます。

 眼下には無数の雲、それからファンタジーらしい町並み。お城! 武装した人々! 美形のエルフに格好良い獣人が闊歩していますよ!

 すごい!

 空気を感じます。匂いを感じます! 肌を感じます!


 私のゲームプレイが始まりました。

 目指せ、ゲームだけして稼ぐ生活!



――――――

基本的には毎日20時更新となっております。

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