11:一撃必殺、電撃落とし

「え……? 最高到達点……? 確かにあまり人を見ないなぁとは思っていたが……」


 凍りついたコメント欄と同様に俺も凍りつく。


 そういえば200層を超えたあたりからあまり人を見なくなった。

 でも、ただ単にみんな面倒くさがって来てないだけかと思っていた。


——本当か? 398層って?

——見てみれば分かるだろうけど……。

——流石に嘘だろ。あり得ないよ。


 疑心暗鬼のコメントが流れていく。

 俺は口元を引き攣らせながら、こう言った。


「ま、まあ、本当かどうかは見てくれれば分かるだろ。それよりも早速行こう」


 そしていつもの大剣を担いで俺は歩き出す。

 最初に出てきた魔物は【業火ドラゴン】だった。


——最初からSSランクの魔物かよ!

——290層のボスだっけ、これ?

——↑そう。普通にフィールドに出てきていい魔物じゃない。


「ああ、確かに280層に出てきたな。懐かしい」


 コメント欄を見て、俺は思わずそう呟いた。

 するとコメントたちは呆れた様子になる。


——280層のボスを忘れるなよ……。

——多分【業火ドラゴン】も取るに足らない相手だったんだろうな……。


 ま、まあ、確かに取るに足らない相手だったけど。

 普通にそんなに強い相手じゃないと思うが……。


 俺はここに来て、ようやくリンたちが常識不足だと言っていたことを実感し始める。


「と、ともかく、さっさと倒してしまおう」


——さっさと?

——そんなすぐ倒せるのか?


 それらのコメントには返事せず、俺は大剣を構えた。

 軽く地面を蹴って【業火ドラゴン】の上空まで飛び上がると、スキルを発動する。


【神話の書・出典:雷撃落とし】


 そのスキルはもろに直撃し、一瞬にして【業火ドラゴン】は粒子となった。


——い、一撃……ッ!?

——恐ろしいよ、このおっさん……。

——相手はSSランクだぞ……。


 驚愕のコメントが流れていく。

 そこまで驚くことか? これ?

 俺の師匠はもっと凄かったんだがなぁ……。


 そう首を傾げていると、さらにコメントは加速していく。


——このおっさん、自覚してないよ……。

——おかしい、絶対におかしい……。


 そんなふうに攻略していっていると、ふと見覚えのあるアイコンが目に入った。


——ユイ:あれ、トオルさん、とうとう配信になったんですね。


「おっ、ユイじゃん。久しぶりだな。一年ぶりくらいか」


——そうですね、一年ぶりですね。


 ユイは俺とコラボしてくれた三人の女性のうちの一人で、一番年上のOLっぽい人だった。

 きりっとした感じなんだが、私生活は実はだらしないらしい。


 そう会話を始めた俺たちに、他のコメントたちは驚愕していた。


——このおっさん、ユイとも知り合いかよ!?

——どんだけ顔が広いんだ……。


「え? ユイってすごいのか?」


 そう首を傾げた俺に、コメントが説明してくれる。


——ユイは登録者数200万の大手だぞ。知らなかったのか?


 し、知らなかった……。

 俺がそのことに愕然としていると、ユイがこんなコメントを送ってくるのだった。


——ユイ:それもこれも全部トオルさんに教えて頂いたおかげなんですよ。

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