6:強すぎる神話の書

 そして俺たちは第125層のボス部屋前までやってきていた。


——いくらなんでも早すぎ……。

——どんな速度だよ。

——驚くことが多すぎて見てるだけで疲れる。


 そんなコメントが大量に流れていた。


 同時接続数は2.2万人。

 最初は1.5万人だったから、かなり増えている。


「さて、トオルさん。そろそろボス部屋に入りましょうか」

「そうだな。さっさと終わらせよう」


 リンの言葉に頷いて、俺はボス部屋の扉を開けた。

 中に入ると、前と同じように【魔術王カエル】が佇んでいた。


 そいつは俺たちに気がつくと、ゲコォオオと叫ぶ。

 そしてさっそく【上級の書・出典:雷槍】を発動してきた。


 バチバチとカエルの上空に数本の雷槍が出現し。

 もの凄い勢いで俺たちのほうに飛んでくる。


 ——よし、ここであのスキルを使ってみるか。


 この前、モンスタートラップの中の宝箱で見つけたスキル、【神話の書・出典:魔術反射】を使ってみる。


 すると俺の目前に巨大な魔方陣が展開され、グルグルと回転し始めた。

 その魔方陣にカエルが放った雷槍がぶつかった瞬間、弾き返る。


 今度は雷槍がカエルのほうにもの凄い速度で向かっていき、直撃した。


 ゲコォオオオオオオオオオオオオオオ!!


 自分の放った攻撃を食らい、相当なダメージを食らっているカエル。

 うん、この調子なら簡単に倒せそうだな。


「なっ、何ですか、今の!?」


 すると、近くで剣を構えていたリンが、その体勢で固まったまま叫んだ。


 遠くで見ていればいいのにと思うが、それだとキャリーみたいになるからな。

 配信として、見え方が良くないのかもな。


 俺はそのリンの問いに何でもないように答えた。


「ああ、これは前に拾ったスキルなんだけど、【神話の書・出典:魔術反射】って言うんだ」

「し、神話の書ですか!? それに魔術反射って……!」


 なんかリンが目を白黒させている。

 まあ確かに魔術反射は強いよな。


 そんなことをボンヤリと思っていたら、カエルが今度は別のスキルを使ってくる。


 お、今度は【達人の書・出典:憤怒の雷】だな。

 てことは本気モードらしい。


 カエルの背後に巨大な魔方陣が展開され、プラズマ化した青白い電撃が走り抜けていく。

 そして次の瞬間、そのプラズマ化した電撃が数本、俺たちのほうに向かってきた。


「あっ……!」


 リンが焦ったように叫ぶが大丈夫だろう。

 俺のスキルは神話の書だからな。


 思った通り、その憤怒の雷すらも反射され、カエルに向かっていく。


 そして自分の放った攻撃を食らい、【魔術王カエル】は粒子となって消えた。


——俺たちは何を見せられているんだ……?

——一歩も動かず勝ってしまったぞ!

——相手はSSランクとも言われるボスモンスターなのに……。


 コメント欄を見てみると、驚くようなコメントが流れていっている。

 別に大したことをしたつもりはないんだけどなぁ……。


 ともかくこうしてボスを倒した俺たちは配信を終え、地上に上がるのだった。

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