46:第二位の少女アーシャ

 流石に玄関を開けずに放置するのも可哀想なので、俺は玄関を開けた。

 そこには腰に手を当てて胸を張っているランキング2位のアーシャがいた。


 銀色の髪に碧い瞳、スラリとした長身でスタイルがいい。

 どっからどう見ても完全に海外の人だ。


「……おおっ! 貴方がトオルなのね! 実際に見るともっとくたびれて見えるわね!」


 余計なお世話だ、余計な。

 俺はなんだか頭が痛くなってきたが、とりあえずアーシャに尋ねる。


「それで……アーシャさんはこんなところに何しにきたんだ?」

「ライバルに会いたいって気持ちに理由なんかいる?」

「ライバル……そうか、ライバルか……」


 確かに言われてみれば、俺がランキング1位だとすれば2位のアーシャとはライバルとなる。

 アーシャがそういった感情を抱いていてもおかしくはない……のか?

 俺が困惑して首を傾げていると、アーシャは口を尖らせて悲しそうに言った。


「やっぱりトオルは私のことをライバルだとも思ってなかったみたいね」

「あっ、いや! そう言うわけじゃないぞ! ちゃんとライバルだと思っているさ、ハハッ!」


 乾いた笑いだったが、アーシャにはその言葉で十分だったらしい。

 純粋そうな笑みをこぼしていた。


「まあ、そう言うわけだから、とりあえず失礼するわね!」


 そう言ってアーシャはズカズカと家に上がろうとする。

 俺はそれを慌てて止めようとした。


「ちょ、ちょっと! 掃除もしてないし、そもそも寝る場所もないぞ!」


 しかし俺の言葉にアーシャは堂々とこう言い放った。


「私、今日は宿を取ってないから泊まるところがないわ! このままだと路上で寝ることになるかもね!」


 路上で寝ることになるかもね……じゃないって!

 彼女の強引さに思わず頭を抱えた。

 そんなことを言われたら泊めないわけにはいかないじゃないか。


「……はあ、わかった、わかったよ。汚くても文句は言うんじゃないぞ」

「もちろん! というより私も掃除は苦手だから問題ないわ!」


 失礼ながら確かにと思ってしまった。

 会って間もないが、彼女がキチンと掃除をしているところを想像できない。


 そして部屋にズカズカと入ってくるアーシャ。

 それから俺の部屋をグルリと見渡して、一言。


「うん、なんだか落ち着くわね、この空間!」

「……てか、本当に寝る場所ないからな? ベッドもひとつしかないし、布団も持ってないぞ」


 俺はアーシャの言葉を無視してそう言うと、意味のわからない言葉を堂々と言い放つのだった。


「大丈夫よ! 別にトオルと一緒のベッドに寝ればいいのだから!」

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