63:第一戦、マッチョ軍団!
それから四日が経ち、順調に試合が進んでいっていた。
俺たちはDブロックで、ようやく今日、初試合が行われる。
「緊張してきましたね……!」
選手の控え室でリンが胸の前で拳を握り、そう言った。
それに対してアーシャが気楽そうに手をフリフリしながら口を開く。
「大丈夫大丈夫。初戦で私たちが負けるなんてあり得ないから」
「そうでしょうか……っ? 油断は禁物な気がします……!」
「はあ……貴方たちはもう少し自分の立ち位置の自覚をした方が良いと思うわ」
気を抜けないというリンに、アーシャは呆れたように言った。
確かにアカネとのいざこざで、俺は自分の実力やらなんやらに対して自覚した方が良いと学んだ。
過剰な謙遜や、行き過ぎた自己否定は他人を巻き込んで不幸にする。
もう少し自分自身を客観視できるようになりたいよな。
まあ……それが簡単にできれば苦労はしないんだけどねぇ。
「ともかく、作戦はバッチリ考えましたし、相手の情報も十分に集めました。後はやることをやるだけですよ」
さすが、比較的冷静で客観的なユイだ。
それに続いてアキハも元気いっぱいに言った。
「そうだよ! 不安になるのも分かるけど、なんとかなるから!」
「……そうですね! 皆さん、ありがとうございます!」
励まされ、不安を払拭したらしいリン。
レイジ君もさっきまで不安そうに黙っていたが、顔色も良くなり、もう大丈夫そうだった。
「ハードボイルド・フロンティアの皆さん~! そろそろ時間で~す!」
控え室に設置されているスピーカーからスタッフの声が聞こえてくる。
俺たちはそれを聞いて立ち上がると、試合会場に向かった。
+++
『今日の第一戦目はランキング上位を二名も抱えた期待の新星 《ハードボイルド・フロンティア》と、アメリカの軍人のみで組まれた連携はお手の物 《レッド・スコーピオン》の試合だぁああああああぁああ!』
暑苦しい実況がそう声を上げる。
俺たちは試合会場の中心に並び、向き合っていた。
「ヘイ、ジャパニーズ。お前たちは個々では強いかもしれないが、こっちの連携を舐めてもらっちゃ困るぜ?」
一番ムキムキで身長も高いマッチョが俺たちを見下げながらそう言ってきた。
まあ相手六人ともみんなムキムキで身長も高いのだが。
その中で一番だから、おそらく話しかけてきたヤツは2メートル近くあるのではないだろうか。
この男性が多分隊長とかなんだろうな。
俺は声をかけられ、代表して前に出ると口を開いた。
「こっちだって散々練習して、散々作戦を練ったんだ。負けないさ」
「フッ。貧弱ボーイを抱えたようなチームに、俺たちは負けるつもりはない」
貧弱ボーイってレイジ君のことか。
その煽り文句を聞いて俺は絶対に勝つことを心に誓う。
我ながら沸点が低いとは思うけど、譲れないものってのもあるのだ。
相手も別に、軽い煽りのつもりなんだろうけどね。
それから話し合いはそれで終わり、主審が俺たちの間に割り込んできて、言った。
「もうそろそろ始めますが、それくらいでよろしいでしょうか?」
俺も男も互いに頷く。
それを見た主審はドローンのカメラに合図をし、実況の声が響いた。
「それではこれより、Dブロック予選、第一試合を開始するぞぉおおおおおおぉおお!」
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