24:楽しい釣りの時間
「そっちは釣れたかー?」
俺は少し離れた場所で釣りをしているリンとアキハに尋ねた。
同じ場所で釣ってると獲物が被るということで離れることになった。
しかしこれではハーレムではなく完全に蚊帳の外だ。
まあいいんだけど。
二人はどんな会話をしているのだろうか?
それだけが少し気になる俺なのだった。
——どうしてカメラは向こうじゃないんだ!
——こんなおっさんの釣り動画じゃ全然映えん!
……それに関しては我慢してもらうしかないな。
***
——リン視点——
トオルさんを離れさせてアキハが何をいうかと思ったらとんでもないことを聞いてきた。
「ねえ、リンちゃんはトオルさんのことどう思ってるの?」
「どっ、どうってどういう意味ですか?」
「そのままの意味だよー! 好きかどうかってこと!」
そう言われ私は困惑した。
そんな視点でトオルさんを見たことがなかった。
「……好きかどうかは分かりませんが、特別な存在なのは確かです」
私がまだ底辺投稿者だった頃、コラボをしてくれたのはトオルさんだけだった。
色々な人にコラボを持ちかけたが、全部断られたのだ、登録者数が少ないからと言われて。
でもトオルさんはそんなことを気にせずにコラボしてくれた。
そのことが嬉しかった。
そして色々なことも教えてくれた。
戦い方、野営の仕方。
彼のおかげで今の私があると言っても過言ではない。
だからこその特別な存在だった。
「そっかぁ! 特別な存在かぁー!」
ニマニマしながらアキハは言った。
私はそのことにむすっとしてしまう。
「い、いいじゃないですか。トオルさんは私に色々なことを教えてくださったので」
「悪いなんて言ってないよ! すごく素敵なことだと思う!」
素敵……そうか、素敵なことなのか。
確かに誰かが誰かを想うことが悪いことになるわけがない。
「——っと! おっ、かかった!」
「あっ、かかりました!? 頑張ってください!」
そんな会話をしているとアキハちゃんの釣竿に獲物がかかったらしい。
彼女が引き上げると、虹色に輝く魚だった。
「何これ……?」
そう呆然とする私たちに釣具屋のおっさんが近づいてきて言った。
「おおっ! それはレインボーモンスターフィッシュじゃないか! すごいぞ、これはすごい!」
どうやらアキハがレアな魚を引き上げたらしかった。
***
——トオル視点——
アキハが釣り上げたレインボーモンスターフィッシュを捌いてもらい、俺たちはそれを焼いて食べていた。
「うまいけど、不思議な味がするな、これ……」
白身魚ともサーモンとも言えるような、不思議な味をしている。
俺の呟きに同意するようにリンも頷いた。
「そうですね。これはなかなか食べたことがない味です」
——レインボーモンスターフィッシュか。羨ましい。
——超レア魚じゃん。地上では1万は軽くするぞ。
へー、そんなに珍しいものなんだ。
確かに味も珍しいしな。
「ふふっ、みんな私に感謝するんだよ!」
アキハがそう胸を張って言った。
確かにこれは感謝だな。
そんなふうにして俺たちは釣りを楽しむのだった。
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