43:対決、漆黒のナイト

 順調に200層を攻略して行く三人。

 200層は洞窟みたいな階層だった。


 しかし結構安定感があるな。

 三人の相性がもともといいのか、それとも頑張って特訓をしたのか。


 ……まあ三人のことだからどっちもあるのだろう。


 リンが直剣でメインで戦いつつ、アキハが魔法で援護射撃。

 その合間を練ってユイが双剣を使い、攻撃を差し込みながら場を支配する。

 バランスのいい三人だった。


——いい感じじゃん!

——三人とも仕上がってるね!


 コメント欄もみんな楽しそうに三人の連携を褒めていた。

 うんうん、盛り上がってきてるし、ユイの目論見は当たっていたみたいだ。


『おそらく視聴者さんたちには私たちの仲の良さをアピールした方がいいと思うんですよね』


 この前、こう言ってたからな。

 その目論見はちゃんと当たり、みんな盛り上がっている。


 と言っても、別に営業で仲良くしているわけでもないだろうが。

 三人ともダンジョン以外でも、オフで普通に猫カフェとか行ってるみたいだし。


 仲が良いことは俺としても嬉しい。

 こうして人の輪が広がって行くのを見ると嬉しくなるのは当然だよな。


「あっ! あれ、ボス部屋じゃない!?」


 何かを見つけたのか、アキハがそう声を上げた。


「確かにあれはボス部屋に見えます!」

「すごく順調でしたね」


 リンとユイも同じ方向を見てそう言った。

 三人がその方向に近づくと、画面内に扉が映る。

 これは間違いなくボス部屋だろう。


 200層のボスは確か【漆黒のナイト】。

 人型の魔物で、200層までの中では一番バランスがいい難易度の高い敵だ。


 全てが高水準で纏まっていると言えばいいのか。


 200層までで一番硬いのは【森羅万象カメ】だし、一番速いのは【俊足のムササビ】だ。

 そいつらに一番は譲るが、二番目に硬いのは【漆黒のナイト】で、二番目に速いのも【漆黒のナイト】。

 そんなふうに全てにおいて最強ではないが、総合的に最強——みたいな魔物だった。


 大丈夫かな。

 少し心配するが、まあ彼女たちを信じよう。

 この日のためにいっぱい特訓をしてきたことを俺は知ってるからな。


——漆黒のナイトはなかなか強かったな……。

——あそこで心が折れた人間は数知れず。大丈夫だろうか?

——頑張れ、三人とも!


 コメントでもちょくちょく心配の声が上がっていた。

 もちろん応援する声もたくさん上がっているが。


 でも絶対に彼女たちならやってくれる。

 彼女たちが扉を開けるのを見ながら、俺はそう心の中で呟くと、ビールをグイッと煽って椅子に座り直すのだった。

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