18:終決、450層

 まずはもちろん破壊神の憑依だ。


 もう似合わないとか言ってられない。

 銀髪のおっさんとか痛々しいにも程があるが、背に腹は変えられない。


「よぉし! 行くぞぉ!」


 俺はそう言いながらブンブンと大剣を振り回す。

 うん、調子は良さそうだ。


 俺の言葉を理解したわけでもないだろうが、ドラゴンは応えるようにフルルと笑う。


 次の瞬間、ドラゴンは口を大きく開けた。

 カッと光が瞬き、圧倒的な速度で光線が迫ってくる。


「うわっ! あ、危ねぇ……!」


 それを何とか避けるが、冷や汗はダラダラだ。

 破壊神を憑依していなかったら間違いなく避けられていない。


——なんだ、あの威力!

——怖すぎ! あんなん普通に死ねる!


 俺は体勢を立て直すと、大剣を構える。

 そしてニッと笑い言った。


「さて、今度はこっちの番だ!」


 地面を蹴り、ドラゴンに接近する。

 奴は図体がデカいから、懐に入ってしまえばこっちのもんだ。

 そう思っていたのだが、そううまくはいかないらしい。


 ドラゴンの周囲に五本の光の剣が展開された。

 接近しようとしている俺に向かって飛んでくる光の剣。

 俺はそれを軽々と避けるが——。

 その剣は反転すると再びこっちに向かって飛んできた。


「マジかよ、追尾機能ありかよ! 聞いてないんだけど!」


——追尾スキルなんて初めて見た!

——あんなんズルすぎるだろ!


 くそっ、これじゃあ懐に入っても優位は取れないじゃないか。

 軽く舌打ちすると、その光の剣に向かって思いきり大剣を振った。


 ガキッという金属音とともに光の剣は弾かれ消えていく。


「うーん、これは参った」


 俺は次々とやってくる光の剣を処理しながらそう呟く。

 近づいたら光の剣、離れたら高火力の光線だ。


 自分の持っているスキルを思い浮かべながら最適解を見出していく。


「じゃあまずは——【神話の書・出典:魔術反射】だな」


 そう呟くと、俺の周囲に魔方陣が展開される。

 これで光の剣を弾けるといいんだけど……。


 再び光の剣が飛んできたので、反射してみる。

 すると、光の剣は追尾目標がドラゴンに移ったらしい。

 真っ直ぐドラゴンの方に向かっていった。


 おお、これはかなり楽になるぞ。


——なんか……怪獣大決戦を見ているみたいだ……。

——もうこれは映画なんよ……。

——You never cease to amaze me.(驚いてばかりだ)


 光の剣が効かないと分かったドラゴンは、怒ったように大きく叫んだ。


「グルァアアアアアアアアアアア!」


 そして今度はさっきよりも一際大きい光の槍が二本現れる。


 あ……これは貫かれるかも。

 槍だから貫通力高そうだし。


 そう思った俺は慌てて魔術反射を解除すると、迎撃体制に入る。

 ものすごい勢いで突っ込んでくる二本の槍を大剣で叩き潰す。


 ……ふう、危ねぇ。

 何とかなったか。


 しかしまだ一撃も与えられていないな……。

 というわけで、俺は再び接近を試みる。


 しかし剣も槍も効かないと分かったドラゴンは、他に有効打を持たないらしく。

 俺は軽々と接近できた。

 そして思いきり大剣を突き刺してみると——。


 ガギッと鱗にヒビが入った。


「おおっ、これならいけそうだな」


 それから光の剣を弾いたり、光の槍を叩き潰したりしながら攻撃を加えていく。

 しばらくして、ようやく鱗がばっくりと割れた。


——おお! もう終わりそうだ!

——勝ってしまうのか! 本当に勝ってしまうのか!?


 俺はその傷口に向かって大剣を立てると、ニッと笑い叫んだ。


「これで最後だ、ドラゴンッ!!」


 ズブブブブッ!


 大剣がしっかりと突き刺さっていくのを感じて、次の瞬間——。

 そのドラゴンは粒子となって消えた。


「ふう……何とか勝てたな……」


 そう疲れて座り込んだ俺にユイが急いで近づいてくる。


「トオルさん! 凄かったです! ヤバかったです!」


 彼女の顔は興奮で少し上気していた。

 コメント欄を見てみると——。


——ヤバすぎ! お前が世界一だ!

——成し遂げてしまった! これは歴史的瞬間だ!

——There's no one more amazing than you!(お前以上にすごい人はいないぞ!)


 賞賛の嵐になっていた。

 同接は120万。


「……マジかよ、120万人も見てるの?」


——世界トレンドで一位だからな、この配信。

——日本記録更新だぞ。

——日本人口の百人に一人が見てる計算になるな。


 ひゃ、百人に一人……。

 間違いなく俺の名前は世界に知れ渡ってしまったみたいだ。


「あ、でも師匠の方がすごいから、俺もまだまだだよ」


 俺はうんうんと頷きながらそう言った。


——師匠って前言ってたアカネだっけ?

——アカネって誰?

——俺も知らん。


 えー、あかねを知らないとかやっぱりネットは信用できない。

 子供の頃には500層に潜っていた天才だからな。


 それから俺たちはその階層のエレベーターを解放した。

 ちなみにこの階層は450層だったらしい。


 やっぱり子供の頃に500層にまで潜っていたアカネは異次元だよな!

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