42:三人のコラボ配信を見よう

 俺は今日は別にやることがないので、ビールとスモークタンを買ってきた。

 酒を飲みつまみを食べながらリンたちの配信を見るつもりだ。


 カシュッ!!


「かっぁああああ! うまい!」


 やっぱり何もない日に飲む酒は最高だな!

 少々おっさんくさいと思いつつ、幸せだからやめられない。


 そしてパソコンをつけてリンたちの配信をつける。

 動画編集のために無駄に高スペックのパソコンだ。

 まあ最近は配信ばかりで動画編集はできていないが……。


 そのせいで本格的に無駄スペックになってきた。

 インターネットもほぼ見ないし、ゲームもしないからな。


 ビールを飲みながら待機画面で待っていると、ようやく配信が始まった。


「やっほー、リンよ。今日はきてくれてありがと」

「やあやあ! アキハだよ!」

「あ、どうも。ユイです。よろしくお願いします」


 そんなふうにそれぞれ挨拶をしていく。

 やっぱり挨拶には個性出るよな。


「今日はみんなで200層のボスを倒したいと思います」


 リンが代表してそう言った。

 それに対してコメント欄が反応する。


——おおっ! みんなもうそんなに進んだのか!

——トオルとコラボするようになってドンドン成長してるな!

——200層か。あのボスは強いけど、大丈夫か?


 心配する声も上がっているが、俺は大丈夫だと思っている。

 みんなこの日のために努力してきたからな。

 毎日長時間ダンジョンに潜って特訓していたことを知っている。


 それもこれもクランを盛り上げるため。

 そしてレイジ君が父を見返すのを手伝うためだった。


「……って、ちょ! アキハさん! いきなり胸を触らないでください!」


 そんなことを思っていると、画面の中でアキハがユイの胸を触っていた。

 ……何やってるんだ。

 思わず呆れたような顔になってしまう。


「いいじゃないですか、ちょっとくらい! それに視聴者サービスは大事ですよ!」

「……そう言って絶対自分が触りたいだけでしょう?」

「うっ……! しかし、バレてしまっては仕方がないですね!」


 そう言って開き直ったアキハはユイの胸を触る。


——いいぞ、アキハ。もっとやれ。

——助かる。

——これはご飯が進みますな。


 視聴者たちが紳士になってる……。

 一応視聴者サービスにはなっているみたいだ。


 まあアキハは基本ムードメーカーだからな。

 みんなの緊張をほぐすためにやってくれているのだろう。


「よしっ! 今度はリンちゃんだね!」

「えっ!? 私もですか!?」


 ユイの胸を存分に楽しんだアキハはリンに標的を移したみたいだ。

 ……訂正。

 やっぱりアキハは胸を触りたくて触っているみたいだ。


 そうして胸を触り続けたせいで、リンとユイは疲弊し、アキハだけが元気になっていた。


「さあ、無駄な時間は厳禁だよ! 早く行こう!」

「……誰のせいで時間を無駄にしたと思ってるんですか」


 自由奔放なアキハには呆れたようにユイは言った。

 そうして三人はダンジョンのエレベーターに乗り込み、200層に足を踏み入れるのだった。

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