19:三人でのコラボ

 俺は悩んでいた。


 この前の配信で登録者数が50万まで膨れたことも悩みの種だが。

 それよりももっと悩んでいることがある。


 それはリンにどうやってDMを送ろうかということだった。


 以前、アキハからリンへ紹介して欲しいとお願いされた。

 だからリンにアキハと三人でコラボしようと持ちかけようと思っていたのだけど。


 今まではリンたちからDMが来ていたのもあって、送り方が分からない。


 普通にコラボしようでいいのだろうか?

 気の利いた一言でも言いたいが、思いつかないし……。


 くそっ、ここで女性経験の少なさが光るとは。

 俺は昔からダンジョンに一筋で、女性と関係を持ったことがほとんどない。


 それに俺はアラフォーのおっさんだ。

 どう送ったってキモがられるに違いない。


 むう……どうしよう……。


 悩んだ俺は唯一気軽に話せる女性、アカネを召喚した。


「で、アカネはどう送ればいいと思う?」

「……それを私に聞く?」


 尋ねると、呆れたような表情で俺を見てきた。


「いや、俺が頼れるのはアカネだけだから」


 そう言うと、彼女ははあっと大きくため息をついた。

 どうやら彼女はとても疲れているみたいだ。

 まあ500層まで潜っているなら、毎日が苛烈な戦いなのだろう。

 というか、今ではもっと下層まで行っている可能性もあるし。


「まあいいわ。それだったら別に気の利いた一言も、詩的な美しい言葉もいらないわ」

「そうなのか?」

「そっちの方がキモいわよ。普通にコラボしてくれませんか、でいいのよ」


 そう言うものなのか。


「流石はアカネだな。的確なアドバイスをありがとう」

「……それよりもこの間の配信の件だけど、私を師匠と呼ばないでくれる?」

「え? なんでだ? 俺はずっとアカネの背中を追ってるんだぞ」


 その俺の言葉に、アカネはさっきよりも大きなため息をつく。


「はあ……子供の頃の話は全部嘘なの。嘘をついていたことは申し訳ないけど、私はあなたの師匠にはなれない」


 アカネの言葉に俺は、はははっと笑ってしまった。

 またまた、面白い冗談を言う。


「ははっ、アカネは謙遜主義だなぁ。今さら隠す必要もないのに」


 そう言うと、彼女はとうとう頭を抱えてしまった。

 何で頭を抱えるのか分からず、首を傾げる。


「あなたって……柔軟性がないと言うか、一度信じたことを意地でも曲げないわよね」


 そうなのだろうか?

 よく分からないが、俺はアカネにお礼を言ってDMを送ろうとする。


「しかし、ありがとうアカネ。おかげで助かったよ」

「まあトオルのためならいつでも力になるわよ」


 おおっ、それは心強い言葉。

 ならいつか一緒にダンジョンに潜るのもありだな。


 まだアカネが大手クランに所属しているのか分からないが、一緒に潜るくらいなら許してくれるだろう。


 そしてアカネは用が済んだことを確認すると、帰っていった。

 師匠には本当に感謝しかないよな。


 そして俺はリンにこうDMを送るのだった。


『なあ、アキハがリンとコラボしたいって言ってるけど、三人でダンジョンに潜ってみないか?』

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