10:NO NAMEとは?

——とある少女視点——


 ——私の目標は高く遠い。


「今日は探索者ランキング第二位の女性、アーシャ・ルーカルさんのインタビューです!」


 今日は公共メディアでインタビューを取ることになっていた。

 普段はダンジョン配信しかしないのだが、久々に出る気になったのだ。


 たまに顔を出さないと、私の存在があの人に届かないかもしれないから。


 あの人——探索者ランキング第一位の【NO NAME】がどんな人間か知らない。

 しかしこうして公共メディアに出て全世界に発信され続ければ、いつかは私の存在が彼に届くと信じていた。


「それで、まず初めの質問ですが、第二位まで上り詰めるには、どのような心持ちでいればいいのでしょうか?」


 そうしてインタビューが始まる。

 私はその質問に胸を張って答えた。


「決まっています。目標を持つことです」

「目標とはやはりあの【NO NAME】でしょうか?」


 そう尋ねられ、私は頷いた。

 到達階層398の化け物。

 それが【NO NAME】だ。


 私なんかでは到底及ばないことは分かっている。

 でも——彼が私の上に居続ける限り、私はそれを追い続ける。


 彼は私の目標なのだから。


 それから武器についてとか、戦い方についてのインタビューをこなしていくのだった。



   ***



(トオル視点)


「くしゅん! うーん、ハウスダストか?」


 俺は思わずくしゃみをしてしまい、そう首を傾げる。

 最近、立て続けにコラボで部屋の掃除ができていない。


 しかしテレビも見なければネットも見ない、趣味といえばダンジョンに潜ることだ。

 部屋には全くものがないし、掃除しなくてもそこまで埃はたまらなかった。


「まあいいか。それよりも……なんだこの登録者数」


 朝、起きた時には登録者数が一万を超えていた。

 最新の動画にはコメントがたくさんついている。


——リンから来ました!

——アキハから来ました!


 まあそんなコメントが大半だったが。


——しかし何をやってるか分からないのはいつも通りだな。

——俺もさっぱりだ。俺だってそれなりの階層まで行ってるはずなんだがなぁ。

——編集しすぎなんじゃないか? 配信にすれば変わりそう。


 配信、配信か……。

 それもありだな。


 ちょうどだし、配信するのもありだな。


 今日は動画ではなく、配信にしてみるかぁ。

 今日入ってるコラボもないしな。

 一人でのんびりと配信してみるのもありか。


 俺はそう心に決めると、ダンジョンに向かい、配信の準備をする。

 そしてとうとう配信を始めた。


 一人……二人……と順調に接続数が増えていく。

 最終的には百人前後で落ち着きそうだ。


——リンとの配信良かったです!

——アキハともっとコラボしてください!


 そんなコメントがついていく。


「ああ、ありがとう。さて、これからこの398層を攻略していくから、見ていってくれよな」


——は……? 398層?

——何を言っているんだ、この人……?

——398層って人類の最高到達階層なんじゃ……?


 俺が言うと、コメント欄がそう凍りつくのだった。

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