48:クランに入りたい理由
「というわけで、俺たちのクランに新しい仲間が加わるらしい」
アーシャの爆弾発言を聞いたその日の午後、俺はクランメンバー全員を集め、いきなりそう言った。
探索者オタクのアキハだけはアーシャがいることにテンションが上がっていたが、他の三人はよく分からなさそうに首を傾げている。
「ええと、何でアーシャさんはうちのクランに入ろうと思ったのですか?」
遠慮がちにユイが口を開く。
それに対してアーシャは胸を張って答えた。
「面白そうだからよ!」
「……それだけですか?」
ユイは驚いたように目を見開き尋ねる。
しかしアーシャはさも当然のように頷いた。
「ええ、そうね。それ以上に理由がいる?」
アキハも含め、みんな呆気に取られていた。
やっぱり探索者ランキング第二位の女性が、それだけの理由でクランを変えるなんて普通じゃないよな。
別にフリーの探索者なら納得できる。
しかし相手はすでにクランに入っていて立場を確立している人なのだ。
そもそもそう簡単にクランを変えられるのかとか、いろいろ問題が起こると思うんだが……。
「ええと、アーシャさんは現在、世界最強のクラン『果てしない水平線』に所属していたはずですよね?」
アキハはアーシャにそう尋ねた。
それに対してアーシャは俺のほうにジト目を向けてくる。
「ちょっと、トオル。代わりに説明しておいて」
「えっ? いやいや、大事なことなんだし、自分で説明したほうがいいと思うんだけど……」
「いやよ、面倒くさい」
それだけ言うとアーシャはベッドに飛び込んでそのまま寝息を立て始めた。
身勝手というか、マイペースというか。
思わずため息が漏れてしまうが、彼女が起きて説明してくれるとは思えないので、俺はユイ、リン、アキハ、レイジ君の四人に向かって話し始めた。
「まあ……俺から説明すると、アーシャはどうやらランキング一位にしか興味ないらしい。で、クランを作ったのも第一位を目指すためだったみたいだ。しかし突然、第一位の俺が正体を現した。俺としては正体を隠していたつもりはないんだけど。――ともかく第一位が現れたなら直接技を盗むのが最短ルートだと思った彼女は、俺の元にやってきたと。そして俺がクランを立ち上げると知った直後に、自分のクランを解体したとも言っていたな」
彼女の行動原理は分かりやすいのだが……如何せん立場が立場なので大事になりそうだ。
いまだ小市民が抜けきらない俺は、そんな大物がうちに来るのも気が引けるし。
まあしかし、彼女のおかげでようやく少しは自分が第一位であるという自覚を感じることができた。
う~ん、もっと穏便なきっかけが良かったなぁ……。
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