52:レイジ君と特訓配信

 次の日、俺はレイジ君とダンジョンに来ていた。

 今日は配信するようにユイから言われている。


「ども〜、今日はレイジ君の特訓をしていくぞ〜」


——おおっ、待ってました!

——ついにきた、特訓配信!

——メチャクチャ楽しみ!


 すぐに同時接続数も上がっていき、コメント欄も盛り上がっていく。


「よ、よろしくお願いします!」


 レイジ君はガチガチに緊張しながらも精一杯頭を下げる。

 なんだか初々しくて微笑ましい。

 俺も動画を始めたばかりの頃はこんな感じだったなぁ。

 今では慣れたもので、緊張なんて一切しなくなってしまったが。


 コメント欄もレイジ君のその様子に反応し始める。


——父親を超えるんだろ! 緊張すんなって!

——こんなんじゃああのレイは越えられないぞ!

——頑張れレイジ君! 君なら出来る!


 凄く応援されて、レイジ君は嬉しそうに頬を緩めた。


「あっ、ありがとうございます! 頑張ります!」


——いいねぇ、純粋そうな感じがして。

——トオル、絶対にレイジ君を成長させてあげてくれ!


 コメント欄は物凄く好意的だ。

 確かにレイジ君の少年感はみんなに好かれそう。

 特に年上の女性に刺さりそうだよな。


「さて、とりあえずレイジ君、厳しくいくけど大丈夫?」

「はいっ、もちろんです。ビシバシ鍛えてください」


 俺が言うと覚悟の決まった表情でそう言うレイジ君。

 よしよし、レイジ君もちゃんと覚悟しているみたいだし、スパルタでいくか。


「それじゃあ早速……ボス行こう」

「い、いきなりボスですか……?」


 レイジ君は俺の言葉に口元を引き攣らせる。

 俺は頷くとニヤリと笑みを浮かべて言った。


「ビシバシ鍛えてもいいんだろ?」

「は、はい……確かにそう言いましたけど……」


——トオルの悪魔、鬼!

——レイジ君の気持ちを考えたことないの!?

——これじゃあレイジ君が可哀想よ!


 そんなコメント欄に俺は悪い笑みを浮かべて言った。


「じゃあ今日は無難に安全につまらない特訓にでもするか」


——先生! ビシバシいきましょう!

——やっぱりエンタメ性は大事だよな!

——頑張って、レイジ君!


 ……ノリいいな、やっぱり。

 それを見たレイジ君は悲痛そうな表情で叫ぶ。


「ちょ、ちょっと皆さん! 僕を犠牲にしようとしないでください!」


——大丈夫だ、お前の屍を拾ってやる。

——うん、応援してるぞレイジ君。

——君なら出来る、俺はそう信じてる。


 うんうん、コメント欄も味方につけたことだし早速行こう。

 絶望した表情をしたレイジ君を引き連れて10層のボス部屋まで向かうのだった。

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