62:迷宮祭、開幕!

 開幕式が始まった。

 闘技場に大量の探索者たちが集っている。

 凄い熱気だ。


「これより、迷宮祭の開幕式を開始する!」


 ハゲたムキムキのおっさんが壇上に立ち、マイク越しにそう叫んでいた。

 スピーカーが音割れするレベルの声量だった。

 ライブとかも行ったことない俺は、この高揚感とか一体感みたいなのは初めての感覚で、年甲斐もなく凄くワクワクしている。


「事前にトーナメント表は発表していたが、ここでも今一度確認しようッ!」


 おっさんの言葉と同時に巨大なディスプレイに迷宮祭のトーナメント表が発表される。

 俺たち《ハードボイルド・フロンティア》の初戦はアメリカの軍人クランである《レッド・スコーピオン》だった。

 ちなみに《黄金破滅群》とはブロックが違うので、勝ち進めば決勝トーナメントでぶつかることになるだろう。


「そしてッ! ついでにルールの再確認も行うぞッ!」


 そう言って、迷宮祭のルール説明も開始された。

 6vs6のチーム戦で、リーダーを倒した方が勝ち。

 リーダーが誰かは分からないようになっていて、戦いごとに変更が可能。

 場所は闘技場だが、闘技場のシステムで様々な障害物が用意される。

 時間制限は三十分で、それを超えてしまった場合、残った人数が多い方が勝ち。


 だからリーダーだけを隠して5人で戦っても、相手のリーダーを倒しきれなかったら人数差で負けることもあるし、逆に全員で戦ってもリーダーがやられてしまえばすぐに負けてしまう。


 単純なようでかなり作戦とか事前準備とかが重要になってくるルールだった。


 それから意気込みとか大会理念とかいろいろ語った後、開幕式が終わった。

 どうやらその様子は全世界のテレビ局で生放送されていたらしい。

 まあこの迷宮祭は全世界における一大イベントだからな。

 ここで名を上げようとしている人もたくさんいるし、盛り上がりは絶頂だった。


「いやぁ、凄い熱気でしたね……!」


 頬を上気させながらアキハが言う。

 俺たちは《ロンドン迷宮》を出てホテルに戻っているところだった。

 そんなアキハに対してアーシャは少し冷めている。


「まあ、あんなもんじゃない? いつもあのくらいは盛り上がっているわよ」


 確かにアーシャは何度も参加しているのだろう。

 俺がランキング1位だと発覚する前までは、実質ランキングトップだったのだから。


「私も少し興奮してしまいました。今日の夜、寝られるかどうか……」


 そう言ったのはリンだ。

 確かに彼女にしては凄くテンションが上がってそうだな。

 レイジ君は凄く緊張していそうだし、ユイは作戦やら情報やらを再確認するためにスマホを睨みつけている。


 そしてホテルに辿り着いた俺たちは、早速部屋に戻り、ユイを中心にして作戦の最終確認に入るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る