3:二年後、成長したリン
【コラボ・その2】
それから一週間後が経ち、俺の元にDMが届いた。
またリンかなと思って開くと、別の人だった。
『私もコラボしたいです! よろしくお願いします!』
名前はアキハ。
どうやら彼女も俺とコラボを希望らしい。
彼女の登録者数は251人。
そして俺は二つ返事でオッケーを出した。
***
【コラボ・その3】
さらに二ヶ月後、再び俺の元にDMが届く。
リンとアキハとは定期的にコラボしていて、順調に戦闘経験値が伸びてきている。
だからまた二人のどちらかとのコラボ依頼かなと思って開くと、別の人だった。
その女性――ユイもどうやら俺とコラボしたいらしい。
動画を見てみると、リンたちよりは少し年齢が上の、OLっぽい女性だった。
彼女の登録者は423人。
……俺より多いな。
しかし――こんなしがないおっさんとコラボするなんて、みんな変わってる。
俺の登録者は341人だ。
少し増えたとはいえ、駆け出しにも満たない数字。
そんな俺とコラボだなんて、やっぱりみんな変わってるよな。
***
それからさらに二年が経過し、俺は三十六歳になっていた。
三人のコラボ相手とはもう疎遠になってしまっている。
それでも動画投稿は続け、現在451人まで上り詰めた。
……三年半も続けてこれって、やっぱり向いてないんだろうか。
そう落ち込む。
まあおっさんが淡々と攻略している動画なんて需要ないか。
そんなことを思い、パソコンを閉じて寝る。
次の日、俺がダンジョンから帰ってきて動画を投稿しようとすると――。
登録者が突然、倍を飛び越えて1000人を突破しているのだった。
***
――リン視点――
私は現在、【トウキョウ迷宮】の第121層に来ていた。
第100層を超えられる人間は限られている。
おそらく日本に二桁いるかいないかくらいだろう。
しかし――一年前までコラボしていたトオルさんはもっと下まで行っているはずだ。
ソロでダンジョンを潜っている動画を見てみると、私でも見たことがない魔物たちと戦っていたのだから。
つまり第121層は間違いなく超えている。
だからこそ、彼の動画は伸びないのだ。
――何をやっているのか分からない。
――何と戦っているのか分からない。
そんなんだから、一部の高層まで上ったことのある人しか見ない。
でも私は彼がとんでもないパラメータを秘めているのを知っている。
みんなに彼の凄さが伝われば、間違いなくバズることを知っている。
そんなことを考えていると、目の前のAランクの魔物【スケルトン・スネーク】を倒していた。
――すげぇ、流石は冷徹姫! 最強すぎる!
――あんなの真似しようと思っても、絶対無理だな。
――カッコ良すぎる。ファンになりました。
――↑もうなってるだろ。特別会員歴半年って書いてあるぞ。
私は動画投稿ではなく、配信にシフトしていた。
トオルさんの動画を見ていて、編集しすぎるのは逆に分かりにくくなると思ったのだ。
リアルタイムで戦っているのを見ている方が、絶対に凄さが伝わりやすい。
トオルさんは編集を凝りすぎて、カットが多いため、その凄さが伝わってないというのが私の分析だった。
「ありがとうみんな。でもこれも全て師匠のおかげなんだ」
私はそう言う。
――いつも言うけど、師匠って誰なんだ?
――そろそろ教えてくれてもいいよな。もう登録者も100万超えたんだし。
そう――私はトオルさんの名前をまだ言っていない。
それはもっと視聴者が増えてからにしようと思っていたからだ。
よりたくさんの人にトオルさんのことを知ってもらいたかったから。
あと、コラボしてくれたお礼もしなければならないというのもある。
私をここまで育ててくれたのは、トオルさんなのだから。
しかし、確かに100万を超えたのなら、そろそろ良いだろう。
私はコメントを拾うと話し始めた。
「そうね、そろそろ言ってもいい頃かもね。私の師匠は――トオルさんって人よ。彼に戦い方の基本とか、魔物の弱点とか、野営の仕方とか、そういうのを全部教えてもらったんだ」
――トオル? 聞いたことないな。
――てっきりレイとかかと思ってた。
レイというのは探索者ランキング4位で男性で、到達階層は第251層だ。
彼のチャンネル登録者数は879万人。
全世界でランキング4位なのだから、日本トップなのは間違いない。
ちなみにランキング1位は【NO NAME】。
おそらく探索者ランキングのサイトに名前を登録していないのだろう。
そのサイトは自分のハンドルネームを登録することが出来るからね。
その一位の人間の到達階層は第398層。
ランキング二位のアーシャで287層なのだから、圧倒的だった。
ランキングサイトは実は誰が運営しているのか謎らしいが、その正確性は確かとのこと。
「トオルさんのチャンネルはまだ許可をもらってないから貼れないけど、調べれば下の方に出てくるはずよ」
私はそう言うと、トオルさんの話をしばらくするのだった。
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