16:破壊神憑依

 おおっと【伝説ゴーレム】三体は聞いてないぞ。


 コメント欄もこれには慌てふためいているみたいだ。

 それにユイを守りながら戦わなければならないので、かなり不利な戦いだった。


 彼女は恐怖で引き攣った顔で俺の方を見ると言った。


「ど、どうしましょう……」

「まあ、大丈夫だよ。これくらいなら何とかなる」


 俺が言うと、コメント欄が応援してくれた。


——トオルならやれる! 俺も信じてる!

——いっけぇええええええ! かっちまえ!

——フルボッコだ! 俺たちのトオルなら出来る!


 その励ましに応えるべく、俺は担いでいた大剣を構える。

 ユイのためにも、期待してくれている人たちにも負けるわけにはいかない。


 ——。


 俺は唯一持っているを使用する。


「【創造の書・出典:破壊神憑依】」


 そう呟いた俺にコメント欄はものすごい勢いで流れ始める。


——創造の書!?

——なんだそれ、聞いたことがないぞ!

——もしかして神話の書の上か!?


 そう、これは【神話の書・出典:破壊神の右腕】の完全上位互換だ。

 破壊神が憑依した俺は、バチバチと電撃を身に纏い髪の毛が銀色に輝いていく。


 ……おっさんには似合わない絵面だから極力使いたくなかったんだが。

 しかしそんなことを言っている場合じゃない。


——おっさんがイケおじに!?

——なんか格好よくなった!?

——うっ……これは流石にカッコいい。


 ダンッ、と地面を蹴った。

 その威力で地面が抉れる。


「はっ、速い!?」


 背後からユイの驚く声が聞こえるが、俺は無視して【伝説ゴーレム】に突っ込んでいく。


 一瞬で敵の目前まで接近した俺は、思いきり大剣を振るう。

 ガコンッ! という音とともに周囲に衝撃波が広がり、【伝説ゴーレム】が吹き飛ばされていく。


——なんだ、あの威力!?

——ヤバすぎる! 見たことない速度と威力だ!


 それから俺はその一体を放置して、他の二体と対峙する。

 ギロリと睨むと心なしか後ずさるゴーレムたち。


 大剣を握り直して、俺は再び突撃した。

 今度は反応してこようと、ゴーレムたちは右腕を振り上げるが——。


 


 俺はその攻撃が届く前に、一体の胴体に大剣を突き刺した。


——お、おい! あれって確かオリハルコンなんじゃあ……?

——オリハルコンを貫いた!?


 そして思いきり大剣を横に薙ぐ。

 ガリガリガリと金属同士が擦れて火花を上げ、切り裂かれていく。


 そして一体を処理した俺は、再び距離を取り間合いを調整する。

 これが多数対一の戦い方だからな。


「す、すごい……」


 ユイのそんな呟き声が聞こえてくる。

 どうやら見入ってしまっているみたいだ。


 しかしそれに構えない俺は、ズンズンと接近してくるゴーレムたちに再び攻撃を仕掛ける。


 トントンッとジャンプし調子を確かめた俺は、地面を蹴り上げ再び接敵する。

 今度は大剣の重量を使って、思いきり横に振り払った。

 ドゴンッという衝撃とともにゴーレムは吹き飛ばされ、グツグツと煮えたぎっている溶岩に落ちる。


 よしっ、これで残り一体だな。


 そして俺は最後のゴーレムを一体目と同じように処理して——。


「ふう……終わったな」


 消えた【伝説ゴーレム】にホッと安堵のため息をついて俺は言った。

 すると、ユイがトトトッと近づいてきて、思いきり抱きついてきた。


「あぁああああああ! トオルさん、トオルさんッ!」


 その体は震えていて、おそらく怖かったのだと思う。

 まあ仕方ないよな、あんなのが三体も出てきたら。


 俺はそんな彼女の背中をさすりながら配信画面をチラリと見ると——。


——おめでとう! 感動した!

——強すぎだろ! 流石は世界一位!

——神! 最強! 強すぎ!


 賞賛の嵐だった。

 同接を見てみると、50万を超えている。


「……って、え? 50万?」


——そうだぞ、50万だぞ。

——今、トレンドも一位から五位まで占めてるし。

——そりゃあそうなるだろ。当たり前だ。


 ……マジ?

 これを50万人が見ていたってこと?


 それに気が付かされ、俺は思わず赤面して頭を抱えたくなるのだった。

 ——しかしそれはユイが抱きついてきていたせいで、出来なかったが。

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