59:事前準備で差をつけろ!

 夜が明けて次の日。


「ううっ……頭いたい……」

「飲み過ぎましたね……」


 俺とレイジ君が起きた時間より一時間ほど遅く、女性陣が起きてきた。

 アキハとリンは頭を押さえている。

 そんな二人をアーシャが呆れたように見つめて言った。


「みんな、はしゃぎすぎなのよ」

「一番はしゃいでたの、アーシャさんだったような」


 呆れた様子のアーシャに、ユイがボソッと呟く。

 それを聞いたアーシャはバツが悪そうに視線をそらした。


「というか、トオルさんとレイジ君は昨日の夜、何してたのよ?」


 話を変えるようにアーシャが尋ねてくる。

 俺はレイジ君に目配せして言っていいか確認を取ると、昨日の夜のレイとの出来事を話した。


「……アイツがそこまで冷たいヤツだったなんて、今まで気がつかなかったわ」

「ああ、アーシャさんはレイさんとすでに面識があったんですね」

「そうね。同じランカーとして、たまに情報交換とかしていたわ。何度も勧誘もされていたけどね」


 確かにトップの探索者同士として、それなりの交流はあったのだろう。

 だがアーシャの前では猫をかぶっていたみたいだ。


「これは絶対に勝たなきゃいけませんね!」


 憤慨するように鼻の穴を広げてアキハが言う。

 それに続けてリンが口を開いた。


「そうですね。そのために今日まで《ハードボイルド・フロンティア》として頑張ってきたんですから」


 みんな、やる気はバッチリそうだ。

 そんな様子にレイジ君が小さく頭を下げる。


「ありがとうございます、皆さん。僕なんかのために」

「僕なんかって、自分を卑下しちゃいけないよ、レイジ君。もう君は俺たちの仲間なんだからさ」

「トオルさん……! そうですよね、もっと心意気を持つようにします!」


 う〜ん、やっぱり真面目で一直線な性格だなぁ。

 だからこそレイジ君には好感が持てるんだろうけど。


「それで、今日は何をするんですか?」


 ふと、リンがそう尋ねる。

 それにユイが企むような笑みを浮かべ、スマホの画面を見せながら答えた。


「ふふふっ、それはですね……、これを見てください」

「……なんだこれ?」


 地図アプリ?

 どうやらダンジョン内の地図みたいだが……。


「聞いて驚いてください! これは私が事前に調査した、対戦相手たちの推定練習場所です! ここにこっそり行って相手の戦闘スタイルを探っていきますよ!」


 珍しく、ユイが興奮したように声を張り上げる。

 しかしユイが興奮するだけはある。

 この情報があれば迷宮祭はかなり有利に進められるんじゃないか?


「凄いですね、これ……! これなら負けなしかもしれませんね! 流石はユイさんです!」


 その説明を聞いたアキハがそう褒めちぎる。

 次々とみんなも褒め始め、最終的にユイは褒められすぎて照れてしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る