60:調査に行った先で
「ちょっとトオルさん! 頭が出てます!」
岩の裏に隠れて他クランの練習を覗いていると、そうアキハに怒られた。
どうやら頭を出しすぎていたみたいだ。
俺は慌てて頭を引っ込める。
そもそも小さめの岩の裏にみんな隠れているのだから、スペースがあまりないのだが。
「う~ん、あのクランは遠距離系が3人と近接系が3人みたいですね」
「そうだな。遠距離系の使ってる魔法スキル的に、高火力を中心に回してるみたいだ」
ユイの考察に俺はさらに自分の考察を重ねる。
近接系はスピード重視の装備っぽいし、前線で耐えて魔法スキルでトドメみたいなスタイルなのだろう。
「なんとなく、このクランの戦い方は分かってきましたね」
「ああ。じゃあ早速次行こうか。まだ見なきゃいけないクランは多いからな」
事前に配られた対戦表を参考に、対戦相手を次から次へと探っていく。
そして夕暮れ頃に、ようやく残り一クランを残すだけとなった。
「最後は……《黄金破滅群》ですね」
ユイがスマホのメモを見ながら言った。
それを聞いたレイジ君は表情をピシリと固める。
リンは心配するようにレイジ君に尋ねた。
「どうします? やめておきますか? 私たちだけで見に行ってもいいんですけど」
「……いえ、行きます。逃げてばかりじゃいけませんから」
意を決したように言って、結局みんなで《黄金破滅群》の訓練場まで向かうことになった。
そこで練習しているメンバーを見て、俺とレイジ君は固まってしまった。
「アカネ……なんで……」
「なんでユウジ君が……」
レイが引き連れていたメンバーの中に、見知った顔が他にもあったのだ。
アカネとユウジだ。
自分が師匠として崇めていた幼馴染のアカネ。
確かに以前、《黄金破滅群》に所属していると言っていたし、彼女と関わらなくなった原因は彼女がこのクランに入ってからだが……。
こんなところで戦うことになるとは思ってもいなかった。
ユウジも、レイジ君を虐めていたクラスメイトで、因縁のある相手だった。
こんなところで過去の因縁が迫ってくるとはレイジ君も思ってもいなかったはずだった。
「……トオルさん。大丈夫ですか?」
アカネとの関係を少しは知っているリンたちが心配そうに尋ねてくる。
俺はなんとか首を縦に振るが、アカネとの直接対決には内心ちょっとだけ動揺していた。
「トオル、何があったのか知らないけど、らしくない表情してるわよ?」
そんな俺に、アーシャがあっけらかんとそう言った。
この中で、彼女だけがアカネとのやりとりを詳しく知らない。
でも彼女のその言葉に少し冷静になれた。
「ああ、すまんすまん。ちょっと知り合いがいたから動揺しちゃっただけだ」
「そう? それならいいけど、ちゃんとしてよね。あなたがこのチームのリーダーなんだからね」
確かに俺がちゃんとしないとな。
リーダーで一番年上なんだから。
俺は気を取り直すと、今度こそ《黄金破滅群》の訓練を分析し始めるのだった。
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