35:クラン結成の提案

「トオルさん……すいません。これ以上、あなたに教わるわけにはいきません」


 レイジのその言葉に俺は首を傾げる。


「なんでだ……?」

「だって僕と一緒にいたらトオルさんに迷惑がかかるかと思って」


 ……迷惑?

 その言葉の意味がよくわからなかった。


 首を傾げていると、ユイが説明してくれた。


「おそらくレイジ君はレイとトオルさんの仲が悪くなることを懸念してるみたいですね」

「ああ、なるほど。そう言うことか」


 俺がレイと仲が悪くなると、不利益を被ってしまうと考えているのだろう。

 しかしそもそもレイと仲良くするつもりはないし、俺はレイジ君に笑いかけると言った。


「そんな心配しなくていいぞ。俺はそもそもレイの話を断ってるしな」

「そうなんですか……?」

「ああ、クランに勧誘されたけど、断ったんだよ」


 レイジ君の問いに俺は頷いて言った。


「でも、父の運営するクランは日本最強のクランです。それと対立するとなると……」


 それでもなんだか渋っているレイジ君に、ユイが一つ提案をした。


「それではトオルさんがクランを作ってしまえばいいのです。そして日本最強になれば問題ありません」

「ああ、そうかも——って、そうかもじゃない! 俺がクランを運営できるわけないって!」


 ユイの言葉に思わず同意しそうになるが、慌てて否定する。

 俺はそんな器の人間じゃない。

 しかしユイは自信たっぷりに胸を張って言った。


「いいや、トオルさんなら大丈夫です! 私、信じてますから!」

「ええ……そんなこと言われてもなぁ……」


 やっぱり俺にクランの運営とかできる気がしないんだよな。

 そんな俺にユイはさらに言葉を続ける。


「運営の事務作業は私がやるので大丈夫です! トオルさんにはただ人を引っ張っていってもらえればそれで!」

「それが一番難しいんだって……」


 無理に決まっている。

 そう思っていたが、ユイは会話のターゲットを俺ではなくレイジ君に移す。


「レイジ君もトオルさんのクランに入りたいと思うわよね?」

「……はい! 僕なんかで良ければ、ぜひ入りたいです!」


 うっ……そう言われると弱い。

 う〜ん、どうすっかなぁ……。


「それにリンさんやアキハさんだって入りたいはずです!」

「そうかなぁ……?」

「そうですよ! 絶対に入ってくれますって!」


 そうかぁ……。

 そこまで言われてしまっては、断りづらい。


 少し考えた挙句、俺は頷くと言った。


「よし、わかった。それじゃあクラン作ろうか」


 それを聞いたユイとレイジ君はガッツポーズをして喜ぶのだった。


「やりました! 楽しみですね!」

「はい! 僕もぜひ入らせて頂きます!」

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