2:女の子とコラボしました
「初めまして、トオルさん。私はリンと言います」
待ち合わせの駅で彼女を見つけた。
寄っていくと、リンもこちらに気がついてそう言った。
動画と変わらず、とても可愛らしい容姿だ。
黒く長い髪を靡かせ、クールな表情で立っていた。
「ああ、初めまして。俺はトオルだ」
そうして初対面を果たすと、早速リンが言った。
「さて、ダンジョンに行きますか。ご鞭撻お願いします」
そして丁寧に頭を下げてくる。
ご鞭撻と言ってもなぁ……。
そこまで俺は高尚な探索者ではないんだが。
でも教えなきゃいけないことは多そうだし、ボチボチやっていくか。
「よしっ、じゃあ行こう」
そしておっさんと美少女の謎コンビでダンジョンに向かうのだった。
***
俺はダンジョン内部で動画を取りながら、丁寧にリンに戦い方を教えていた。
やってきたダンジョンは【トウキョウ迷宮】。
世界にある七つの迷宮のうちの一つだ。
その第十一層に俺たちは降り立った。
第十一層は、初心者向けを超えたばかりの中級者向け階層だった。
第一層から第十層までは洞穴風ダンジョン。
第十一層から第二十層までは草原風ダンジョンになっている。
出てくる魔物は【ブラッド・スパイダー】と【ジャンピング・ラビット】。
どちらもDランクの魔物である。
そして現在、俺たちはブラッド・スパイダー二匹と対峙していた。
配信用の浮遊カメラを設置して、準備を終えると俺はリンに言った。
「まずは俺の戦い方を見ていてくれ」
そして持ってきていた直剣を構える。
俺はいつもは大剣を使っているが、一通りの武器の扱い方はわかる。
なので、リンに合わせて今日は直剣を選んだ。
「はい、お願いします」
俺はブラッドスパイダーとの間合いを図りながら攻撃の隙を伺う。
「ここで大事なのは適度に圧をかけておくことだ。そうしないと、二匹同時に襲いかかってくる場合がある」
俺の言葉をメモりながらリンは頷いた。
真面目な子だなぁ。
「そして間合いを取り、魔物に圧をかけたら――」
そう言いながら俺はジリジリと少しずつ間合いを変化させていく。
「自分の闘いやすい間合いに変化させていく。直剣だったらこのくらいかな」
遠すぎず、近すぎない距離まで間合いを詰めた俺は言った。
「これが前段階だ。この前段階で全てが決まると言っても過言ではない。――そして、ここからはスピード感が大切になってくる」
言うと、俺は足を広げて飛び出す体勢になる。
そしてダンッと強く地面を蹴って、一匹に急速に接近する。
しっかりと間合いを掌握していたおかげで、【ブラッド・スパイダー】の攻撃は遅れ。
俺の攻撃がその前に一匹の魔物に届く。
――ザシュッ!
一撃で【ブラッド・スパイダー】を斬り刻んだ俺は、もう一度距離を取った。
「一匹倒したら、もう一度間合いを取る。これは安全にいくために必須だな。間合いを取ったら後は同じことの繰り返しだよ」
それから軽々ともう一匹を倒すと、俺はリンの方を振り向いて言った。
「どうだった? 参考になったかな?」
「はい、すごく勉強になりました。ありがとうございます」
目をキラキラさせ、頭を下げてくるリン。
どうやら参考になったみたいで良かった。
「じゃあ一回やってみようか」
「はい、やってみます」
そして少し歩き、また【ブラッド・スパイダー】を二匹探すと、リンにやらせてみる。
彼女は筋がいいのか、すぐに吸収していて、もう自分のものにしていた。
「おおっ、いい感じじゃないか」
【ブラッド・スパイダー】を軽々倒したリンに俺は言った。
それに照れたように微笑みながらリンは首を横にふる。
「いえ、全部トオルさんの教え方が上手だったからですよ」
「そうかなぁ。リンちゃんの要領がいいだけだと思うけど」
そうして俺たちの初コラボが終わった。
家に帰り、動画を編集して投稿してみる。
すると、いつもは千回くらいだったのが、二千回も再生された。
『今日はありがとうございました。またコラボしてください』
丁寧にそんなDMも届いていた。
俺はそれに返信をする。
『こちらこそありがとう。楽しかったよ』
そしてなんだか嬉しくなって、今日は一人缶ビールを開けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。