21:黄金破滅群のリーダー

「レイ……? レイってあのランキング四位のレイさんですか?」


 その男の言葉にリンが首を傾げた。

 それにレイと名乗った男は頷くと言った。


「一応、ランキング四位にはいますね。まあトオルさんほどではありませんが」


 そしてレイは好青年風ににっこりと微笑む。

 うーん、その提案は嬉しいんだが、俺はソロが好きなんだよなぁ。

 気楽だし、何より大剣だから連携も取りづらいし。


「クランはやめておくよ。俺は基本ソロが好きだし、こうしてコラボするのも本当に気が合ったからなんだ」


 俺の言葉にレイはにっこりと微笑んだまま、両手を広げて言った。


「やはりそう言われると思っていました。それではこれからは交渉……ビジネスの時間です」

「ビジネス?」


 俺が首を傾げると、彼は頷く。


「ええ、ビジネスです。私のチャンネルは現在、879万人。そしてトオルさんのチャンネルは伸びてきているとは言え、まだ50万ほどです。私のチャンネルでトオルさんのことを紹介し、ついでに彼女たちのことも紹介しましょう」


 ……なんだか、話が胡散臭くなってきたぞ。


 しかし……俺が伸びないのは構わないが、リンとアキハにはもっと伸びてもらいたい。

 二人がそれを望むのなら、だけど。

 そして二人を伸ばすなら、その提案はとてもタメになることなんだろうな。


「でもその代わりの対価を求めるのでしょう?」


 レイの言葉にリンは警戒してそう尋ねた。


「はい。これはビジネスですから、もちろんです。でもそこまで大きな対価ではありませんよ」


 そしてレイは続けてこう言った。


「私が欲しいのは、強くなる秘訣です。ここまで圧倒的に強くなれたのには何かしら理由があるはずです。それを教えてもらいたいのです」


 レイはギラギラとした視線を俺に送ってくる。

 そんな彼に俺は困ったように首を傾げて言った。


「……うーん、強さの秘訣と言われても、俺はただ単に毎日楽しく潜ってるだけなんだよね。それに俺ってそこまで強くないだろうから、熟練者たちに教えることもないと思うけど」


 そう言うと、レイはすっと目を細めてこう言った。


「そうですか……。そこまで教えたくないと。しかし貴方だってもっと人気は欲しいでしょう?」


 いやいや、だから教えることもないって言ってるじゃん。

 秘訣とか一切ないし。

 強いてあげるなら、楽しんでダンジョンに潜ろうとしか言いようがない。


 しかしレイは納得いってない様子だった。

 なんだかすごく勘違いされていってる気がする……。

 それに——。


「俺は別に人気が欲しいとは思わないしなぁ。単純に動画編集が楽しいから動画を出しているだけなんだよな」


 といいつつ、最近は配信ばかりしてるが。

 これからは、ちょくちょく動画編集欲を発散する必要がありそうだ。


 すると、彼はすっと表情を消すとくるりと踵を返して言った。


「それでは一旦交渉は決裂ですね。それではまた会いましょう」


 もうあんまり会いたくないなぁ。

 俺はこの人のことが苦手みたいだ。


 そしてレイが去っていた後、コメント欄を見てみると——。


——良かったのか? 相手はかなり人気のレイだぞ。

——と言ってもレイの人気の七割は中高生の女子だからな。男人気は少ないんだぞ。

——良かった、断ってくれて。トオルがレイとコラボしたら、俺は幻滅していたかもしれない。

——レイはアンチも多いからな。これでまたアンチが増えてそうな気がする。


 そうなのか。

 意外と視聴者からの反応は良さそうだ。


 もっと断り方とか考えろとか言われそうだなと思っていたが。


「ふう……緊張しました! 圧がすごかったですね!」


 アキハが元気を取り戻して、そう言った。

 彼女はかなり緊張してしまっていたらしい。

 確かに威圧感やばかったしな。

 笑っているはずなのに、目がずっと笑ってなかったし。


「と、ともかく気を取り直してダンジョンに潜りましょう」


 リンがそう言って、俺たちはダンジョン探索を開始するのだった。

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