5:スキルについて
「ええと、俺はこの魔物を普通に倒しちゃっていいんだよな?」
リンに尋ねると、彼女は頷いた。
「はい、普通に倒しちゃってください」
といっても、こんな低階層の魔物を倒しても面白いとは思えないがなぁ。
やっぱりダンジョンの攻略動画なら、200層は超えてなきゃダメじゃないか?
そう思うが、リンがいいと言うならいいのだろう。
俺は大剣を構えて【デストロイ・ラビット】と対峙する。
こんな魔物と戦っても面白くないだろうから、俺は一瞬で決着をつけることにする。
軽く地面を蹴って魔物の背後に回ると、思いきり大剣を振り下ろす。
使ったスキルは
【達人の書・出典:瞬間伝達】
【神話の書・出典:破壊神の右腕】
の二つだ。
ドゴンッという大きな音とともに地面がへこみ、【デストロイ・ラビット】は粒子となって消えた。
ちなみにスキルには
初級の書・出典
中級の書・出典
上級の書・出典
達人の書・出典
神話の書・出典
の五段階あり、神話の書が一番強いとされている……らしい。
まあ俺もあまり詳しくないのだが。
しかし……うん、呆気ない。
こんなの、面白くないよなぁ……。
そう想いながら浮遊ディスプレイのコメント欄を確認すると、とんでもない勢いでコメントが流れていっていた。
――なんだ今の!?
――速すぎて見えなかった!
――威力高すぎるだろ! 相手はAランクだぞ!
――俺たちは一体、何を見てるんだ……?
そんなコメントばかりだった。
……え?
あれくらい普通じゃないの?
そう首を傾げていると、リンが説明してくれた。
「トオルさんはずっとソロだったしスマホもほとんど使わないから、情報に疎いんですよ。あんなこと出来る人はこの世に数人しかいないことを自覚してください」
え、そんなことないと思うけど……。
だって俺の師匠はもっと凄かったし……。
確かに俺はスマホの使い方をほとんど知らないし、情報に疎いのは事実だ。
ネットも動画投稿するときくらいしか使わなかった。
まあ、毎日ダンジョンに潜って動画投稿をするだけの日々だったし。
そんなネットの情報なんて必要なかったんだが……。
それに、ネットにダンジョンの有益な情報が転がってるとは思えないしな。
そう思うが、どうやら世間の反応は違うらしい。
――こんなヤバい奴がまだ転がってたのか……。
――到達階層とかヤバそう……。
――絶対ランキング乗ってるよな、これ。
「ん? ランキングってなんだ?」
俺がコメントを見て首を傾げると、リンが目を見開きこちらを見てきた。
「もしかして探索者ランキングも知らないんですか?」
「あ、ああ。知らないけど……」
頷くと、彼女は難しい表情でブツブツと呟き始めた。
「もしかしてランキング1位の【NO NAME】って……。いや、あり得る。そもそもトオルさんはランキングサイトも知らなかったみたいだし、名前登録もしてない可能性が。そしてランキングに乗っていて、ユーザーネームを登録していないのは、1位の【NO NAME】だけ……」
声が小さすぎて聞き取れなかったので、俺は首を傾げて聞いた。
「なんて言ったんだ?」
「い、いえ! 何でもないです!」
どうやら何でもないらしい。
まっ、いいか。
「今、トオルさんが【NO NAME】だと発覚すれば間違いなく私の配信が混乱する。有名にしてあげたいけど、ここはまだタイミングじゃない気がするわ……」
また小声で呟きだしたが、俺は空気を読んで尋ねなかった。
ふふっ、俺は空気が読める男なのだ。
「というわけで、今日はトオルさんを連れて125層のボスまでサクッと終わらせたいと思うわ」
トウキョウ迷宮には五層ごとにボスが設置されていて、それ以上先に進むにはそのボスを倒す必要がある。
そしてそのボスはフィールドに配置されている魔物たちよりも数段強く設定されていた。
――おおっ! ボスか!
――125層のボスは強いぞぉ。
――↑上位探索者ニキもいるねぇ。
――ボス戦、楽しみ!
みんなボス戦を楽しみにしているらしかった。
それならちょっと本気出してもいいかな。
125層のボスは確か【魔術王カエル】だったはず。
強力な魔法スキルを使ってくるカエル型の魔物だ。
そういえばこの間、スキル【神話の書・出典:魔術反射】を手に入れたんだった。
これってもしかして使いどころ……?
やっぱり動画配信してるならエンターテイメントも必要だし、ちょっと使ってみるか。
そんなことを考えながら、122層を軽々と攻略していくのだった。
――それにしてもトオル、強すぎな。
――ボス戦も余裕だったりして?
――↑流石にそれはないだろう。125層のボスはSランクを超えるからな。
――【魔術王カエル】は推定SSランクじゃなかったっけ?
――そう。150層までのボスの中でも最強と呼ばれてる。
――使ってくる魔術が強力すぎるんだよな。【達人の書・出典:憤怒の雷】を使ったときはビビったな。
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