25:とうとうテレビデビュー
釣りをして配信を終えた俺が家でゆっくり休んでいるとメールが一通届いた。
DMならちょくちょく来るようになっていたが、メールなんて登録してるサイトのアプデ内容くらいだった。
どういうことだろうと首を傾げてそのメールを開いてみると——。
『夕焼テレビのプロデューサーをしている者です。この度はトオル様に『シーカーたちの日常』というテレビ番組に出ていただきたく思い声をかけさせていただきました』
て、テレビ番組からのオファーが来ちゃったよ……。
どっ、どうしよう、これは困った。
こんなおっさんがテレビに出ても映えんと思うんだが。
ともかくすぐに返信せねば。
『お話ありがとうございます。こちらとしては凄く嬉しいのですが、本当に私でいいのでしょうか?』
するとすごい熱量が伝わってくる文面が一瞬で返ってきた。
『もちろんです。やはりトオル様以外に第一回に相応しい人物がいるでしょうか? 私どもはトオル様に是非ともやってもらいたいと思っております。いえ、トオル様のために立てた企画と言っても過言ではありませんので、トオル様が出演されないのでしたら、この企画は白紙にします』
ええ……。
もしかしてこのテレビ番組ってまだ放映されていない……?
しかも俺のために企画を立てたって……。
どんな熱量だよ。
そこまで言われたら流石に出ないのも申し訳ないと思い、俺は了承の返事を送るのだった。
***
「初めまして、トオル様。私は夕焼テレビのプロデューサーをしている西条ハルキです。よろしくお願い致します」
そう言って名刺を渡してきたのはモサモサのヒゲを蓄えたいかにもテレビ人って感じの人だった。
あれから話がとんとん拍子に進み、すぐに会って食事をしようということになった。
そして三日後、俺は高級な店に呼び出されそこで彼と邂逅したのだった。
「あ、初めまして。すいません、名刺を持っていなくて……」
「いえいえ、大丈夫ですよ! それよりも話を受けてくださってありがとうございます!」
そう言ってガシッと手を掴まれた。
すごく感激しているみたいだ。
「でもなんで俺なんですか……? もっといい人いたと思うんですけど」
「そんなことありませんよ! トオル様こそ今をときめく人物なのですから!」
その自覚は一切ないが……。
テレビ人はやはり持ち上げるのが上手だと思った。
「それで、その番組はどんな番組なのですか?」
「ああ、説明させていただきますね。と言っても簡単なもので、ダンジョンに潜る人たち《シーカー》の日常に迫っていこうという半分ドキュメンタリーのような番組になっています」
まじかよ、俺の日常なんてこれっぽっちも面白くないと思うが。
「俺の日常はダンジョン行って帰って寝るだけですよ? なんも面白くないと思いますが……」
「それがいいんじゃないですか! 少なくともみんなトオル様の日常を知りたいと思っているはずです! 少なくとも私は思ってます!」
それは西条さんが特殊なだけなのでは……?
というか、彼が見たいがためだけにこの企画を立ち上げたとも考えられる?
よく分からないが、俺はその熱量に押し負けて頷きっぱなしで打ち合わせを終えるのだった。
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