39:特訓をしよう
それからすぐにその配信は切り抜かれ全世界に発信された。
配信のアーカイブも三日もたたないうちに500万再生まで伸びた。
「順調に拡散されていってますね」
SNSを確認しながらユイが言う。
どうやらSNS上でレイのファンと俺のファンがバチバチに言い合いをしているらしい。
あんまり対立を煽るようなことはしたくなかったが、今回は全面的に相手が悪いしなぁ。
俺の家でコーヒーを飲んでいるレイジ君に、俺はふと気になったことを尋ねる。
「そう言えば、あの時レイと一緒にいた少年たちは同級生なんだろ?」
「はい、そうですね」
「あの配信が伸びて何か言われなかったか?」
俺の問いに、彼は首を横に振った。
「いえ、逆に何も言ってこなくなりました。でも学校内で注目されるようになって、ちょっと恥ずかしいです……」
まあそりゃそうだろうな。
レイジ君は一躍、時の人だもんな。
でもイジメみたいなのがなくったみたいで何よりだ。
そのために、レイジ君が目立つように構成を考えたんだし。
「ははっ、目立つのにはすぐに慣れるさ。俺も最初は恐々としていたが、最近慣れてきたしな」
「そうなんですね……。僕は当分慣れそうにないです」
レイジ君は引っ込み思案な子だし。
そりゃそうかと思う。
「でも、これからもっと有名になっていくはずだぜ」
「まあそうですね……。僕も頑張らないと」
そう言って胸の前で拳を握るレイジ君。
やはり彼は肩に力が入りすぎる傾向にあるようだ。
そんなことを思っていると、ユイが口を開いた。
「それで、これからの方針なんですが、クランとして最初の方は特訓配信をしていこうと思います」
「特訓配信?」
彼女の言葉に俺は首を傾げる。
するとユイは頷いて答えた。
「はい、そうです。おそらくトオルさんの戦い方を学びたいって人はたくさんいるはずなので」
「そうなのか?」
「当たり前です。それで、レイジ君に教えながら、その極意を視聴者たちにも伝えていこうかなと」
なるほど……。
とりあえず俺の戦い方に需要があるかは置いておいて。
レイジ君を特訓していくのはアリだと思う。
やはりクランとしては、ある程度は足並みを揃えておきたいし。
まずはレイジ君にはユイたちと同じくらいには強くなってもらわないと。
ちなみにリンとアキハは今日はダンジョンに潜りにいっている。
それも俺と少しでも足並みを揃えようとするためだったりする。
「僕もトオルさんに教えてもらえるなら、これ以上ないくらい嬉しいです」
「まあ、レイジ君には俺の全てを叩き込むつもりだから。一緒に頑張ろう」
俺が言うと、彼は真剣な表情で頷いて返事をした。
「はい! が、頑張ります!」
そこで俺は一つ気になっていたことを思い出して、ユイに尋ねる。
「そういえば、他にクランメンバーの募集とかはしないのか?」
「今のところは予定はないですね。これ以上増やしたところでメリットはないですし」
そうだよな。
確かにメリットはない。
というかデメリットの方が多そうだ。
「よしっ! じゃあ、方針も決まったところで、早速配信するか!」
俺が言うと、ユイは首を横に振って、にっこりと笑うとこう言うのだった。
「いえ、まだですよ。いっちばん始めはやっぱり派手にいかないといけませんからね」
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