底辺動画投稿者、コラボ相手が次々とバズってしまう〜俺は貴女たちの師匠になった覚えはないので、方々でそう言いふらすのはやめてください〜

AteRa

1章:神配信者への道

1:コラボの申し込み

 三十七年生きてきて、俺は一度も注目されたことがない。

 よく、影が薄いねと言われて育ってきた。


 だから——俺はこの数字を見て戦慄している。

 分単位で増え続ける登録者数にビビり散らかしている。


 現在の俺の登録者数は——。



 12,500,000。



 ダンジョン攻略者のチャンネルとしては最多クラスだ。

 そもそも一千万を超えているのは全世界でも三人しかいない。


 どうしてこうなったのか。

 それは三年前まで遡らなければならないだろう——。



   ***



【コラボ・その一】


「登録者300人かー。ここまで来るのも長かったなぁ」


 俺はパソコンにブラウザを立ち上げて、ダンジョン動画投稿サイト《シーカーズ》を開きそう呟いた。


 300人の登録者を集めるのにかかったのは一年と半年。

 ちゃんと毎日投稿して、編集もしっかりしているのに、これだ。


 バズる難しさをヒシヒシと感じていた。


「まあ、動画投稿は趣味みたいなものだしな。別にいいが」


 俺はそう言って、椅子の背もたれにもたれる。

 収入はダンジョン資源でそれなりにあるし、本当にただの趣味だ。


 ただ……昔から影が薄いと言われていた。

 だからちょっとくらい目立ってみてもいいかなぁとか思ったのだ。


 登録者100万は逆に胃が痛くなりそうだし、勘弁。

 このくらいの数字で、のらりくらりとやる。

 それくらいが俺にはちょうどいいと思っていた。


 そんなとき、ピコンとスマホが鳴った。


 俺は久しぶりに鳴るスマホに少し感動しながら画面を見た。


『初めまして。同じくシーカーズで投稿してますリンと言います』


 そんな文章が目に入る。

 どうやらSNSのDMを送ってきたらしい。


 俺は気になって全文を確認すると——。


『トオルさんの戦い方に見惚れました。一度でいいのでコラボしませんか』


 その後はこう続いていた。

 コラボ、コラボか……。


 よくある話だ。

 でもこういった詐欺とかありそうだし……。


 ちょっと気になって俺はサイトで『リン』と検索する。

 するとちゃんと彼女のチャンネルが表示された。


 登録者数は293人。

 俺とあまり変わらないくらいだ。


 一番最新の動画をクリックしてみると、女子大生くらいの少女がダンジョンに潜っていた。


 しばらく見てみる。

 しかし俺は何度もツッコミたくなった。


 戦い方が危ういのだ。

 魔物のことも熟知してないし、直剣の使い方もなっていない。


 これではいつか痛い目に遭う。


 まあダンジョン内で死んでも、地上で復活するだけだが。

 それでもダンジョンがトラウマになることだってあるのだ。


 俺は彼女に戦い方を教えなければと使命感に駆られた。

 勝手な使命感だけど。


 そうして俺は、その少女リンと初のコラボをすることになったのだった。

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