47:唐突な爆弾発言
結局、俺はアーシャにベッドを渡し床で寝ることになった。
もう若くないので、固いフローリングの上で寝るのは腰に響きそうだが、仕方がない。
アーシャは長旅をしてきたからか、疲れていてすぐに眠った。
しかしそもそも女性を家に泊めたことのない俺は緊張して眠れない。
それにフローリングの上にタオルを敷いただけの寝床だ。
眠れるわけもなく、そのまま朝まで一睡も出来ずに日が昇ってしまった。
朝七時、まだアーシャは寝ていたので、起こさないように朝食作りにいそしむ。
朝食作りと言っても、目玉焼きとウィンナーを焼きつつ、トーストをオーブンで焼くだけだが。
そんな風に朝食を作っていると、匂いにつられてアーシャが目を覚ました。
「んん……何かいい匂いがするわね……」
「おはよう。朝食はトーストでいいか?」
「もちろん構わないわ。日本の卵かけご飯というものも食べてみたかったけど」
そう言いながら彼女は眠そうな目をこすりつつ体を起こした。
パジャマを持っていなかったので俺の古着を貸したが、少し大きかったのか、はだけかけている。
首元から見えてはいけないものが見えそうで、慌てて目をそらしながら言った。
「とりあえず顔を洗ってきな」
俺の言葉に、コクリコクリと頷いているのか寝ぼけているのか分からない反応をすると、アーシャは洗面所に向かっていった。
その間、俺は朝食を完成させておく。
トーストをバターで焼き、目玉焼きをのせて、その横にウィンナーを添えれば完成だ。
座卓の上に二人分の朝食を並べると俺は座って待った。
「ああ、ごめんなさい。待たせたわ」
「いや別に大丈夫だ。それよりも目は覚めたか?」
「ええ、おかげさまで」
それからアーシャも俺の向かいに座る。
「じゃあ、いただきます」
俺が手を合わせてそう言うと、アーシャは俺の仕草を見よう見まねで真似した。
「……いただきます」
アーシャの昨日の押しの強さはなりを潜め、俺たちはしばらくモソモソと静かに直食を食べていたが、少し気まずくなってきたので、彼女に疑問を投げかけることにした。
「てかわざわざ日本に来て、俺と会って、何をするつもりだったんだ?」
「う〜ん……特に何がしたいとかはなかったわ」
「え、じゃあ本当にただライバルに会いたいってだけで飛び出してきたのか?」
俺の言葉になんてことないようにアーシャは頷く。
これがランキング二位の行動力と言うべきか。
凄いと言うべきか、呆れるべきか判断に困るところである。
「それじゃあこれからどうするんだ?」
俺が尋ねると彼女は少し考えるように顎に手を当てて、ぽつりと爆弾発言をした。
「そういえばトオルはクランを作ったらしいじゃない?」
「まあ作ったな」
「なら私もそのクランに入るわ。面白そうだから」
…………え?
今、なんて言った?
一瞬、思考が停止する。
思わずポカンとアーシャのほうを見ていると、彼女は何故俺がそんな表情をするのか分からないらしく、不思議そうに俺の方を見てくるのだった。
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《大事なお知らせ!》
この度、こちらの作品が漫画になります!
週刊少年チャンピオンの電子版にて連載開始です!
詳細はこちらの近況ノートに記載してありますので、是非ともよろしくお願いいたします!
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