50:290層のボス、幻影ヘビ
「配信で見ていた時から凄いとは思っていたけど、ここまでとはね……」
俺が289層で分身ヒツジを倒しているとそんな言葉が背後から聞こえてきた。
280〜290層までは幻想世界みたいなテーマらしく、いつもに増してファンタジーだ。
ぱっと見、お菓子の国だと言われても納得できる雰囲気をしていた。
雰囲気だけではなく、先ほどのような分身するヒツジだったり、催眠をかけてくるカバだったり。
出てくる魔物たちも特殊な魔物が多い印象だった。
「そうか? まだ【創造の書】も使ってないぞ?」
「使ってなくてこれなのが凄いのよ!」
「そういうものなのか?」
「そういうものなの! やっぱり貴方は自分の凄さをもう少し自覚したほうがいいと思うわ!」
正直、自覚しようとは思ってるんだが、今まで評価されてこなかった時間が長すぎて違和感でしかない。
まあここまで手放しで褒めてくれるのは素直に嬉しいことなんだけど。
「てか、やっぱりアーシャも【創造の書】持ってたんだな」
「ランキング上位にいる人なら大抵、一つは持ってると思うわ! 人前で見せることはなかったけどね!」
俺が無自覚にみんなの前で【創造の書】を使ったから、世間にその存在が認知された。
それ以降チラホラその存在が確認されていったが、あれは元々発見されていたものだろう。
ちなみにアーシャの【創造の書・出典:疾風神憑依】というものらしい。
主に圧倒的な素早さを付与してくれるものみたいだ。
基本【創造の書】は〇〇神を憑依させるものと見て間違いなさそうだな。
「って、また出たな催眠カバ」
しかし俺が気がついた瞬間にはすでに粒子になって消えていたが。
流石は疾風神を憑依させているだけある。
銃を抜くスピード、照準を合わせる速度なんかが桁違いだった。
「催眠を掛ける前に消えるなんて、可哀想な催眠カバ……」
俺は思わず敵相手に同情してしまいつつ、そんなこんなで290層のボス部屋前まで来た。
「290層のボス部屋の相手も知ってるのよね?」
「ああ、もちろん。相手は幻影ヘビ。催眠や分身、透明化など、今まで出てきた魔物たちのスキルを使いながら、その攻撃力は桁違いだ。まあ油断したら一瞬で地上送りだな」
そんな説明をしつつ、俺は自分とアーシャにスキルをかける。
「このスキルは?」
「これは前にも使った【神話の書・出典:魔術反射】だな。ここのボスが使うスキルは大抵魔術判定だから全部無効化できる」
「……便利すぎるわね、このスキル」
本当にな。
俺がこのボスに挑んだ時にこのスキルがあればもっと楽だったのにな。
そう考え思わず遠い目をしてしまうが、今更どうしようもない。
今楽できればそれでいいのだ。
「さて、早速行こうか」
「そうね。この場面を配信できないのは悲しいけど、それは300層まで残しておくのよね」
ユイの意向で盛り上がるタイミングを見計らい一緒に配信することになっている。
今回の攻略はその前段階、戦闘のすり合わせでしかないからな。
「仕方がないさ。それじゃあ、扉を開けるぞ」
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